【建設業】出来高払いが未払いに?工事を止める前に知るべき対処法を弁護士が解説

出来高払いの工事について、出来高部分の報酬が未払いとなりお困りの建設会社の経営者の方へ。
期限になっても出来高部分が支払われないとき、感情的になって具体的な根拠も確認しないですぐに工事を止めるのは危険です。まずは契約書を確認したうえで、契約内容などに沿って支払いを求めましょう。
この記事でわかるのは、次の4つです。
- 出来高部分の未払いを理由に工事を止めた場合に生じるリスク
- 出来高部分の未払いを理由に工事を止めることができる場合
- 出来高部分が未払いとなった場合の対処法
- 出来高部分の未払いに備えた主な対策
契約で取り決めたはずの出来高部分の報酬が支払われない場合には、早期に弁護士に相談して対応を検討しましょう。
当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産業界の法務に特化し、出来高部分の報酬の未払いに関するトラブルについても豊富なサポート実績があります。お困りの建設会社様は、お気軽にご相談ください。
▼この記事のポイント
- 出来高部分の未払いを理由に、工事を止めことができる場合がある。
- 出来高部分が未払いとなったら、まずは弁護士に相談して本来の支払期限や支払額を確認するとともに、契約上、工事を止める根拠があるかを確認する。
- 未払いを避ける主な対策としては、出来高の算定基準や支払期限の明確化などが挙げられる。

弁護士 小澤 裕也
弁護士 小澤 裕也
アクセルサーブ法律事務所
代表弁護士
愛知県立一宮高校卒業
立教大学法学部卒業
明治大学法科大学院修了


建設業で出来高部分が未払いとなったら工事をすぐに止めてもよい?
出来高部分に未払いが生じたからといって、すぐに何の根拠・理由もなく工事を止めるのは得策ではありません。根拠・理由なくすぐに止めてしまえば、自社の側がリスクを負う可能性があるためです。具体的なリスクは、次で解説します。
思わぬリスクを抱えないために、出来高部分が未払いとなったら、まず弁護士に相談して対応を慎重に検討しましょう。
出来高部分の未払いを理由に工事を止めた場合に生じるリスク
何の根拠・理由もなく工事を止めた場合、次のリスクが生じる可能性があります。
- 工事の遅延を理由に損害金を請求される
- 施主や自社の下請企業などに混乱が生じ自社の信用が悪化する
工事の遅延を理由に損害金を請求される
未払いへの対抗手段として何の根拠・理由もなく工事を中断すると、自社が工事の遅延について債務不履行責任(=契約上の義務を果たさなかった責任)を問われ、多額の損害賠償を求められるおそれがあります。
確かに、工事の中断は、未払金を回収する有効な対抗策の1つです。しかし、自社側の準備や法的な根拠の整理が不十分なまま踏み切れば、かえって自社が不利益を被りかねません。
仮に中断するのであれば、あらかじめ弁護士に相談してください。契約内容の確認や、内容証明郵便での催告(=期限を切って正式に支払いを求めること)など、慎重に段階を踏むべきです。自社の主張を裏付ける法的根拠や証拠を整理しないまま、中断に踏み切ってはいけません。
施主や自社の下請企業などに混乱が生じ自社の信用が悪化する
工事を中断すれば作業工程が大きく狂い、施主や自社の下請企業などに混乱が生じます。たとえ元請企業の未払いが原因の中断でも、第三者からは自社が「無責任な企業」に見えるおそれがあります。
これをきっかけに依頼が減ったり、下請企業が自社の仕事を請けてくれなくなったりすれば、自社にとって多大な損失となりかねません。
出来高部分の未払いを理由に工事を止めることができる場合
出来高払いの工事で支払期日を過ぎても代金が支払われない場合、一定の要件のもとでは、下請企業が工事の全部又は一部を一時中止できる可能性があります。
例えば、国土交通省の建設工事標準下請契約約款では、元請企業が前払金又は部分払金の支払を遅延し、下請企業が相当の期間を定めて支払を求めてもなお支払われない場合、下請企業は工事の全部又は一部を一時中止できると定めています。この場合、下請企業は、遅滞なく中止理由を明示した書面で元請企業に通知する必要があります。
ただし、この標準約款が当然にすべての建設工事契約に適用されるわけではありません。実際に締結した契約の内容や、民法上の履行拒絶の可否などを確認する必要があります。
法的な根拠が認められないまま工事を中断すると、上で述べた通り、反対に自社が損害賠償請求を受けるおそれがあるため、実行前に契約書と支払状況を確認することが重要です。
