手抜き工事で訴訟された際の対応は?弁護士がわかりやすく解説

追加工事や工事代金をめぐって施主・元請ともめている建設会社・工務店の経営者、役員の方へ。この記事では、次の3点がわかります。
- ①訴訟に発展しやすい建設工事のトラブル
- ②交渉から訴訟に至るまでの流れ
- ③訴訟にしないために打っておく手
建設工事の紛争は、契約書と書面の作り込みで、訴訟まで行かずに終わらせられる余地が大きい分野です。当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設業界の法務を重点的に取り扱い、建設工事のトラブル解決に豊富なサポート実績があります。
▼この記事のポイント
- 建設工事の訴訟になりやすい紛争は6つ。追加工事、工事代金の未払い、工事の遅延、工事の中断、契約不適合、施工不良です。
- 解決の流れは、①当事者間の交渉 ②建設工事紛争審査会のあっせん・調停・仲裁や民事調停 ③訴訟、が一般的。いきなり訴訟を提起されるケースもあります。
- 訴訟に発展させない決め手は書面です。工事請負契約書の整備、仕様・工事範囲の明確化、追加工事の書面化が柱になります。
- トラブルの「種」が生じた段階で、建設業界に強い弁護士に早めに相談するのがおすすめです。

弁護士 小澤 裕也
弁護士 小澤 裕也
アクセルサーブ法律事務所
代表弁護士
愛知県立一宮高校卒業
立教大学法学部卒業
明治大学法科大学院修了
そもそも「訴訟」とは?
訴訟とは、「裁判官が法廷で双方の言い分を聴いたり、証拠を調べたりして、最終的に判決によって紛争の解決を図る手続」です。訴訟の途中で話し合いがまとまれば、和解することもできます。
建設工事に関する訴訟は、1回の期日では終わりません。期日はおおむね1か月から2か月程度の間隔で、複数回開かれるのが一般的です。
判決や和解までの期間は、争点の数、証拠の量、鑑定や専門的知見の要否で大きく変わります。建築瑕疵(=欠陥・不具合)や追加工事の範囲など技術的な争点が多い事案では、長期化することもあります。
参照元:民事訴訟(裁判所)
訴訟に発展する可能性がある、建設工事に関する主な紛争
当事者間の交渉で解決できない場合、最後は訴訟で決着をつけます。訴訟に発展する可能性がある建設工事の紛争は、主に次の6つです。
- 追加工事に関する紛争
- 工事代金の未払いに関する紛争
- 工事の遅延に関する紛争
- 工事の中断に関する紛争
- 契約不適合に関する紛争
- 雨漏り、ひび割れ、漏水など施工不良の有無や補修範囲に関する紛争
追加工事に関する紛争
追加工事について書面がないと、後から「追加分は払わない。当初の請負代金に追加工事の金額も入っているはずだ」などと主張され、訴訟にまで発展する可能性があります。
追加工事とは、工事請負契約を結んだ後に追加で発生する工事です。「掘削したら地中から埋設物が見つかり、撤去工事が必要になった」など現場の状況によるものもあれば、「ここに造り付けの棚を付けてほしい」など施主の希望によるものもあります。
追加工事が発生したら、施工前に次の点をはっきりさせた書面を取り交わしてください。
- 追加工事の内容
- 追加代金
- 工期への影響
- 支払時期
- 変更後の責任範囲
書面は変更契約書、注文書・請書、合意書などです。建設工事の請負契約では、契約内容に変更があるとき、その変更内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付する必要があります。相手方の承諾を得た場合には、法令上認められる電磁的方法によることも可能です。
工事代金の未払いに関する紛争
契約で定めた支払期日までに工事代金が支払われない、というトラブルです。
支払時期を契約で定めていない場合、民法上、請負報酬は原則として仕事の目的物の引渡しと同時に支払うものとされています。そのため、完成・引渡しの有無や、検査・引渡しの条件が争点となることがあります。
単なる支払遅延のこともあります。一方で、発注者が次のように言ってくる場合もあります。
- 「工事が完成していない」
- 「工事に仕様と異なる部分があるので、これを直すまで支払わない」
工事の遅延に関する紛争
工期に間に合わず引き渡せない場合、遅れの原因が誰にあるかで結論が分かれます。
- 施工会社側の責めに帰すべき事由による遅延:契約内容や損害の発生状況に応じ、遅延損害金(=遅れた期間に応じて払う損害金)などの支払いが必要となる可能性があります。
- 発注者側の事情(指示変更、追加要望、必要資料の提出遅れなど)による遅延:施工会社が損害賠償責任を負わない、または工期延長が認められる可能性があります。
