建設業の下請け代金未払いへの対応方法|元請への請求・法的手続を弁護士が解説

工事を施工したのに、元請企業が代金を払ってくれない。そんな建設・下請会社の経営者の方へ。下請代金が期日に入らないと、自社の資金繰りが一気に苦しくなります。
この記事でわかることは、次の3点です。
- ①下請代金が未払いになる主な原因
- ②元請企業はいつまでに支払う必要があるのか(支払期限)
- ③未払いのときの初期対応と、5つの回収方法
一言でいえば、まず未払いの理由を特定し、早めに弁護士へ相談することです。理由によって、効く手が変わるからです。
当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設業界の法務を重点的に取り扱っており、下請代金の回収についても豊富なサポート実績を有しています。
▼この記事のポイント
- 建設業で下請代金が未払いになる主な原因は、元請企業の資金繰り悪化や、工事の「完成」「契約適合」についての認識の食い違い。
- 元請企業が発注者から出来高払または竣工払を受けた場合、その工事を施工した下請負人に、支払を受けた日から1か月以内で、かつ、できる限り短い期間内に、相応する下請代金を支払う必要がある。
- 特定建設業者が注文者となる一定の下請契約では、下請負人からの引渡しの申出日から50日を経過する日以前で、かつ、できる限り短い期間内に支払期日を定める必要がある。
- 未払いが起きたら、まず未払いの理由を確認したうえで、早期に弁護士に相談する。

弁護士 小澤 裕也
弁護士 小澤 裕也
アクセルサーブ法律事務所
代表弁護士
愛知県立一宮高校卒業
立教大学法学部卒業
明治大学法科大学院修了


建設業で下請に支払う工事代金が未払いとなる主な原因
下請代金が未払いとなる理由は、1つではありません。よくあるのは、次の3つです。
- 元請企業の資金繰り悪化や発注者からの未収を理由に、支払いが遅れているから
- 元請企業から工事が完成していないと主張されているから
- 元請企業から工事が契約内容に適合していないと主張されているから
元請企業の資金繰り悪化や発注者からの未収を理由に、支払いが遅れているから
1つ目は、元請企業側の資金繰りの都合です。背景に「施主が元請企業に代金を支払わない」事情があるケースもあります。
とはいえ、元請企業の資金繰りの都合や施主からの未収は、支払いを遅らせてよい正当な理由になりません。下請企業としては、契約で定めた期日までに下請代金を支払うよう元請企業に求めることが可能です。
元請企業から工事が完成していないと主張されているから
2つ目は、「工事が完成したか否か」についての認識の違いです。
下請代金を支払うタイミングは、契約に別の定めがない限り、原則として「仕事の目的物の引渡しと同時」です(民法633条本文)。目的物の引渡しを要しない仕事は、仕事完成後に報酬を請求できると解されます。
ただし、実際の建設工事では次の点に注意します。
- 契約で支払時期を定めているのが一般的である
- 建設業法24条の3や24条の6による支払期限の規制が適用される場合がある
「引渡しがない限り一切支払う必要がない」と単純に整理することはできません。
あなたの現場で言うと、こういう食い違いです。
下請である自社は「A宅はキッチンの配管工事だけを依頼され、すべて完了させた」と考える。一方で元請企業は「トイレの配管工事もまとめて依頼したはずだ」と主張してくる。
この場合、契約上、実際にキッチン部分とトイレ部分の双方を一体として請け負っていたかどうかが問題となります。
実際に両方を一体として請け負っていたなら、トイレ部分の工事も終えてから請求する方向になりやすいです。
一方、部分払いや出来高・出来形払いの定めがある場合や、工事をした部分だけでも元請企業が利益を受けている場合なら、自社の主張が通りやすいと言えるでしょう。
このように工事の範囲について齟齬が生じている場合は、契約書、元請企業とのやり取りの記録、見積書・発注書・請書などの記載から「どちらの言い分が正しいのか」を検証し、主張することとなります。
元請企業から工事が契約内容に適合していないと主張されているから
3つ目は、「工事に瑕疵(問題)があるか否か」についての認識の違いです。
施工はしたものの、その結果が種類、品質または数量に関して契約に適合していないことを契約不適合(=引き渡した工事が契約どおりでないこと)といいます。たとえば次の場合です。
- 仕様書に照らせばあるべき場所に、コンセントの差込口がない
