【2025】施工不良の時効(期間制限)は?責任追及がされ得る期間を弁護士がわかりやすく解説

引き渡した物件に施工不良がある場合、これについて施主から修補請求や代金減額請求、損害賠償請求などの責任追及がなされる可能性があります。
では、施工不良がある場合、具体的にどのような請求がなされる可能性があるのでしょうか?また、施工不良の責任追及に、時効(期間制限)はあるのでしょうか?今回は、施工不良の概要や施工不良によって生じる主な責任、施工不良による具体的な請求内容などを踏まえた上で、施工不良の時効(期間制限)についてくわしく解説します。
なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産業界の法務に特化しており、施工不良による責任追及についても豊富なサポート実績を有しています。施工不良を原因とした責任追及がなされてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお早めにご相談ください。
施工不良とは?
一口に「施工不良」といっても、これには主に次の3つのパターンがあります。
- 契約で定めた仕様に適合していない
- 法令に違反している
- 一定の施工基準に達していない
ここでは、それぞれの概要を解説します。
契約で定めた仕様に適合していない
引き渡した物件に契約上の仕様に適合しない部分がある場合、これは施工不良にあたります。たとえば、次の場合などがこれに該当すると考えられます。
- 契約で定めた床材とは異なる、質の低い床材が施工されている
- 契約で定めた仕様では4つ設置されるはずの書棚が、3つしか設置されていない
- 外壁が、契約で定めたのとは異なる色で塗装されている
この類型である場合、施工不良にあたるか否かは「施工の結果が、契約内容に適合しているか否か」によって判断されます。
法令に違反している
引き渡した物件が法令に違反している場合、これは施工不良にあたります。たとえば、建物が建蔽率をオーバーして建てられている場合や、耐震基準・耐火基準を満たしていない場合などがこれに該当します。
この類型において施工不良にあたるか否かは法令に適合するか否により判断され、原則として契約書の規定は重視されません。なぜなら、法令に適合する建物を建てることはプロである建設会社側が負うべき当然の責務であり、契約に明記されていなくても守らなければならないことであるためです。
一定の施工基準に達していない
一定の施工基準に達しておらず、社会通念上許容できないレベルのものである場合、施工不良にあたります。たとえば、建物の屋根から大量の雨漏りがする場合や、新築住宅の壁紙が皺(しわ)だらけになってしまっている場合などがこれに該当します。
この類型においても、施工不良にあたるか否かの判断において契約書の規定は重視されません。なぜなら、最低限の施工基準を下回るような施工をしている場合、それは契約書に明記がなくても、建設会社側に当然に求められる施工基準に達していないと評価されるためです。
ただし、この施工基準の判断は状況によって変動し得ます。たとえば、新築住宅のリビングのクロスに大きな皺が入っていれば施工不良として責任を追及される可能性が高い一方で、安価での施工を依頼された従業員用食堂のクロスに多少の皺が入っていても、これは許容範囲とされる可能性もあるでしょう。
とはいえ、施主と認識の齟齬があれば責任を追及される可能性があるため、たとえば「安価に施工をする代わりに建物の安全性に影響しない部分については施工不良の責任を追及しない」施主との間でと取り決めたのであれば、その旨を契約書に明記しておくことをおすすめします。
施工不良によって追及され得る主な責任
施工不良について追及される責任には、主に、民法上の契約不適合責任と「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、「品確法」といいます)」上の瑕疵担保責任があります。ここでは、それぞれの概要を解説します。
民法上の契約不適合責任
民法上の契約不適合責任とは、引き渡した目的物が種類または品質に関して契約内容に適合しない場合に追及され得る責任です。
なお、契約書に明記がなかったとしても、引き渡した物件が法令の基準に適合していない場合や一定の施工基準に達していない場合にも契約不適合責任を追及される可能性があります。あえて契約書に明記せずとも、これらは契約の「前提」として当然に期待されている事項であるためです。
具体的には、追完(修補)請求や代金減額請求、損害賠償請求、契約解除が求められる可能性があります。それぞれの請求内容については、後ほど改めて解説します。
品確法上の瑕疵担保責任