建設業で出来高部分が未払いとなった場合の対処法
出来高部分が未払いとなった場合には、感情的になって工事を中断するのではなく、まず弁護士に相談することをおすすめします。対処の流れを解説します。
- 弁護士に相談する
- 弁護士とともに契約書などを確認し、本来の支払期限や支払額を把握する
- 法的な根拠が認められる場合は工事中断に踏み切る
- 弁護士から未払いとなっている出来高部分の支払いを求める
- 仮差押えなどの方法で債権を保全する
- 契約を解除する
1.弁護士に相談する
まずは、弁護士に相談しましょう。相談先には、建設業界の法務に特化した事務所を選ぶのがおすすめです。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界の法務に特化し、出来高部分が未払いとなった場合の対応についても豊富なサポート実績があります。お困りの際は、お早めにご相談ください。


2.弁護士とともに契約書などを確認し、本来の支払期限や支払額を把握する
弁護士とともに、出来高払いや未払が生じた場合に関する契約書の規定を確認します。
民法では、請負工事の報酬は、原則として仕事の目的物の引き渡しと同時に支払うものとされています(民法633条)。もっとも、当事者間の合意で異なる支払時期を定めることは可能です。建設工事では、既に施工された部分に応じて代金の一部を支払う「出来高払い」が定められることがあります。
出来高払いでは、まず請負契約書などで定められた出来高の算定方法・支払時期・支払条件を確認する必要があります。
また、元請負人が注文者から出来形部分に対する支払いを受けている場合には、建設業法24条の3第1項に基づいて、下請負人に対する下請代金の支払いが必要となる場合があります。契約書だけでなく、元請企業と注文者との間の支払い状況も確認することが重要です。
3.法的な根拠が認められる場合は工事中断に踏み切る
契約書の確認を行った結果、法的な中止権が規定されていて、その条件に当てはまるなど、法的な根拠が認められる場合は、工事中断に踏み切ることも一手です。
4.弁護士から未払いとなっている出来高部分の支払いを求める
契約書の規定に照らして未払いや支払遅延が確認できたら、相手方(元請企業)に未払い部分の支払いを求めます。
多くの場合、弁護士から配達証明付きの内容証明郵便を送ります。内容証明郵便とは、いつ・どのような内容の文書を・誰から誰宛てに差し出したかを、日本郵便株式会社が証明する制度です。配達証明を付ければ、いつ相手方に配達されたかも証明できます。
記録が残るため、出来高部分を請求したことの証拠として活用できます。また、弁護士からの内容証明郵便は、「この時点で支払わなければ、裁判手続きなどに移行する」というメッセージにもなります。この時点で、未払いの出来高部分が支払われる効果も期待できます。
それでも相手方が支払いに応じない場合には、支払督促や民事調停、民事訴訟などでの回収を検討します。最適な回収方法は状況によって異なるため、弁護士に相談したうえで慎重に選びましょう。
5.仮差押えなどの方法で債権を保全する
未払金を回収できる可能性を高めるために、「仮差押え」などの方法での債権保全を検討します。仮差押えとは、将来の強制執行に備えて、判決などの前に相手方の財産を押さえておく民事保全手続きです。
支払督促や民事訴訟などで自社の債権が認められても、その時点で相手方に目ぼしい財産がなければ、強制執行をしても回収できません。そこで、判決などに先立って相手方の財産を「押さえておく」のが仮差押えです。仮差押えについては別の記事でくわしく解説しているため、こちらも合わせてご参照ください。
▼併せて読みたい
- 工事代金が未払いなら仮差押えを急ぐべき?流れ・費用・成功のポイントを弁護士が解説
6.契約を解除する
未払金が生じた場合、契約上一定の要件を満たせば解除ができることもあります。
場合によっては、契約自体の解除を検討することが望ましい場面もあるでしょう。
出来高部分の未払いに備えた主な対策
未払いへの備えとしては、次の2つが挙げられます。
- 出来高の算定基準や支払期限を明確化する
- 証拠書類を整理する
なお、当事務所はトラブルを未然に防ぐ「予防法務」にも力を入れています。未払いなどのトラブルを避ける対策を講じたい建設会社様は、お気軽にご相談ください。
出来高の算定基準や支払期限を明確化する
未払いトラブルを避けるためには、契約書で出来高の算定基準や支払期限などを明確にしておくべきです。
