工事代金未払いが発生した場合の元請企業の責任は?弁護士がわかりやすく解説

工事代金を払ってもらえない建設・下請会社の経営者の方へ。未払いの金額によっては、自社の資金繰りに影響が及びかねません。
この記事でわかることは3つです。
- ①元請企業に責任を追及できるのはどんなときか
- ②払わない元請企業にどんなペナルティがあるか
- ③未払いが起きたら何をすべきか
直接の発注者ではない元請企業に責任を追及できるケースは限られます。
当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設業界の法務を重点的に取り扱っており、工事代金が未払いとなったケースにも豊富なサポート実績を有しています。
▼この記事のポイント
- 工事代金の未払いで元請企業に責任を問えるのは、元請企業が自社の直接の発注者である場合が原則。この場合は未払金の支払いを直接請求できる。
- 自社が孫請の場合、元請企業へ当然に直接請求できるわけではない。元請企業が特定建設業者なら、許可行政庁に立替払等の勧告を求めることを検討できる場合がある(建設業法41条3項)。
- 元請企業が支払期日を守らないと、年14.6%の遅延利息や、指示・営業停止処分の対象となる可能性がある。
- 未払いの理由(単純な遅延か、工事未完成・契約不適合の主張か)を確認したうえで、早めに弁護士へ相談する。

弁護士 小澤 裕也
弁護士 小澤 裕也
アクセルサーブ法律事務所
代表弁護士
愛知県立一宮高校卒業
立教大学法学部卒業
明治大学法科大学院修了


工事代金が未払いとなった場合に、元請企業へ請求・相談できる主なケース
元請企業に工事代金を請求できる主なケースは、次の2つです。
- 元請企業と自社が直接工事請負契約を締結している場合
- 元請企業が特定建設業者である場合
元請企業と自社が直接工事請負契約を締結している場合
自社が一次下請けであり、元請企業が自社への直接の発注者である場合には、原則として、未払いとなった工事代金を支払うようその元請企業に請求できます。元請企業が、自社に工事代金を支払う直接的な義務を負っているためです。
元請企業が特定建設業者である場合
元請企業が特定建設業者(=特定建設業の許可を受けた建設業者)であれば、孫請でも打ち手が残ります。
特定建設業許可は、発注者から直接請け負った1件の建設工事について、下請契約の請負代金の額が合計5,000万円以上、建築一式工事の場合は合計8,000万円以上となる下請契約を締結して施工しようとする場合に必要となります。
この場合、自社が一次下請ではなく孫請等であっても、建設業法41条3項に基づき、許可行政庁に対して、元請企業へ立替払等の適切な措置を勧告するよう求めることを検討できる場合があります。
あなたの現場で言うと、特定建設業者のA社が元請、その下請がB社、自社はB社から受注した孫請、という形です。B社から支払われるはずの工事代金が未払いになったとき、許可行政庁(国土交通大臣や都道府県知事)がA社に対して、立替払等の措置を講ずるよう勧告する可能性がある、ということです。
ただし、この制度の中身は次のとおりです。
- 特定建設業者が元請として請け負った工事の全部または一部を施工する他の建設業者が、その施工に関して他人に損害を加えた。
- 許可をした国土交通大臣または都道府県知事が、必要があると認める。
- その大臣・知事が、特定建設業者に対し、適正と認められる金額の立替払その他の適切な措置を講ずるよう勧告できる。
【誤解に注意】これは行政庁が勧告できる制度にすぎません。孫請企業である自社が、元請企業に対して直接、未払金を立て替えるよう請求できる制度ではありません。
元請企業が下請企業に工事代金を支払わない場合のペナルティ
元請企業が直接の契約相手である下請企業に工事代金を払わない場合、さまざまなペナルティの対象となる可能性があります。主なものは3つです。
- 契約・民法上の遅延損害金や、建設業法上の遅延利息の支払い義務が生じる
- 建設業法違反に基づく指示・営業停止処分の対象となる
- 取適法違反に基づく改善指導・勧告の対象となる
契約・民法上の遅延損害金や、建設業法上の遅延利息の支払い義務が生じる
元請企業が契約で定めた期日までに工事代金を払わなければ、民法や契約に基づいて遅延損害金(=支払いが遅れた期間に対する、利息のようなもの)が発生します。
