工事代金が未払いなら仮差押えを急ぐべき?流れ・費用・成功のポイントを弁護士が解説

元請企業から工事代金を払ってもらえずお困りの建設・下請会社の経営者の方へ。
早めに仮差押えをしておくことで、未払いとなった工事代金を将来回収できる可能性を確保できる場合があります。
この記事でわかるのは、次の3つです。
- 「仮差押え」とは何か
- 仮差押えはどのような流れで進めればよいか
- 仮差押えを成功させるポイントは何か
工事代金が未払いとなったら早めに弁護士に相談し、仮差押えなど状況に合った対応をとりましょう。
当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産業界の法務に特化し、工事代金が未払いとなった場合の仮差押えについても豊富なサポート実績があります。工事代金の未払いでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
▼この記事のポイント
- 仮差押えとは、一定の条件のもとで、正式な判決の前に債務者(ここでは元請企業)の預貯金や売掛債権などを差し押さえておく手続きのこと。
- 工事代金が未払いとなった場合の仮差押えは、時間との勝負。
- 工事代金が未払いとなったら、まずは未払いとなっている事情を確認し、早めに弁護士に相談する。
- 備えとして、日頃から契約書や注文書をきちんと発行してもらうことや、相談できる弁護士を見つけておくことがおすすめ。
なお、この記事では元請企業が「飛んだ」場合や、何らかの理由を付けて請負代金を支払わない場合を想定しています。元請企業が正式に倒産した後の回収については、こちらをご参照ください。
▼併せて読みたい
- 元請が倒産したら工事代金はどうなる?倒産前・倒産後の回収方法を弁護士が解説