- 施工会社の責めに帰することができない不可抗力による遅延:同じく、責任を負わない、または工期延長が認められる可能性があります。
ただし、契約書に工期延長、不可抗力、追加費用、違約金・損害金の取扱いが定められている場合には、その内容も踏まえて判断します。
そこで、遅延の責任が施工会社にあるのか不可抗力であるのかで意見が食い違い、訴訟にまで発展することがあります。
工事の中断に関する紛争
施主の都合などで工事が途中で止まった場合でも、出来た分の報酬を請求できることがあります。
工事が完成前に中断・解除されても、請負人がすでに行った仕事のうち可分な部分によって注文者が利益を受けるときは、その部分を完成したものとみなして、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬を請求できる場合があります。
また、注文者は、請負人が仕事を完成しない間はいつでも契約を解除できます。ただし、その場合には請負人に生じた損害を賠償する必要があります。
そのため、出来高・出来形(=既に施工された部分)の評価、解除原因、損害額などをめぐって紛争化することがあります。
契約不適合に関する紛争
施主の指示に従って施工したと考えていても、契約不適合(=引き渡した物が契約どおりでない状態)の有無を争われることがあります。
争点になるのは、指示の内容、施工会社が専門業者として不適切性を認識していたか、指示内容を確認・記録していたか、といった点です。
なお、注文者が提供した材料の性質や注文者の指図によって不適合が生じた場合、注文者は原則として次のことができません。
- 追完請求(=直して契約どおりにしろという請求)
- 報酬減額請求
- 損害賠償請求
- 解除
ただし、請負人が材料や指図の不適当性を知りながら告げなかった場合は別です。
契約不適合があること自体に争いがなくても、その後の対応の中身でもめます。順序と要件は次のとおりです。
- まずは補修などの追完請求が問題となります。
- 報酬・代金の減額請求は、原則として相当の期間を定めた追完の催告(=期限を切って正式に求めること)を経る必要があります。
- 損害賠償請求や契約解除は、債務不履行に関する民法の要件を満たす必要があります。
契約不適合とは、引き渡された目的物が種類・品質・数量などの点で契約内容に適合しない状態です。民法562条1項は売買における買主の追完請求権を定めていますが、請負契約にも、有償契約への準用規定である民法559条などを通じて、この考え方が問題となります。
【条文に注意】
請負については、注文者の材料・指図に起因する不適合に関する民法636条や、契約不適合を知った時から1年以内の通知に関する民法637条にも注意が必要です。
たとえば「無垢材で施工すべき床を、複合材で施工した」場合や、「リビングの壁紙が指定された型番のものと異なる」場合がこれに該当します。
雨漏り、ひび割れ、漏水など施工不良の有無や補修範囲に関する紛争
一般に建物では、契約書に明示されていなくても、通常、雨水の浸入を防止する性能が求められます。新築建物で雨漏りが発生すれば、契約不適合や施工上の不具合として責任が問題となる可能性があります。
【期間に注意】
特に建物の中でも新築の住宅について、住宅品質確保法により、請負人は引渡しから10年間、構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵について、民法上の担保責任を負うとされています。
施工不良が下請企業の施工ミスで生じることもあります。それでも、施主から直接工事を請けている自社が、施主に対する契約不適合責任を負うのが原則です。
その上で元請企業は、下請契約の内容、施工ミスの有無、帰責性(=落ち度)、損害との因果関係を踏まえ、下請企業への損害賠償請求や求償請求を検討します。
ただし、下請企業の責任範囲、元請企業側の管理・指示の問題、損害額などについて見解が対立し、元請・下請間で訴訟に発展することもあります。
すでに相手方から強い主張を受けている段階でも、打てる手はあります。アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界の法務に特化し、建設工事の訴訟に豊富なサポート実績があります。お気軽にご相談ください。


建設工事のトラブルが訴訟に至るまでの一般的な流れ
建設工事のトラブルは、次の3段階を経て訴訟に至るのが一般的です。
- 当事者間で交渉する
- 建設工事紛争審査会のあっせん・調停・仲裁や民事調停で解決を目指す
- 訴訟に発展する
