【2025】重要事項の説明義務に違反するとどうなる?罰則はある?

宅地建物取引業法(以下、「宅建業法」といいます)の規定により、宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」といいます)には重要事項の説明義務が課されています。この義務に違反することは、さまざまなトラブルの原因となりかねません。
では、重要事項の説明義務に違反すると、どのような事態が生じるのでしょうか?また、重要事項としては、何を説明する必要があるのでしょうか?今回は、重要事項の説明義務の概要や説明義務に違反した場合に生じ得るリスク、重要事項として説明すべき事項、重要事項の説明義務に違反しないための対策などについて、弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は不動産・建設業界に特化しており、中でもトラブルを避ける「予防法務」を得意としています。不動産会社様が法令遵守体制を整備したいとお考えの際や、重要事項として説明すべき事項について相談できる弁護士をお探しの際などには、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
重要事項の説明義務とは?
重要事項の説明義務とは、その不動産や取引に関する重要な事項について、宅建業者が宅地建物取引士(以下、「宅建士」といいます)に説明させる義務です。
宅建業者は、売買や賃貸借の契約が成立するまでの間に不動産の買主や借主に対して書面を交付(一定の条件を満たした場合、電磁的方法による提供も可能)して、宅建士に重要事項を説明させなければなりません(宅建業法35条1項)。これは、不動産の購入や賃借を検討している人が、その不動産に関する重要な情報を得て十分に理解したうえで、購入や賃借をするか否かを判断できるようにするためです。
この重要事項の説明は、取引の相手方も宅建業者で、業として当該取引を行う場合などの一定の例外を除いて省略できません。
重要事項の説明義務に違反するとどうなる?
重要事項の説明義務に違反することは、さまざまなトラブルの原因となります。ここでは、重要事項の説明義務に違反した場合に生じ得るリスクを3つ解説します。
- 宅建士が指示処分等の対象となる
- 宅建業者が指示処分等の対象となる
- 損害賠償請求や契約解除がなされる
宅建士が指示や処分等の対象となる
重要事項の説明義務に違反すると、宅建士が指示処分の対象となるほか、1年以内の期間で、宅建士としてすべき事務を行うことが禁止される可能性があります(宅建業法68条1項、2項)。また、宅建士の情状が特に重いと判断された場合や、事務禁止命令に違反した場合には、宅建士の登録が消除されるおそれも生じます(同68条の2 第1項)
宅建業者が指示や処分等の対象となる
重要事項の説明義務に違反すると、宅建業者が指示処分の対象となるほか、1年以内の期間を定めた業務の全部または一部の停止命令の対象となる可能性があります(同65条1項、2項)。また、情状が特に重いと判断された場合や、業務停止命令に違反した場合には、免許が取り消されるおそれも生じます(同66条)。
損害賠償請求や契約解除がなされる
重要事項の説明義務に違反すると、その結果として「重要事項についてきちんと説明されていれば買わなかったはずの物件を購入した」など、買主に損害が生じる可能性があります。その場合には、損害を被った買主から損害賠償請求がなされたり、契約が解除されたりする可能性が生じます。
重要事項の説明義務に違反を疑われている場合やトラブルが生じてお困りの際などには、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。当事務所は不動産業に携わる企業のサポートに特化しており、状況に応じた最適な対応をアドバイスします。
重要事項として説明すべき事項
重要事項として説明すべき項目は、宅建業法(35条1項)に列挙されています。ただし、これは少なくとも説明すべき項目として挙げられているに過ぎず、ここに明示のない項目であっても、取引の判断に影響し得る事項であれば説明しなければなりません。「個々に記載のある項目さえ説明すれば、宅建業者は責任を免れる」ということではないため、誤解のないようご注意ください。
ここでは、重要事項として説明すべき主な項目を解説します。実際の不動産取引において重要事項として説明すべき項目の判断に迷っている際や、説明しなかった項目に関してトラブルに発展してお困りの際などには、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
- 物件に関する権利関係
- 物件に関する権利制限内容
- 物件の属性
- 取引条件(契約上の権利義務関係)
- 取引に当たって宅地建物取引業者が講じる措置
- (区分所有建物の場合)区分所有建物に関する一定の事項
物件に関する権利関係
重要事項として、取引対象の物件に関する権利関係を説明しなければなりません。具体的には、次の事項などがこれに該当します。
- 登記された権利の種類、内容等(所有権・地上権・賃借権・根抵当権など)
- 私道に関する負担(通行・掘削承諾の要否、持分、道路位置指定の有無など)
- (賃借の場合)定期借地権または高齢者居住法の終身建物賃貸借の適用を受ける場合
物件に関する権利制限内容
物件に権利の制限がある場合、重要事項としてその内容を説明しなければなりません。たとえば、次の項目などです。
- 都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要
- (賃借の場合)用途その他の利用に係る制限に関する事項