弁護士 小澤 裕也
弁護士 小澤 裕也
アクセルサーブ法律事務所
代表弁護士
愛知県立一宮高校卒業
立教大学法学部卒業
明治大学法科大学院修了


元請からの工事代金が未払いとなった場合の「仮差押え」とは?
元請からの工事代金が未払いとなった場合には、まず未払いの理由や元請企業の資産状況を確認し、任意に請求していくのみで足りるのか、仮差押えなどの保全手続を急ぐべきかを検討する必要があります。特に、元請企業の資金繰り悪化や財産散逸のおそれがある場合には、早期に仮差押えを検討すべきです。はじめに、仮差押えの概要を解説します。
登場人物と対象財産の整理
この記事で想定する登場人物は、次のとおりです。
| 登場人物 | 立場 |
| 自社 | 元請企業から工事を請け負っている下請会社。元請企業から工事代金を支払ってもらえず困っている。 |
| 元請企業 | 自社への直接の発注者。 |
| 施主 | 元請企業に工事を発注した者。 |
お金の流れを単純化すると、「施主→元請企業→自社(下請企業)」です。
例外はありますが、元請企業は施主に対して「債権(=お金を払ってもらう権利)」を持っていることが多いです。そして、自社は元請企業に対して債権を持っている状態であるとします。
そもそも「仮差押え」とは?
仮差押えとは、債務者の財産を先に押さえておく民事保全手続きです。
判決などの債務名義(=強制執行のもとになる公的な文書。確定判決など)を取得する前に、将来の強制執行に備えて行います。
工事代金が未払いとなった場合に有力な候補となるのは、「元請企業が持っている、施主に対する債権」です。他にも元請企業の預貯金債権、売掛債権、不動産なども候補となりますが、ここでは施主に対する債権を軸にお話をします。
勘違いも多いのですが、仮差押えの効果は、あくまで財産を「動かせないようにする」だけです。元請企業の施主に対する債権を仮差押えすると、施主は原則として、元請企業への支払いを禁止されます。仮差押えをしただけで、未払金をすぐに回収できるわけではありません。
その後、実際に回収するためには、別途訴訟などで「自社に債権(未払金を回収する権利)があること」を認めてもらう必要があります。
それでもあえて仮差押えをするのは、元請企業が財産を使ったり隠したりする事態を避けるためです。せっかく訴訟で自社の債権が認められても、その時点で元請企業に財産がなければ回収できません。まさに「絵に描いた餅」です。
そして、工事代金が未払いになっている以上、元請企業の資金繰りは相当に悪化している可能性が高いでしょう。元請企業が施主から工事代金を回収してしまえば、そのお金が手元に残る保証はありません。隠されてしまえば、探し出すのは一苦労です。
そこで、「せっかく裁判に勝ったのに回収できる財産がない」という状態を避けるため、正式な訴訟の結果が出る前に仮差押えを検討します。
仮差押えの要件とかかる費用(担保金)
仮差押えには、「自社に元請への債権があること+保全の必要性」という要件があります。また、一定の担保金(=供託金。裁判所の命令により法務局などへ一時的に預けるお金)を納める必要があります。
要件:自社に元請への債権があること+保全の必要性
仮差押えの要件は、次の2つです。
| 要件 | 具体例 |
|---|---|
| 被保全債権があること | 自社に、元請企業に対する工事代金債権が存在すること |
| 保全の必要性があること | 正式な判決を待つと、「せっかく裁判に勝ったのに回収できる財産がない」状態となるおそれがあること |
申し立てる際は、これらの要件を満たすことを疎明(=一応確からしいと裁判官に示すこと)します。
担保金(供託金)が必要になる
裁判所から担保提供を命じられた場合には、供託などの方法で担保を提供する必要があります。担保額は、被保全債権額や対象財産、事案の内容、裁判所の運用などによって異なります。
本案訴訟の終了後などには、一定の要件のもとで、担保取消しまたは担保取戻しの手続きにより担保金を取り戻せることが大半です。しかし、一時的には現金を用意しなければなりません。
また、違法な仮差押えによって相手方に損害を与えた場合には損害賠償責任を負い、提供した担保がその埋め合わせに充てられる可能性があります。
工事代金が未払いとなった場合の仮差押えのポイント
特に重要なポイントは次の2つです。
- とにかくスピード勝負
- 未払金の回収実績が豊富な弁護士のサポートを受ける
とにかくスピード勝負
工事代金が未払いとなった場合の仮差押えは、時間との勝負です。
元請企業が持つ「施主に対する代金請求債権」を仮差押えできるのは、施主が元請企業に支払う「前」だけです。施主が支払ってしまえば、元請企業はもうその債権を持っていません。持っていない財産は、差し押さえられません。
代わりに、元請企業の手元にはお金が入ります。そのため、元請企業の預貯金債権の仮差押えをする、という余地はあります。また、他の売掛債権、不動産など別の財産を仮差押えできる可能性もあります。しかし、お金に困っている元請企業なら、預貯金はすでに他への支払いに使われている可能性が高いでしょうし、他の売掛債権、不動産なども存在するとは限りません。対応が遅れるほど、回収のハードルは上がります。
未払金の回収実績が豊富な弁護士のサポートを受ける
仮差押えは、実績が豊富な弁護士に依頼するのがおすすめです。
未払金の回収は、手早く進める必要があります。そして、仮差押えの必要性を裁判官に素早く納得してもらうには、納得してもらえるだけの資料や理由付けを短期間で積み上げなければなりません。ここは、弁護士の手腕が問われるところです。
お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。当事務所は、工事代金が未払いとなった場合の仮差押えについて豊富なサポート実績があります。


