弁護士を社外監査役にするメリットは?デメリットと選定基準を併せて弁護士が解説

企業のガバナンスを強化する目的などから、社外監査役を設置する企業は増加傾向にあります。社外監査役に、特別な国家資格などは不要です。しかし、弁護士を社外監査役とする企業も少なくありません。
では、社外監査役を弁護士とすることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?また、社外監査役とする弁護士は、どのような視点で選べばよいのでしょうか?
今回は、社外監査役の概要や要件を紹介するとともに、社外監査役を弁護士とするメリットと注意点、社外監査役とする弁護士の選び方などについてくわしく解説します。
なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産業界の法務に特化しており、ご希望に応じて社外監査役への就任も可能です。社外監査役となる弁護士をお探しの建設会社様や不動産会社様は、アクセルサーブ法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。
社外監査役とは?
社外監査役とは、社外から選ばれる監査役のことです(会社法第2条第16号)。監査役の職務は、取締役の職務執行を監査することであり(会社法第381条第1項)、会計監査のみならず業務監査も行います。もっとも、公開会社でない一定の株式会社では、定款により監査役の監査範囲が会計に関するものに限定される場合があります。
一般的に、社内から選出された監査役には多かれ少なかれ社内の人間関係が存在し、独立した立場での監査が困難となる場合があります。そこで、会社から独立した立場で適正な監査を行う役割を担う「社外監査役」の設置が、一定の会社において義務付けられています。
社外監査役となる要件
社外監査役となる要件は、会社法第2条第16号で定められています。具体的な要件は次のとおりです。
- その就任の前10年間、当該株式会社またはその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)もしくは執行役または支配人その他の使用人であったことがないこと
- その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社またはその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前10年間、当該株式会社またはその子会社の取締役、会計参与もしくは執行役または支配人その他の使用人であったことがないこと
- 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る)または親会社等の取締役、監査役もしくは執行役もしくは支配人その他の使用人でないこと
- 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社およびその子会社を除く)の業務執行取締役等(業務執行取締役、執行役または支配人その他の使用人)でないこと
- 当該株式会社の取締役もしくは支配人その他の重要な使用人または親会社等(自然人であるものに限る)の配偶者または二親等内の親族でないこと
先ほど解説したように、社外監査役に求められる最も重要な意義は、「その会社としがらみのないこと」です。そのため、さまざまな「しがらみ」がある人を排除するため、このような要件が設けられています。
たとえば、「10年以内に自社や子会社の役員・従業員であった人」は社内に人間関係が構築されていることが多いため、社外監査役としては不適当でしょう。また、「親会社や兄弟会社の現職の役員・従業員」も恣意的な監査がなされるおそれがあるため、社外監査役には向きません。さらに、「自社の役員・従業員の親族」も、やはり客観的に独立しての監査は困難です。
社外監査役の要件は言い回しこそ難しいものの、「企業から独立した立場での監査に支障が出そうな人は社外監査役になれず、いろいろな抜け道もふさがれている」と理解しておくとよいでしょう。
社外監査役に就任してほしい人がいるものの要件を満たすかどうかわからず不安な際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
社外監査役の選任が必要となるケース
社外監査役は、すべての企業で必要なわけではありません。では、社外監査役の選任が必要となるのはどのような場合なのでしょうか?ここでは、社外監査役を選任すべきケースを2つ解説します。
- 監査役会を設置して上場を目指す場合
- 社内のガバナンスを強化したい場合
監査役会を設置して上場を目指す場合
監査役会を設置して上場を目指す場合は、社外監査役の設置が必須となります。
(上場を目指す会社では、機関設計として、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社などが考えられますが、これらの会社の場合は社外監査役の設置が必須とはなりません。)
監査役会設置会社において監査役は3人以上としなければならず、そのうち半数以上は社外監査役とする必要があります(会社法第335条第3項)。つまり、監査役会設置会社として上場を目指すのであれば、最低でも3人の監査役を設置する必要があり、そのうち半数以上(3人の場合は少なくとも2名)を社外監査役とする必要があります(会社法第335条第3項)。
社内のガバナンスを強化したい場合
上場を目指すわけではなかったとしても、企業の成長のために社内のガバナンスを強化することを目的として社外監査役を設置する場合もあります。