先ほど解説したように、出来高払いは民法上の原則ではありません。だからこそ、双方に誤認を生じさせないよう、支払いのルールを契約書ではっきり定めておく必要があります。
曖昧な規定は避け、誰が確認しても「いつ、いくら支払うか」がわかるように記載しましょう。
証拠書類を整理する
トラブルとなった際の回収をスムーズにするため、日頃から適切な記録を残して証拠書類を整理しておきましょう。具体的には、次のようなものです。
- 現場の写真
- 日報、作業記録
- 議事録
これらの記録は、出来高部分を算定するうえで重要な証拠となります。
出来高払いの工事代金が未払いとなりお困りの建設業者様はアクセルサーブ法律事務所までご相談ください
出来高払いの工事代金が未払いとなってお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。当事務所の主な特長は次の3つです。
- 建設・不動産業界の味方である
- 実践的なアドバイスを提供する
- トラブルを未然に防ぐ「予防法務」に力を入れている
建設・不動産業界の味方である
当事務所は建設・不動産業界の法務に特化した、これらの業界に従事する方の味方です。
業界で起きやすいトラブルや特有の取引慣習も熟知しており、困りごとの内容に応じた的確なサポートができます。
実践的なアドバイスを提供する
法的に正しいことと経営的に望ましいことは、一致しない場合もあります。それでも法的な正しさだけを追求するアドバイスがなされれば、「机上の空論」となりかねません。
当事務所は、建設業界の経営実態を深く理解したうえで、両方を踏まえた実践的なアドバイスを提供しています。
トラブルを未然に防ぐ「予防法務」に力を入れている
トラブルが発生すれば、対応に多大な時間や労力がかかりますし、精神的な負担も大きいものです。トラブルが起きること自体が、すでに不利益といえるでしょう。
当事務所は、建設・不動産業界に携わる方々がもっと輝ける未来を目指し、トラブルを未然に防ぐ「予防法務」にも力を入れています。
建設業での出来高払いの未払いに関するよくある質問
最後に、建設業での出来高払いの未払いに関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
出来高部分に対応する報酬は当然に請求できる?
出来高部分に対応する報酬は、当然に請求できるものではありません。請負契約では原則として、報酬は仕事の目的物の引き渡しと同時に支払うものとされているためです(民法633条)。
出来高払いを求めたいのであれば、あらかじめ元請企業と交渉し、契約書に定めることが望ましいです。
ただし、次のいずれかに当てはまり、既に施工した部分のうち可分な部分(=切り分けられる部分)によって注文者が利益を受けるときは、民法634条に基づいて、その利益の割合に応じた報酬を請求できる可能性があります。
- 請負契約が仕事の完成前に解除された場合
- 注文者の責めに帰することができない事由(=注文者の落ち度によらない事情)によって、仕事を完成できなくなった場合
出来高部分が未払いとなった場合の請求期限は?
出来高部分に対応する工事代金の請求権は原則として、権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間行使しないと、時効によって消滅します(民法166条1項)。
具体的な起算点は、契約内容や支払期限などによって異なります。未払いが生じたら、早期に対応することが重要です。
まとめ
建設業で出来高部分が未払いとなった際に工事を中断するリスクと、対処の流れなどについて解説しました。
未払いを理由にすぐに工事を止めると、自社が工事の遅延の責任を問われたり、自社の信用が低下したりするおそれがあります。すぐに工事を止めるのは得策ではありません。
出来高部分が未払いとなったら、まずは弁護士とともに契約書の規定などを確認し、未払金を支払うよう相手方に請求しましょう。状況によっては、相手方の財産の仮差押えなども検討します。
最適な回収方法は状況によって異なるため、まずは弁護士に相談し、状況に合った対応策を検討することをおすすめします。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界の法務に特化し、建設業における出来高部分の報酬の未払いに関するトラブルについても豊富なサポート実績があります。出来高払いの報酬が支払われずお困りの建設会社様は、お早めにご相談ください。