ただし、この流れは一例です。いきなり訴訟を提起されるケースなど、当てはまらない場合もあります。いずれにしても、早期に弁護士に相談するとよいでしょう。
当事者間で交渉する
まずは当事者間の交渉により解決を図ることが一般的です。弁護士に依頼している場合には、弁護士が代理人として交渉します。
交渉がまとまったら、後からトラブルが蒸し返されないよう、合意内容を書面にまとめて取り交わします。
建設工事紛争審査会のあっせん・調停・仲裁や民事調停で解決を目指す
建設工事の請負契約に関する紛争であって、交渉で解決に至らない場合には、建設工事紛争審査会によるあっせん・調停・仲裁や、裁判所の民事調停の利用を検討することもできます。あっせんや調停は、第三者が当事者間の合意形成を支援する手続です。
一方、仲裁は、当事者間に仲裁合意がある場合に、仲裁委員が判断を示して紛争解決を図る手続です。仲裁判断は、当事者間では確定判決と同一の効力を有します。ただし、仲裁判断に基づいて強制執行をするには、仲裁法に基づく執行決定が必要です。
訴訟に発展する
調停などを経ても解決しない場合や、合意の見込みが薄い場合には、訴訟で解決を図ります。
訴訟では、裁判所が諸般の事情を考慮して結論(判決)を下します。判決が確定すると判決内容が法的に確定し、相手が任意に履行しなければ強制執行が可能となります。
【期限に注意】
第一審判決の内容に不服がある場合、控訴期間内に控訴状を提出することで控訴できます。控訴期間は、判決書(法律が変わり、電子判決書又は電子調書とされています。)が送達された日の翌日から起算して2週間です。控訴状は、不服のある判決をした第一審裁判所に提出します。
建設工事を訴訟に発展させないために講じたい対策
訴訟に発展させないための主な対策は、次の6つです。
- 工事請負契約書を整備する
- 仕様や工事の範囲を明確にする
- 追加工事が発生した場合は、変更内容や追加代金を書面または電磁的方法で明確にする
- 施主とこまめに連絡を取る
- 下請企業の作業状況をこまめに確認する
- 相談できる弁護士を見つけておく
工事請負契約書を整備する
契約書に双方の合意内容を的確に記載しておけば、「言った・聞いていない」でトラブルになる事態を避けやすくなります。
トラブル発生時の対処方法まで書いておけば、万が一のときも契約書に従って粛々と解決できます。工事遅延に備えるなら、次の項目を定めておきます。
- 遅延損害金
- 違約金
- 工期延長
- 不可抗力
- 発注者側の協力遅延がある場合の取扱い
ただし、条項の有効性や適用範囲は、契約類型、当事者の属性、損害額との関係、強行法規や公序良俗との関係も踏まえて判断する必要があります。
仕様や工事の範囲を明確にする
あなたの現場で言うと、仕様や工事範囲があいまいなままだと、工事が完成したかどうかや契約不適合があるかどうかで意見が食い違います。契約締結時に線引きしておけば、このようなトラブルを回避しやすくなります。
追加工事が発生した場合は、変更内容や追加代金を書面または電磁的方法で明確にする
追加工事が発生したら、追加工事の内容、追加代金、工期への影響、支払条件を明確にします。変更契約書、注文書・請書、合意書のほか、法令上認められる電磁的方法も使えます。
追加工事でトラブルが生じやすいのは、口頭で受発注する現場が少なくないためです。「言った・聞いていない」を避けるためにも、追加工事の必要性が生じた時点で改めて契約書を取り交わすべきでしょう。
施主とこまめに連絡を取る
建設工事のトラブルは、施主とのコミュニケーション不足から生じるケースもあります。工事の進捗状況や、不測の事態が生じた際の事情を早期に丁寧に伝えれば、訴訟にまで至るトラブルを回避しやすくなります。
下請企業の作業状況をこまめに確認する
建設工事は、多重の下請け構造で施工することも少なくありません。仮に下請企業が工事の遅延や施工ミスをしたとしても、「自社が施工した箇所ではないので、関係ない」と責任を逃れることはできないケースが多いです。
そのため、工事を下請に出すのであれば、下請企業の作業状況をこまめに確認し、適切に監理する必要があるでしょう。
相談できる弁護士を見つけておく
建設工事についてトラブルが発生しても、早期に適切な対応をすれば訴訟にまで至る事態を回避できる可能性があります。日頃から気軽に相談できる弁護士を見つけておくことをおすすめします。なお、アクセルサーブ法律事務所は顧問契約にも対応しています。


建設工事の訴訟について弁護士に相談するポイント
弁護士に相談する際の主なポイントは、次の2つです。
- 建設業界の法務に強い弁護士を選ぶ