品確法の瑕疵担保責任とは、新築住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分について一定の瑕疵(種類または品質に関して契約の内容に適合しない状態)がある場合に追及され得る責任です。品確法では、新築住宅の主要構造部などの一定の施工不良について、責任を負う期間が通常よりも長く設定されています。
施工不良によって請求され得る主な内容
施工不良がある場合、具体的にどのような責任を追及される可能性があるのでしょうか?ここでは、請求され得る主な内容を4つ解説します。
- 追完
- 代金減額
- 損害賠償
- 契約解除
なお、施工不良が原因でこれらの請求がなされてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。状況に応じて、最適な対応方法を提案します。
追完
追完請求とは、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を求めるものです(民法559条、562条)。
たとえば、設置された本棚の数が契約で定めた数に不足している場合に追加での設置を求めることや、クロスに大きな皺がある場合にクロスの貼り直しを求めること、契約とは異なる色で外壁が塗装されている場合に契約通りの色に塗装しなおすよう求めることなどがこれに該当します。
この追完請求が、施工不良への責任追及の基本形であるといえます。
代金減額
代金減額請求とは、不適合の程度に応じて代金の減額を求めるものです(同559条、563条1項)。原則として、追完請求をしてもこれに建設会社が応じない場合や、追完請求が事実上困難である場合などに代金減額請求がなされます。
たとえば、契約で定めたものよりも品質の劣る床材が使用されているもののこれを施工しなおすことが構造上困難である場合に、代金の減額によって対応する場合などがこれに該当します。
損害賠償
損害賠償請求とは、相手方の不法行為によって生じた損害の償いを、金銭の支払いによって求めるものです(同559条、564条、415条)。
追完請求と損害賠償請求は両方を行うこともでき、追完をしたからといって損害賠償責任を免れるわけではありません。たとえば、施工不良により屋根から雨漏りがする場合、この補修に加えて、雨漏りによって使えなくなった家具や家電、衣服などを買いなおすための損害賠償請求がされる可能性があるということです。
契約解除
契約解除とは、相手方が契約に沿った債務の履行をしない場合に、契約を「なかったこと」にすることです(同559条、564条、541条、542条)。
施工不良が軽微ではなく、催告をされても債務の履行(契約に適合した建物の引き渡し)をしない場合や債務の履行が不能である場合などには、契約が解除される可能性があります。
債務不履行による契約解除は非常に重大な結果を招くため、これがなされる場面は限定されています。ただし、たとえば建物の基礎部分に建物の安全性を揺るがす重大な施工不良があり修補も不可能である場合などには、契約が解除される可能性があります。
施工不良の時効(期間制限)は?
施工不良の責任は、いつまで追及される可能性があるのでしょうか?ここでは、施工不良の時効(期間制限)を、整理して解説します。
通知の期間制限:施主が不適合を知ってから1年以内の通知が必要
施工不良を理由として責任を追及しようとする場合、施主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人(建設会社)に通知しなければなりません(同637条)。
ただし、請負人である建設会社が、引き渡しの時点でその施工不良を知っていた場合や、知らなかったことに重過失があった(少し注意を払えば気付けたはずであるのに、気付けなかった)場合には、1年の期間制限は適用されないこととなります(同2項)。
原則:主観的起算点から5年、客観的起算点から10年
先ほど紹介した「1年」というのは、「通知」までの期間制限です。つまり、具体的な請求を伴わず、単に「このような施工不良があるようだ」と建設会社に通知すべき期限であるということです。
これに加えて、具体的な請求(追完請求や、損害賠償請求)にも時効があります。請求の時効は、原則として次のうちいずれか早く到来するときまでです(同166条1項)。
- 施主が、権利を行使することができること(施工不良があること)を知った時から5年
- 権利を行使できる時(通常は、引渡時)から10年
施主が施工不良を知ったなどの施主の「主観」を建設会社が把握・立証するのは容易ではないため、「引き渡しから10年間は施工不良の責任を追及される可能性がある」と心づもりをしておくとよいでしょう。
品確法が適用される場合:引き渡しから10年
品確法の適用がある住宅の新築工事である場合、一定の不適合については、引き渡しの時から10年間の瑕疵担保責任を負います。民法上の契約不適合責任とは異なり、「知ってから1年以内に通知する」などの通知期間の制限はありません。
この規定が適用されるのは、新築住宅の次の部分の瑕疵のうち、構造耐力または雨水の浸入に影響し得るものです(品確法94条1項、品確法施行令5条)。