さらに、次の条件がそろうと、建設業法上の支払期日のルールがかかります(建設業法24条の6第1項、第2項、建設業法施行令7条の2)。
- 元請企業が特定建設業者である。
- 下請負人が、特定建設業者または資本金4,000万円以上の法人に該当しない。
- この場合、下請代金の支払期日は、原則として、下請負人から目的物の引渡しの申出を受けた日から起算して50日以内で、かつ、できる限り短い期間内に定めなければならない。
【年14.6%】この支払期日までに下請代金を支払わない場合、特定建設業者は、目的物の引渡しの申出の日から数えて50日を経過した日から実際に支払う日までの日数に応じ、年14.6%の割合による遅延利息を支払う必要があります(建設業法24条の6第4項、建設業法施行規則14条)。
建設業法違反に基づく指示・営業停止処分の対象となる
支払いのルールを破った元請企業は、行政処分を受ける可能性があります。守るべき期限は2つです。
- 特定建設業者は、前述のとおり50日以内(かつ、できる限り短い期間内)に支払期日を定め、その期日までに支払う。
- 発注者から工事代金の支払を受けた場合は、下請企業が施工した出来形部分に相応する下請代金を、その日から1か月以内に支払う(建設業法24条の3 1項)。
これらの規定に違反した場合、元請企業は建設業法に基づいて指示や営業停止処分などの対象となる可能性があります(同28条)。
取適法違反に基づく改善指導・勧告の対象となる
建設業を営む者が業として請け負う建設工事そのものは、原則として取適法の対象外です。
ただし、建設業者の取引でも、建設工事以外の製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託などに当たり、資本金・従業員数等の要件を満たせば、取適法の対象となる可能性があります。
取適法にも支払期日のルールがあります。対象となる製造委託等について、委託事業者は次の日から60日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、製造委託等代金の支払期日を定めなければなりません(取適法3条)。
- 中小受託事業者の給付を受領した日
- 役務提供委託または特定運送委託の場合は、役務の提供を受けた日
これに遅延した場合は、年14.6%の割合の遅延損害金を支払わなければなりません(同6条)。
工事代金の未払いに関する主なトラブル
元請企業が工事代金を払わない理由は、単純な支払い遅延だけではありません。理由をつけて支払いを拒むこともあります。主なトラブルは3つです。
- 「工事が完成していない」と主張される
- 「工事が契約内容に適合していない」と主張される
- 工事代金の額について食い違いがある
「工事が完成していない」と主張される
自社は「請け負った工事はすべて完成した」と考えているのに、元請企業が「工事は完成していない」として支払いを拒む場合があります。
前提として、契約などで別の定めがない限り、工事代金は仕事の目的物の引き渡しと同時に払われるべきものです(民法633条)。そのため、契約で出来高払や中間金の定めがない場合、原則として、仕事の完成・目的物の引渡し前に請負代金全額を請求することはできません。
ただし、次の場合には、民法634条に基づき、以下の2点の両方を満たす場合、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬を請求できることがあります。
- 請負が仕事の完成前に解除された場合
- 既施工部分のうち可分な部分の給付によって、注文者が利益を受ける場合
工事の範囲が契約書などで明確なら、それと照らして完成の有無を判断します。一方で、契約書などで範囲が明確になっていなければ、他の資料を集めて、請け負った工事範囲のすべてが完成していることを証明する必要が生じ、立証のハードルが高くなります。
「工事が契約内容に適合していない」と主張される
自社は「仕様どおりに工事をした」と考えているのに、元請企業が「契約内容に適合していない」として支払いを拒む場合もあります。
たとえば、仕様では無垢材で施工すべき床を、自社のミスで複合材で施工した。こうした実際の不適合があると、注文者から次の主張を受ける可能性があります。
- 修補などの履行の追完(=直して契約どおりの状態にするよう求めること)
- 代金減額
- 損害賠償