- 仕様では白で施工すべきリビングの壁紙を、アイボリーで施工した
契約書に明記がなくても、新築物件なら「ドアがスムーズに開閉すること」「リビングのクロスに大きな皺がないこと」は備わっていてほしい性能・性質といえます。契約内容や目的に照らして通常求められるべき施工水準を満たしていない場合も、契約不適合に該当する可能性があります。
契約不適合がある場合、元請企業から次の主張を受ける可能性があります。
- 追完(補修・やり直し)請求
- 報酬減額請求
- 損害賠償請求
- 契約解除
ただし、これらの主張が認められるには、請求の種類ごとに一定の条件を満たす必要があります。よく問題になるのは、次のような点です。
- 契約不適合の内容と程度
- 補修ができるかどうか(主に追完請求)
- 下請企業に落ち度(帰責性)があるかどうか(主に損害賠償請求)
- 元請企業の指図や支給材料が原因となっていないかどうか
契約不適合を主張されても、元請企業が当然に下請代金全額の支払いを拒めるわけではありません。実際、元請企業から「壁紙はアイボリーで」と指示され、そのとおり施工しただけの場合もあります。それでも指示を認めず、「やり直すまで支払わない」と主張して未払いになるケースです。
建設業で元請企業が下請企業へ支払う下請代金の主な支払期限
そもそも下請代金は、法律上いつまでに支払う必要があるのか。柱は次の3つです。
- 原則:契約書に規定した期日まで
- 元請企業が発注者から出来高払・竣工払を受けた場合:支払を受けた日から1ヶ月以内
- 特定建設業者が注文者となる一定の下請契約の場合:引渡しの申出日等から50日を経過する日以前
原則:契約書に規定した期日まで
まずは契約書の支払期日を確認します。ただし契約で定めた期日でも、建設業法24条の3や24条の6などの強行的な支払期限規制に反する内容であれば、そのまま有効に扱えない場合があります。
契約書に支払期日の定めがない場合は、民法633条や建設業法上の規律を踏まえて支払時期を検討します。
元請企業が発注者から出来高払・竣工払を受けた場合:支払を受けた日から1か月以内
建設業法の規定により、元請企業が発注者から出来高払又は竣工払によって工事代金の支払を受けた場合は、そこから1か月以内(かつ、できるだけ短い期間内)に一定の下請代金を支払わなければなりません(建設業法24条の3第1項)。
元請負人は、その建設工事を施工した下請負人に対し、元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合と、当該下請負人が施工した出来形部分に応じた下請代金を、支払を受けた日から1か月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払う必要があります。
また、元請企業が前払金の支払いを受けたときは、下請負人に対し、資材の購入や労働者の募集など工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう、適切な配慮をしなければなりません(同3項)。
特定建設業者が注文者となる一定の下請契約の場合:引渡しの申出日から50日を経過する日以前
特定建設業者が注文者となる下請契約では、下請代金の支払期日を、下請負人からの引渡しの申出日から50日を経過する日以前で、かつ、できる限り短い期間内に定めなければなりません(建設業法24条の6第1項)。下請負人が特定建設業者である場合や、資本金額が4,000万円以上の法人である場合などは除きます。
契約書でこれに反する規定をした場合でも、次のように扱われます(同2項)。
- これに反する支払期日を定めた場合は、引渡しの申出日から50日を経過する日を支払期日に定めたものとみなされる
- 支払期日を規定しなかった場合は、引渡しの申出日を支払期日として定めたものとみなされる
【期限に注意】 元請企業がこの期限までに下請代金を支払わなかった場合、年14.6%の遅延利息を支払う必要が生じます(同4項、建設業法施行規則14条)。
(参考)建設業法と取適法の違い
取適法とは、発注者・受注者の対等な関係に基づき、事業者間の価格転嫁や取引の適正化を図る法律です。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」であり、「中小受託取引適正化法」が略称、「取適法」が通称です。
名称の経緯は、次のとおりです。