上場していない企業の場合、株主でもある代表者が会社を私物化していることも少なくないでしょう。しかし、そのような状況では優秀な従業員がついてこず、成長が頭打ちとなってしまいかねません。
そこで、経営者にとっては「目の上のたんこぶ」ともなりかねない社外監査役をあえて設置することが検討できます。これにより社内のガバナンスが強化され、企業を「オーナー経営者の持ちもの」から「社会の公器」へと生まれ変わらせることにつながります。
社外監査役を弁護士とするメリット
社外監査役を弁護士とすることには、多くのメリットがあります。公益社団法人日本監査役協会が公表している「第26回定時株主総会後の監査役等の体制に関する年次調査集計結果」によると、社外監査役のうち約20%が弁護士です。
では、社外監査役を弁護士とすることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、主なメリットを3つ解説します。
- 法令を踏まえた監査が期待できる
- ガバナンスの強化につながる
- 企業の信用が向上しやすい
なお、アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に特化しており、これらの事業を営む企業の社外監査役への就任も可能です。社外監査役となる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。
法令を踏まえた監査が期待できる
メリットの1つ目は、法令を踏まえた的確な監査が期待できることです。
弁護士は、法令のプロフェッショナルです。そのため、業務執行や意思決定プロセスに法令・定款違反がないか否かについて的確な監査が期待でき、企業の適法性を高めることにつながります。
ガバナンスの強化につながる
メリットの2つ目は、ガバナンスの強化につながることです。
弁護士は高い職業倫理を求められているため、より厳しい目での監査が予想されます。そのため、企業不祥事が抑止されるなどのガバナンス強化につながるでしょう。
企業の信用が向上しやすい
メリットの3つ目は、企業の信用が向上しやすいことです。
監査役による主な監査対象は、従業員ではなく代表取締役を含む取締役です。そのため、経営陣が「コンプライアンスなどとうるさいことを言われずに経営したい」と考えている場合、「社外監査役のなかでも特にうるさくなりやすい」弁護士など選任しないでしょう。
裏を返せば、社外監査役に弁護士を据えているということは、よい会社にすることに対して経営陣がそれだけ前向きであるということです。そのため、弁護士が社外監査役であることは、企業の信用を向上させることにもつながります。
社外監査役を依頼する弁護士を選ぶ主な視点
弁護士を社外監査役とする場合、どのような視点で適任者を選べばよいのでしょうか?ここでは、社外監査役とする弁護士を選ぶ主なポイントを2つ解説します。
- その業界にくわしいかどうか
- 建設的な議論が期待できるかどうか
その業界にくわしいかどうか
1つ目は、その業界にくわしいかどうかです。
弁護士はそれぞれ、得意とする分野を持っていることが多いでしょう。業界事情にくわしい弁護士を社外監査役に据えることで、業界における取引慣習などを踏まえたより的確な監査が期待できます。
なお、アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に強みを有しています。社外監査役となる弁護士をお探しの建設会社様、不動産会社様は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
建設的な議論が期待できるかどうか
2つ目は、建設的な議論が期待できるかどうかです。
社外監査役は、会社の「審査員」のように問題点を指摘するだけの存在ではありません。監査を通じて取締役の職務執行を監視するとともに、問題があれば取締役会に対して報告・意見を述べるなど(会社法第382条参照)、会社が適切な方向へ進むよう関与する役割も担います。
そのため、単に問題点を指摘するだけではなく、改善策などについて建設的に議論してくれそうな人を社外監査役に据えるとよいでしょう。
アクセルサーブ法律事務所は「人間性」も重視し、「どのような会社・組織をつくりたいか」などのビジョンを大切にしたサポートを心掛けています。社外監査役となる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
社外監査役に弁護士を選任するデメリット・注意点
社外監査役として弁護士を選任することには、注意点もあります。ここでは、弁護士を社外監査役とする主なデメリットと注意点を2つ解説します。
- 保守的な判断をする傾向にある
- 顧問弁護士を社外監査役とするのは避けるのがベター
保守的な判断をする傾向にある
明らかな「黒」であれば、弁護士であろうとなかろうと社外監査役は問題視するはずです。しかし、世の中には「白」と「黒」だけがあるわけではなく、その中間にはグラデーションが存在します。
一般的に弁護士は保守的な判断をする傾向にあるため、「黒に近いグレー」はもちろんのこと、「やや白よりのグレー」も問題視する可能性が高いでしょう。この点は、ガバナンスを強化してよりよい会社としたい場合には大きなメリットとなる反面、経営陣の考え方によっては経営をやりづらく感じるかもしれません。
顧問弁護士を社外監査役とするのは避けるのがベター
企業にとってもっとも身近な弁護士は、日頃から相談している顧問弁護士でしょう。
顧問弁護士を社外監査役とすることが、社外監査役の要件(会社法第2条第16号)に直ちに違反するわけではありません。しかし、顧問弁護士を社外監査役とすることには慎重であるべきです。
顧問弁護士は会社(経営陣)の利益を守る立場にある一方、社外監査役は経営陣の職務執行を独立した立場で監査する役割を担うため、両者の立場には構造的な利益相反が生じるおそれがあります。