- 契約解除
もっとも、請負人が負うべき対応や請求できる額は、次の事情で変わります。「やり直しをしなければ一切請求できない」とは限りません。
- 不適合の内容・程度
- 追完の可否
- 契約条項
- 注文者側の指示や材料支給の有無
ただし、契約書などで仕様が明確でなく、適合しているか客観的に判断できないケースも少なくありません。この場合は、メールのやり取りなどの資料を集め、工事が契約内容に適合しているかどうかを立証することになります。
工事代金の額について食い違いがある
金額そのもので食い違うこともあります。よくあるのが追加工事です。
自社は追加分を上乗せして請求できると考えているのに、元請企業が「追加工事の分も当初取り決めた請負代金に含まれている」と主張する。ここからトラブルに発展します。
建設工事の請負契約では、契約内容を変更するときは、原則として変更内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付する必要があります。そのため、追加工事の範囲、金額、工期への影響は、着手前に書面または適法な電子契約で明確にしておくことが重要です。
アクセルサーブ法律事務所は、工事代金が未払いとなった場合の対応に豊富な実績があります。元請企業から工事代金が支払われずお困りの際は、お早めにご相談ください。


元請企業からの工事代金が未払いとなった場合の初期対応
直接の発注者である元請企業が払わないときは、次の順に手を打ちます。
- 未払いとなっている理由を確認する
- 弁護士に相談する
- 内容証明郵便で催告する
- 支払督促を申し立てる
- 訴訟を提起して解決を図る
未払いとなっている理由を確認する
まずは、未払いとなっている理由や状況を確認しましょう。未払いの理由によって、適切な対処法が変わるためです。
- 元請企業が、特に理由なく支払期限に遅れているのか
- 元請企業が「工事が未完成である」などと主張しているのか
- 元請企業と連絡がつかなくなっているのか
弁護士に相談する
次に、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。相談先は、建設業界の法務に特化した弁護士がおすすめです。状況に応じた的確な対処法の見通しが立てられます。
内容証明郵便で催告する
弁護士に正式に依頼すると、事案に応じて、弁護士名の通知書や内容証明郵便(=いつ、誰から誰に、どのような内容の文書が差し出されたかを日本郵便株式会社が証明する郵便)で工事代金の支払いを求めます。
ただし、相手方の資金状況が悪化し、財産を散逸させるおそれがある場合には、通知に先立って仮差押えなどの保全手続を検討すべきこともあります。
この段階で元請企業が工事代金と遅延損害金を払えば、解決です。無視されたり反論されたりした場合は、相手の対応に応じて次の打ち手を検討します。
支払督促を申し立てる
支払い義務が明確なのに払わない場合は、支払督促の申立てを検討します。支払督促とは、債権者(ここでは、下請企業)側の申立てに基づいて、裁判所書記官が相手方(ここでは、元請企業)に金銭等の支払いを命じる手続きです。
支払督促は書類審査のみで進むため、通常訴訟より簡易・迅速です。ただし相手方が異議を申し立てると、自動的に通常訴訟へ移行します。流れは次のとおりです。
- 元請企業が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てない場合、債権者は仮執行宣言を申し立てられる。
- 相手方に仮執行宣言付支払督促が送達されると、これに基づいて強制執行の申立てが可能となる。
- ただし、仮執行宣言付支払督促に対しても相手方は異議を申し立てられ、その場合は通常訴訟で請求の当否を争う。
そのため、元請企業が支払い義務そのものを否定している場合や、金額の主張が食い違う場合は、はじめから訴訟を提起することを検討すべきでしょう。
訴訟を提起して解決を図る
支払督促に異議が申し立てられた場合や、そもそも工事代金の支払い義務や額に争いがある場合は、訴訟での解決を検討します。訴訟では、裁判所が未払いの背景や事情を考慮して判決を下します。
【期限に注意】判決内容に不服がある場合、控訴(=上級の裁判所に取消し・変更を求める手続き)ができるのは、電子判決書又は民事訴訟法254条2項の電子調書の送達を受けた日から数えて2週間以内に限られます。どちらも控訴せずにこの期間が過ぎると判決が確定し、両当事者に判決に従う義務が生じます。