- 改正前の法律名は「下請代金支払遅延等防止法」であり、一般に「下請法」と呼ばれていた
- 「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」は、取適法への名称変更等を行った改正法の名称
- 2026年1月1日に改正法が施行され、法律名や用語、規制対象などが見直されている
取適法では、検査の有無にかかわらず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して60日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、製造委託等代金の支払期日を定めなければならないとされています(取適法3条)。
ただし、建設業法に規定される建設業を営む者が業として請け負う建設工事自体は、原則として建設業法の規律を受けます。
もっとも、建設業者間の取引でも、建設工事の請負そのものではない取引(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託など)は、取引内容や事業者の規模によって取適法の適用が問題となる場合があります。
建設業で下請代金が未払いとなっている場合の初期対応
下請代金が未払いになったとき、最初にやることは3つです。
- 未払いとなっている理由を確認する
- 弁護士に相談する
- 目的物の引渡しを留保できるか、契約内容や工事の状況を踏まえて慎重に検討する
未払いとなっている理由を確認する
まずは、未払いの理由を確認しましょう。理由はさまざまであり、その理由により的確な対処方法も異なるためです。
弁護士に相談する
続いて、できるだけ早期に弁護士に相談します。その状況に応じた的確な回収方法を把握しやすくなるためです。相談先には、建設業界の法務に強い弁護士を選ぶとよいでしょう。
アクセルサーブ法律事務所は、建設業界の法務を重点的に取り扱っており、下請代金の未払い対応についてもご相談・ご依頼をお受けしています。お困りの際は、お早めにご相談ください。


目的物の引渡しを留保できるか、契約内容や工事の状況を踏まえて慎重に検討する
状況によっては、下請代金の支払いと目的物の引渡しを同時履行の関係にあるものとして、支払いと引換えに引渡しを行うと主張できる可能性があります。ただし、建設工事では次の事情もあります。
- すでに現場の支配が元請企業又は施主側に移っている
- 契約上・建設業法上の引渡し・検査手続が進んでいる
無断で現場占有を続けたり、鍵や資料の引渡しを拒んだりすると、かえって債務不履行や不法行為を主張されるリスクもあります。留保できるかは、契約内容、工事の完成状況、現場の管理状況、支払期日を踏まえ、弁護士と相談して慎重に判断してください。
建設業の下請代金が未払いとなっている場合の主な回収方法
未払いとなった下請代金の回収方法には、主に次の5つがあります。
- 弁護士からの請求
- 建設工事紛争審査会のあっせん・調停・仲裁などの裁判外紛争解決手続
- 支払督促
- 請求額が60万円以下の場合の少額訴訟
- 通常の訴訟
どの方法が適しているかは、状況によって異なります。まずは弁護士に相談したうえで、状況に応じた「戦略」を練るとよいでしょう。
弁護士からの請求
1つ目は、弁護士からの請求です。依頼を受けた弁護士が相手方に内容証明郵便(=いつ、誰から誰に、どのような内容の文書が差し出されたかを日本郵便株式会社が証明する郵便))を送るなどして支払いを求めることが多いでしょう。
内容証明郵便が届くことは、「このまま対応しなければ法的措置に移行する」というメッセージにもなります。この時点で相手方が支払いに応じ、解決に至る場合もあります。
建設工事紛争審査会のあっせん・調停・仲裁などの裁判外紛争解決手続
2つ目は、裁判外紛争解決手続(ADR)による解決です。あっせん・調停・仲裁など、裁判によらない手続きで簡易・迅速に問題解決をはかる手続をいいます。
建設工事の請負契約に関する紛争なら、建設工事紛争審査会のあっせん・調停・仲裁を利用できる場合があります。事案によっては、裁判所の民事調停も選択肢です。
- あっせん・調停:当事者間の合意による解決を目指す手続
- 仲裁:当事者間に仲裁合意がある場合に、仲裁判断によって終局的な解決を図る手続
支払督促
3つ目は、支払督促です。支払督促とは、金銭等の支払請求について、債権者の申立てに基づき、簡易裁判所の裁判所書記官が相手方に支払を命じる手続です。通常訴訟と異なり書類審査のみで進むため、簡易・迅速です。