権利の制限などに関する規定は、たとえば都市計画法や建築基準法に基づくもののほか、農地法に基づくもの、生産緑地法に基づくもの、景観法に基づくもの、港湾法に基づくものなど非常に多岐にわたります。
しかし、権利制限の内容を1つでも漏らせば取引の相手方が想定した用途で不動産の利用ができなくなるなど、多大な影響が及びかねません。そのため、権利制限がある場合にはその内容を漏らさないよう、事前に慎重な調査をしたうえで説明する必要があります。
物件の属性
重要事項として、物件の属性を説明しなければなりません。たとえば、次の内容などです。
- 飲用水・電気・ガスの供給・排水施設の整備状況又はその見通し
- (未完成物件の場合)宅地造成又は建物建築の工事完了時における形状、構造等
- その宅地建物が造成宅地防災区域内か否か
- その宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か
- その宅地建物が津波災害警戒区域内か否か
- 石綿(アスベスト)使用調査結果の内容
- 耐震診断の内容
- (住宅性能評価を受けた新築住宅である場合)住宅性能評価書の交付の有無
- (賃借の場合)台所、浴室、便所など、その建物の設備の整備の状況
- (賃借の場合)管理の委託先
取引条件(契約上の権利義務関係)
重要事項としては不動産そのものに関する情報のほか、契約上の権利義務など取引条件についても説明する必要があります。たとえば、次の内容などです。
- 代金、交換差金以外に授受される金額及びその目的(手付金、諸費用など)
- 契約の解除に関する事項(手付解除、違約解除、ローン特約解除など)
- 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
- (賃借の場合)契約期間及び契約の更新に関する事項
- (賃借の場合)敷金等契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項
- (賃借の場合)契約終了時における建物の取壊しに関する事項
取引に当たって宅地建物取引業者が講じる措置
重要事項としては、取引に当たって宅建業者が講じる措置も説明しなければなりません。具体的には、次の内容などです。
- (宅建業者自らが売主の場合)手付金等の保全措置の概要
- 支払金又は預り金の保全措置の概要
- 金銭の貸借のあっせん
- 瑕疵担保責任の履行に関して講ずる措置の内容
(区分所有建物の場合)区分所有建物に関する一定の事項
取引の対象となる不動産がマンションなどの区分所有建物である場合、次の事項の説明も必要です。
- 敷地に関する権利の種類及び内容
- 共有部分に関する規約等の定め
- 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定め
- 専用使用権に関する規約等の定め
- 所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約等の定め
- 修繕積立金等に関する規約等の定め
- 通常の管理費用の額
- マンション管理の委託先
- 建物の維持修繕の実施状況の記録
このように、重要事項として説明すべき項目は非常に多岐にわたります。説明すべき項目に漏れがないか判断に迷う際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
重要事項の説明義務に違反しないための対策
重要事項の説明義務に違反しないためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?ここでは、主な対策を3つ解説します。
- 重要事項説明が必要となる場面を理解する
- 問題点を隠して取引しようとしない
- 説明すべき事項を理解する
重要事項説明が必要となる場面を理解する
1つ目は、重要事項説明が必要となる場面を正しく理解しておくことです。重要事項説明が必要となる場面を正しく理解しておくことで、重要事項説明を漏らすリスクを低減できます。
国土交通省が公表している資料「重要事項説明・書面交付制度の概要」では、重要事項説明が必要となるべき場面がわかりやすく図解されているので、これを参照して理解しておくとよいでしょう。

問題点を隠して取引しようとしない
2つ目は、問題点を隠して取引しようとしないことです。問題点を隠して不動産取引をしようとすると、重要事項の説明義務に違反する可能性が高くなるほか、買主から損害賠償請求がなされるなどのトラブルに発展するおそれが生じます。また、不動産会社の評判が低下するおそれもあるでしょう。
問題点を隠して買主を騙せば、その場の取引は成立するかもしれません。しかし、その「代償」は小さくないため、問題点は正しく開示し双方が真に納得したうえで取引を成立させるべきであるといえます。
説明すべき事項を理解する
3つ目は、説明すべき事項を正しく理解することです。
先ほど解説したように、重要事項説明において説明すべき項目は宅建業法で規定されています。また、宅建業法に列挙されている項目以外にも、取引の判断に影響を与え得る項目は説明しなければなりません。説明すべき事項を正しく理解することで、認識の誤りから説明義務に違反する事態を避けやすくなります。
「このような事項は説明すべきだろうか?」などと判断に迷う場合には、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。当事務所は不動産・建設法務に特化しており、気軽なご質問もいただきやすい顧問契約にも対応しています。
重要事項の説明義務違反に関するよくある質問
続いて、重要事項の説明義務に関して、よくある質問とその回答を2つ紹介します。
買主から「不要」と言われたら重要事項説明は省略できる?