- できるだけ早い段階で相談する
建設業界の法務に強い弁護士を選ぶ
弁護士にも、それぞれ重点的に取り扱う分野があります。建設工事の紛争では、次の分野に関する知識と実務経験が重要です。
- 請負契約
- 建設業法
- 契約不適合責任
- 施工不良
- 追加工事
- 下請関係
そのため、建設工事に関する訴訟を相談したいのであれば、建設業界の法務に強い弁護士を選ぶことをおすすめします。
できるだけ早い段階で相談する
「何とか自社だけで対応しよう」と考えて相手方と交渉した結果、不用意な発言や合意をしてしまうと、これを覆すのは容易ではありません。トラブルの「種」が生じた時点で相談してください。
なお、日頃から弁護士に気軽に相談したいとお考えの際は、顧問契約の締結もおすすめです。
建設工事の訴訟でお困りの場合はアクセルサーブ法律事務所へご相談ください
建設工事の訴訟でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所にご相談ください。当事務所の主な特長は、次の3つです。
- 建設・不動産業界の法務に強い
- 訴訟などのトラブルを防ぐ「予防法務」に力を入れている
- 実践的なアドバイスを得意としている
建設・不動産業界の法務に強い
アクセルサーブ法律事務所は、建設・不動産業界の法務に特化しています。業界で生じやすいトラブルや訴訟事例を熟知しているため、状況に応じた的確な助言やサポートを提供できます。
訴訟などのトラブルを防ぐ「予防法務」に力を入れている
建設工事が訴訟に発展すれば、解決に至るまでに多大な時間、費用、心理的負担がかかることがあります。トラブルや訴訟の中には、事前の対策で防げるものも少なくありません。
アクセルサーブ法律事務所は「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことを最終的なゴールに設定しています。この目標を達成するため、訴訟などのトラブルを未然に防ぐ「予防法務」に力を入れています。
実践的なアドバイスを得意としている
法的な正しさだけを追求したアドバイスでは、机上の空論となりかねません。アクセルサーブ法律事務所は建設業界における経営実態を深く理解した上で、経営的な望ましさも踏まえたより実践的なアドバイスを提供しています。
建設工事の訴訟に関するよくある質問
最後に、建設工事の訴訟に関するよくある質問と回答を2つ紹介します。
建設工事に関して訴訟を提起するのにかかる費用はいくらくらい?
建設工事に関して訴訟を提起するのにかかる費用は、トラブルの内容などによって異なります。そのため、まずは弁護士に相談した上で、解決への方向性を定めるとよいでしょう。
その上で、訴訟対応を弁護士に依頼する場合にかかる費用の見積もりをとり、依頼するかどうかを検討します。
建設工事の訴訟は弁護士に依頼しなくても提起できる?
制度上は、建設工事の訴訟を弁護士に依頼せず、本人訴訟として提起することも可能です。ただし、おすすめはできません。
建設工事の紛争では、次の資料や知見を踏まえた主張立証が必要となることが多く、専門的な対応を要する場面が少なくないためです。
- 契約書、見積書、設計図書
- 工程表、施工写真、議事録
- 出来高・出来形資料、専門的知見
無理に自社だけで対応すると、必要な主張が漏れたり、必要な資料の提示が漏れたりして、望まない結論となる可能性があります。
【実務の注意】
令和8年5月21日以降、弁護士等の訴訟代理人には電子申立てが義務付けられています。
まとめ
訴訟に発展する可能性がある建設工事のトラブルには、追加工事に関する紛争、工事代金の未払いに関する紛争、工事遅延に関する紛争などがあります。
紛争が生じたら、交渉、建設工事紛争審査会のあっせん・調停・仲裁、裁判所の民事調停、訴訟から、事案に応じた解決手段を検討します。多くは交渉から始めます。ただし、相手方の態度、時効・除斥期間、証拠保全の必要性、仮差押え(=裁判の前に相手の財産を押さえておく手続き)など保全手続の要否によっては、早期に法的手続を検討すべき場合もあります。
建設工事に関する紛争には、事前の対策で防げるものも少なくありません。契約書を作り込み、仕様や工事の範囲を明確にすることでトラブルを予防でき、訴訟に発展する可能性を引き下げられるでしょう。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界の法務に特化し、訴訟対応にも予防法務にも豊富なサポート実績があります。建設工事が訴訟に発展してお困りの際や、トラブルを予防する対策を講じたいとお考えの際は、お気軽にご相談ください。