また、顧問料が「多額」に該当する場合は東京証券取引所の独立性基準(独立役員の確保に係る実務上の留意事項)に抵触し、独立役員として届け出ることができない場合もあります(詳細は後述します)。
これらの点を踏まえ、顧問弁護士を社外監査役に選任することは原則として避けることが望ましいといえます。
もう少し具体的に解説します。
たとえば、会社が何らかの不正行為を行い、第三者または株主から損害賠償請求をされたと仮定しましょう。この場合、顧問弁護士は会社(経営陣)の代理人として会社の利益を守る立場から対応にあたることになります。
一方、社外監査役の立場からは、経営陣が当該不正に関与していないか独立した立場から調査し、必要に応じて是正を求めたり、取締役会に報告したりする役割を担います(会社法第381条、第382条参照)。
このように、同一人物が顧問弁護士と社外監査役を兼務すると、会社代理人としての職務と監査役としての職務が構造的に衝突し、いずれの職務も十全に果たすことが困難となります。
また、東京証券取引所が公表している「独立役員の確保に係る実務上の留意事項(2025 年 4月改訂版)」では、「一般株主と利益相反の生じるおそれがあると判断する場合の判断要素(独立性基準)」を定めています。この独立性基準に抵触する場合、社外監査役などの独立役員として届け出ることができません。
この独立性基準に抵触する人として、次の人が挙げられています。
- 上場会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者をいう。)
顧問弁護士であるからといって、必ずしもこの「多額の金銭その他の財産を得ている」者に該当するわけではありません。とはいえ、これに抵触する可能性があることからも、顧問弁護士を社外監査役とするのは避けた方がよいでしょう。
社外監査役となる弁護士をお探しならアクセルサーブ法律事務所へご相談ください
社外監査役となる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- 建設・不動産業界に特化している
- 「予防法務」に強い
- 業界実態を踏まえた実践的なアドバイスを得意としている
建設・不動産業界に特化している
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に特化しており、関連する法令はもちろんのこと、業界における経営実態や取引慣習なども熟知しています。これらの業界で活躍する企業の社外監査役としての実績も有しているため、安心してお任せいただけます。
「予防法務」に強い
アクセルサーブ法律事務所は「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことを最終的なゴールに設定しており、トラブルを未然に防ぐ「予防法務」に力を入れています。
社外監査役の役割は企業が現状のまま突き進めば大きなトラブルに発展しかねない事態を未然に防ぐことであるともいえ、当事務所の理念とも合致していると考えています。
業界実態を踏まえた実践的なアドバイスを得意としている
法律の遵守だけを優先して硬直的な経営判断をしていては、持続的な経営発展は難しいでしょう。とはいえ、法的に正しいことと事業にとって最適なことは、必ずしも一致しません。
そこで、当事務所では法的なルールは守りつつも、その先にある「事業のさらなる発展・目標達成」を重視したアドバイスを提供しています。
また、「どのような会社・組織をつくりたいか」や「従業員・メンバーのみなさんとどのような関係性を創りたいのか」といったビジョンも大切にしつつ、「人間性」にも重きを置いたサポートを心がけています。
社外監査役に関するよくある質問
最後に、社外監査役と弁護士に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
社外監査役と顧問弁護士は兼任できる?
社外監査役と顧問弁護士の兼務は、避けた方がよいでしょう。
兼務が直ちに法律違反になるわけではないものの、社外監査役の独立性の担保が困難となるためです。
社外監査役を弁護士とするメリットは?
社外監査役を弁護士とするメリットとしては、法令を踏まえた監査が期待できることやガバナンスを強化しやすいこと、企業の信用が向上しやすいことなどが挙げられます。
社外監査役となる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
まとめ
社外監査役の概要や要件、社外監査役に弁護士を据えることのメリットと注意点、社外監査役とする弁護士の選び方などを解説しました。
社外監査役とは、会社から独立した立場で業務執行の適法性などを監査する役員です。社外監査役になるために国家資格などは必要ないものの、会社と何らかの「しがらみ」がある人は社外監査役とはなれません。
社外監査役には、弁護士が多く選任されています。弁護士を社外監査役とするメリットとしては、ガバナンス強化につながることや法令を踏まえた的確な監査が期待できること、対外的な信用が向上しやすいことなどが挙げられます。
一方で、弁護士は保守的な判断をする傾向にあることや、顧問弁護士を社外監査役に選任することは利益相反のおそれがあり原則として避けるべきであることなどに注意が必要です。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界の法務に精通しており、これらの業界で活躍する企業の社外監査役も務めています。社外監査役となる弁護士をお探しの建設会社様や不動産会社様は、アクセルサーブ法律事務所までまずはお気軽にお問い合わせください。