元請からの工事代金が未払いとなった場合の対応の流れ
工事代金が未払いとなったら、まずその事情を確認したうえで、早期に弁護士に相談するとよいでしょう。対応の流れは次のとおりです。
- 未払いとなっている事情を確認する
- 早急に弁護士に相談して対応方針を決める
- 元請が施主に対して持つ代金請求債権などを仮差押えする
- 元請に代金支払請求訴訟を提起する
未払いとなっている事情を確認する
はじめに、未払いとなっている事情や状況を確認します。
元請企業の単なる事務処理ミスであれば、仮差押えに至らず早期に解決する可能性もあります。一方、元請企業が「工事が完成していない」など未払いの理由を主張している場合には、前提条件に食い違いがあります。
仮差押えの前に、事実関係を入念に確認しましょう。誤解があるなら、話し合いで解決するかもしれません。
早急に弁護士に相談して対応方針を決める
次に、早期に弁護士に相談して対応方針を決めます。
相談先には、建設業の法務に強い弁護士を選ぶとよいでしょう。実績豊富な弁護士に相談することで、状況に応じた最適な対処法を提案してもらえます。
元請が施主に対して持つ代金請求債権などを仮差押えする
弁護士と相談のうえ仮差押えをする方針に決まったら、仮差押えを申し立てます。
工事代金の未払金の回収では、「元請企業が持っている、施主に対する債権」を対象とすることが多いでしょう。ただし、元請企業に不動産や預貯金など他に目ぼしい財産がある場合には、そちらを対象とすることもあります。
元請に代金支払請求訴訟を提起する
次に、代金支払請求訴訟を提起します。仮差押えをしただけでは、未払金は回収できないためです。
訴訟などで自社の債権が認められ、強制執行に必要な債務名義を得ることで、仮差押えの対象財産から回収できる可能性があります。
ただし、元請企業について破産手続きが開始された場合、仮差押えをしているだけでは、原則として他の破産債権者に優先して弁済を受けることはできません。この点も踏まえて、回収方法を慎重に検討する必要があります。
工事代金の未払いに備えて日頃から講じたい対策
万が一に備えて、日頃から次の対策を講じることをおすすめします。
- 契約書や注文書をきちんと発行してもらう
- 相談できる弁護士を見つけておく
契約書や注文書をきちんと発行してもらう
建設工事の請負契約を締結する際は、契約内容を明確にした契約書や注文書・請書などを適切に作成・保管しましょう。
建設業界の実情として、明確な書面がないまま工事を受発注することも少なくありません。特に、継続的に仕事を請けている元請企業との間では、書面がないことも多いようです。
契約書や注文書がないからといって、工事請負契約が成立しないわけではありません。しかし、未払金を回収しようとする際に、次の証明に苦労したり時間がかかったりする可能性が高くなります。
- 工事請負契約が成立していたこと
- 合意した工事請負代金の金額
証拠集めに時間がかかれば、仮差押えが間に合わなくなるおそれもあります。スムーズに対応できるよう、日頃から契約書や注文書の発行を受けて整理しておきましょう。
なお、建設工事の請負契約では、契約内容を書面等で適切に作成・交付することが建設業法で求められています(建設業法19条)。
相談できる弁護士を見つけておく
工事代金の未払いに備えて、相談できる弁護士を見つけておくことをおすすめします。可能であれば、建設業界の法務に精通した弁護士との顧問契約が望ましいでしょう。
顧問契約を締結しておけば、トラブルが生じた際に、新規の相談者よりも優先的な対応を受けられる可能性が高くなります。また、トラブルの初期段階や予防の段階から気軽に相談でき、早期解決や予防もしやすくなります。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界の法務に特化し、顧問契約にも対応しています。日頃から気軽に相談できる弁護士をお探しの際は、お気軽にお問い合わせください。


工事代金の未払いへのご相談はアクセルサーブ法律事務所にお任せください
工事代金が未払いとなってお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- 建設・不動産業界の味方である
- 実践的なアドバイスを提供する
- トラブルを未然に防ぐ「予防法務」に力を入れている
建設・不動産業界の味方である
当事務所は、建設・不動産業界で活躍する企業様の味方です。これらの業界の法務に特化し、取引慣習や起きやすいトラブルも熟知しています。困りごとの内容に応じた、的確なサポートができます。
実践的なアドバイスを提供する
法的な正しさだけを追求したアドバイスは、経営の実態に合わず、実行が難しいことも多いものです。
当事務所は建設業における経営実態を深く理解したうえで、実践的なアドバイスを提供しています。
トラブルを未然に防ぐ「予防法務」に力を入れている
トラブルが起きれば、最終的に解決できたとしても、多大な時間や労力がかかります。
信頼関係を築いてきた相手とのトラブルであれば、精神的な負担も大きいでしょう。トラブルには、事前の対策で防げるものが少なくありません。
当事務所は、トラブルを未然に防ぐ「予防法務」にも力を入れています。
工事代金の未払いに関するよくある質問
最後に、工事代金の未払いに関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
仮差押えをすれば工事代金の未払金は絶対に回収できる?
残念ながら、仮差押えをしたからといって、未払金を絶対に回収できるわけではありません。相手が破産してしまえば、回収は困難となります。相手の資産状況が破産に至るほど悪化する前に、早期の回収を図る必要があります。
仮差押えできるのは「施主に対する代金請求債権」だけ?
「施主に対する代金請求債権」だけではありません。
たとえば、相手の預貯金口座がある金融機関名や支店名がわかっている場合には、預貯金口座を仮差押えできる可能性があります。どの財産を対象とするかは、相手方の財産状況によって異なります。
まとめ
工事代金が未払いとなった場合の仮差押えについて解説しました。
仮差押えとは、正式な判決に先立って、相手(元請企業)の財産を一時的に押さえる手続きです。仮差押えをすることで、「せっかく勝訴したのに、回収できる財産がない」という事態を避けやすくなります。
工事代金が未払いとなった場合の仮差押えは、時間との勝負です。同時に、本当に仮差押えが最適かどうか、状況に応じた慎重な検討も必要です。未払いに気づいたら早期に弁護士に相談し、具体的な回収方法を検討しましょう。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界の法務に特化し、工事代金が未払いとなった場合の回収について豊富なサポート実績があります。工事代金の未払いでお困りの際は、お早めにご相談ください。