重要事項説明について、買主側から「不要」であると言われた場合であっても、重要事項説明は原則として省略できません。重要事項説明を省略できるのは、一定の条件を満たした場合に限定されます。
宅建業法35条1項に明示のない事項は説明しなくてよい?
宅建業法35条1項はあくまでも例示であり、「これさえ説明すれば十分である」ということではありません。ここに列挙されている項目は「少なくとも」説明すべき事項であり、これら以外にも、不動産の購入などの判断に影響し得る重要な事項は説明する必要があります。
重要事項の説明義務への違反でお困りの際はアクセルサーブ法律事務所にご相談ください
重要事項の説明義務への違反でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所にご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- 不動産・建設業界に特化している
- トラブルを防ぐ「予防法務」に注力している
- 経営者目線での実践的なアドバイスを提供する
不動産・建設業界に特化している
アクセルサーブ法律事務所は、不動産・建設業界に特化しています。これらの業界における取引慣習や関連する業法、よくあるトラブルなどを熟知しているため、より的確なリーガルサポートが実現できます。
トラブルを防ぐ「予防法務」に注力している
万が一トラブルに発展すれば、最終的に解決に至ったとしても、その解決へ向けて相当のリソースを割く必要が生じるなど業務への影響は避けられません。そのため、アクセルサーブ法律事務所は「起こった紛争を解決する」だけではなく「紛争が起こらない環境」をお客様に提供することが使命であると考えており、紛争を防ぐ「予防法務」に力を入れています。
経営者目線での実践的なアドバイスを提供する
法的に正しいことと経営として望ましいことは必ずしも一致せず、不動産事業を営む中でこれを実感している経営者様も少なくないでしょう。とはいえ、法的なルールを軽視して大きな問題に発展すれば、経営の根幹を揺るがす事態となりかねません。
そこで、アクセルサーブ法律事務所は法律的知見のみならず、建設・不動産のビジネス的理解も踏まえた経営者目線でのトラブル解決に力を入れています。
まとめ
重要事項の説明義務の概要や主に説明すべき事項を紹介するとともに、重要事項の説明義務に違反した場合に生じるリスクや重要事項の説明義務に違反しないための対策などを解説しました。
宅建業者が不動産の売買や賃借に携わる際は、宅建士に、買主や借主に対して一定事項を説明させなければなりません。重要事項の説明義務に違反すれば行政指導や業務停止命令の対象となり得るほか、これにより損害を被った買主等から損害賠償請求がなされる可能性もあります。
宅建業者が重要事項を漏れなく説明することは買主や借主を保護するのみならず、自らの身を守ることにもつながります。重要事項の説明義務に違反しないよう、説明すべき場面や説明すべき内容などについて、正しく理解しておきましょう。
アクセルサーブ法律事務所は不動産・建設業界へのサポートに力を入れており、トラブルを防ぐ「予防法務」も得意としています。重要事項の説明義務違反などを避けるため、説明すべき事項などについて相談できる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。