なお、話し合いで解決できる可能性があれば、訴訟の前に民事調停を申し立てることもあります。裁判所の調停委員が当事者から交互に事情を聴き、意見を調整して合意の成立を目指す手続きです。
工事代金が未払いでお困りの場合はアクセルサーブ法律事務所へご相談ください
工事代金が未払いとなりお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。当事務所の主な特長は次の3つです。
建設・不動産業界の法務に特化している
アクセルサーブ法律事務所は、建設・不動産業界の法務を重点的に取り扱っています。これらの業界における未払金の回収についても対応実績があり、状況に応じた回収方法をご提案します。
トラブルを未然に防ぐ「予防法務」に力を入れている
工事代金が支払われないトラブルは、解決できても対応に時間や費用がかかりますし、精神的な負担も大きいものです。トラブルが起きること自体が、会社にとっての不利益です。
当事務所は「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことを最終ゴールに設定しています。そのため、トラブルを未然に防ぐ「予防法務」に力を入れています。
建設業の経営実態を踏まえ、実践的なアドバイスを提供する
法的な正しさだけを説かれても、現場で実行に移すのは難しいものです。アクセルサーブ法律事務所は机上の空論ではなく、建設業における経営実態を深く理解したうえで、より実践的なアドバイスを提供しています。


工事代金の未払いに関するよくある質問
最後に、よくある質問と回答を2つ紹介します。
工事請負契約書がなければ未払いの工事代金は回収できない?
工事請負契約書がないからといって、直ちに未払いの工事代金を回収できなくなるわけではありません。民法上、請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することで成立します(民法632条)。
ただし、建設工事の請負契約では、建設業法19条により契約内容を書面化して相互に交付することが求められています。契約書がない場合、次の立証が難しくなります。
- 契約が成立していたこと
- 工事範囲
- 請負代金額
- 追加工事の合意
契約書があれば立証は比較的容易ですが、契約書がない場合は立証のハードルが高くなります。
元請企業は、下請企業にいつまでに下請代金を支払う必要がある?
元請企業が守るべき支払期限は、次のとおりです。
- 元請企業が発注者から出来形部分に対する支払または工事完成後の支払を受けた場合、その工事を施工した下請負人に対し、対応する下請代金を、支払を受けた日から1か月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければなりません(建設業法24条の3第1項)。
- 元請企業が特定建設業者であり、下請負人が特定建設業者または資本金4,000万円以上の法人に該当しない場合は、下請負人から目的物の引渡しの申出を受けた日から起算して50日以内で、かつ、できる限り短い期間内に下請代金の支払期日を定め、その期日までに支払う必要があります(建設業法24条の6第1項、第2項、建設業法施行令7条の2)。
まとめ
自社が元請企業から直接工事を請け負っている場合、工事代金が未払いになれば、原則としてその元請企業に未払金の支払いを請求できます。
一方で、自社が孫請企業であり、直接の発注者である下請企業が払わない場合、元請企業に当然に直接請求できるとは限りません。ただし、元請企業が特定建設業者であり、建設業法41条3項の要件を満たす場合には、許可行政庁による立替払等の勧告を求めることを検討できる場合があります。
いずれにしても、工事代金が未払いとなったら、まずは未払いの理由を確認し、早期に弁護士に相談するとよいでしょう。的確な対処法が把握でき、回収に向けた対応を任せることもできます。
アクセルサーブ法律事務所は建設業界の法務を重点的に取り扱っており、工事代金が未払いとなった場合の回収についても豊富なサポート実績を有しています。工事代金が未払いとなってお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。