- 支払督促を受け取ってから2週間以内に、債務者が異議を申し立てない
- 債権者(自社)が仮執行宣言を申し立てることが可能となる
- 仮執行宣言付支払督促が相手方に送達されると、これに基づいて強制執行が可能となる
ただし、相手方が期間内に異議を申し立てると、自動的に通常訴訟へ移行します。元請企業が債務の存在(下請代金の支払い義務)そのものを否定している場合は、はじめから通常訴訟を申し立てることも検討すべきでしょう。
請求額が60万円以下の場合の少額訴訟
4つ目は、少額訴訟です。少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則1回の審理で紛争解決を図る手続です。未払いの下請代金が60万円以下なら、選択肢に入ります。
通常の訴訟
5つ目は、通常訴訟です。裁判所が諸般の事情を考慮して判決を下します。「工事が完成しているか否か」など債務の前提条件に争いがある場合は、最終的に訴訟で解決をはかることになるでしょう。
判決に不服がある場合、電子判決書又は民事訴訟法254条2項の電子調書の送達を受けた日の翌日から数えて2週間に限り控訴ができます。いずれの当事者も期間内に控訴しなければ判決が確定し、両当事者がその判決に拘束されます。
建設業で下請代金が未払いとなりお困りの場合はアクセルサーブ法律事務所へご相談ください
建設業で下請代金が未払いとなってお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所へご相談ください。主な特長は、次の3つです。
- 建設・不動産業界の法務に強い
- トラブルを防ぐ「予防法務」を得意としている
- 実践的なアドバイスを得意としている
建設・不動産業界の法務に強い
アクセルサーブ法律事務所は、建設・不動産業界の法務を重点的に取り扱っています。これらの業界で生じやすいトラブルや、関連する裁判例・実務上の留意点を踏まえ、事案に応じた解決策をご提案します。
トラブルを防ぐ「予防法務」を得意としている
下請代金の未払いなどのトラブルが起きると、解決までに多大な時間と労力を要します。トラブルの中には、事前の対策で防げるものも少なくありません。
アクセルサーブ法律事務所は「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことを最終的なゴールに設定し、これを実現するためにトラブルを防ぐ「予防法務」に力を入れています。
実践的なアドバイスを得意としている
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建設業の下請代金の未払いに関するよくある質問
最後に、よくある質問を2つ紹介します。
建設業で下請代金の支払いが遅れた場合、遅延損害金は請求できる?
本来の下請代金と合わせて、遅延損害金又は遅延利息(=支払いが遅れた期間に対する、利息のようなもの)を請求できる可能性があります。
建設業法24条の6が適用される特定建設業者が、同条所定の期限までに支払わない場合は、こうなります。
- 下請負人からの引渡しの申出日等から起算して50日を経過した日から、支払日まで
- 年14.6%の遅延利息を支払う必要がある
他方、建設業法24条の6が適用されない場合は、契約で定めた遅延損害金率や、定めがない場合の法定利率などを踏まえて請求額を検討します。
建設業で下請代金が未払いとなった場合、誰に相談すればよい?
建設業で下請代金が未払いとなった場合には、建設業界の法務に強い弁護士に相談するとよいでしょう。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
まとめ
建設業で下請代金が未払いとなる主な原因は、元請企業の資金繰り悪化や、工事が完成したか否かの認識の違いです。
下請代金が未払いとなったら、まずは未払いの理由を確認し、早期に弁護士に相談しましょう。そのうえで、支払督促や訴訟など、状況に応じた手段で未払金の回収を試みます。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界の法務に特化しており、下請代金が未払いとなった場合の対応についても豊富なサポート実績を有しています。建設業の下請代金が未払いとなりお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお早めにご相談ください。