- 住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい・方づえ・火打材・これらに類するもの)、床版、屋根版、横架材(はり・けた・これらに類するもの)で、その住宅の自重・積載荷重・積雪・風圧・土圧・水圧・地震その他の震動・衝撃を支えるもの
- 住宅の屋根もしくは外壁またはこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具
- 雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、その住宅の屋根もしくは外壁の内部または屋内にある部分
契約に異なる定めがある場合:原則として契約の定めに従うが、施主に不利益な条項は無効となる可能性
ここまでで解説した時効(期間制限)は、あくまでも法律で定められた原則です。法律の定めは契約によって変更できるため、当事者間が契約でこれらとは異なる定めをする場合には、原則としてその当事者間の規定が優先されます。
たとえば、通知の期間制限は法律上「施主がその不適合を知った時から1年」であるものの、契約書で「施主がその不適合を知った時から2年」と定めたのであれば2年の期間制限が適用されるということです。
ただし、契約でさえ定めれば、どのような期間制限であっても有効になるわけではありません。消費者契約法の規定により消費者の利益を不当に害することとなる条項は無効になるほか、品確法にも、瑕疵担保責任について注文者(施主)に不利なものは無効とする旨が定められているためです。
そのため、実際に契約書に定めを置くことで施工不良の時効(期間制限)を変更しようとする際は、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所へご相談ください。
施工不良の時効(期間制限)に関するよくある質問
施工不良の時効(期間制限)に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
引き渡しから10年経ったら、絶対に責任を問われない?
一般的な施工不良の時効(期間制限)である「引き渡しから10年」が過ぎたからといって、以後は絶対に責任を問われないとは限りません。なぜなら、別の法律構成で責任を追及された場合、「引き渡しから10年」という期間制限が必ずしもあてはまらないからです。
例えば、施工不良について不法行為責任が成立する場合、その時効(期間制限)は、
「損害及び加害者を知った時から3年」又は「不法行為の時から20年」
です(民法724条)。
引き渡しから10年以上経過してから、注文者(施主)が施工不良に気づき、それが不法行為である、ということになれば、不法行為責任は追及されうる、ということになります。
そのため、施工不良の一般的な期間制限である「引き渡しから10年」を過ぎてから責任を追及された場合であっても、「法的な根拠がない」と決めつけるのではなく、まずは弁護士に相談することをおすすめします。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所へご相談ください。
施工不良の責任を負うのは誰?
施工不良による責任を負うのは、原則として施工不良を起こした企業(請負人)です。
ただし、建設業では一部の施工を下請企業が担うことも多く、その場合に下請企業が施工不良を起こす場合もあるでしょう。その場合、元請企業は下請企業のミスであることを理由に責任を免れることはできず、施主に対して施工不良の責任を負うのは原則として元請企業となります。
なお、下請企業の施工不良により元請企業が施主に対して法的責任を負った場合、元請企業から下請企業に対して損害賠償請求などができる可能性もあります。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所へご相談ください。
施工不良の時効について相談できる弁護士をお探しの際はアクセルサーブ法律事務所までご連絡ください
施工不良の時効について相談できる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までご連絡ください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- 建設・不動産業界に特化している
- トラブル予防に注力している
- 経営者目線での実践的なアドバイスを得意としている
建設・不動産業界に特化している
アクセルサーブ法律事務所は、建設・不動産法務に特化しています。
建設・不動産業界は「尊敬」や「義理・人情」があり技術力も高い素晴らしい業界である一方で、まだまだ法律が軽視されやすくトラブルも散見されると感じています。そこで、当事務所がサポートをすることで、トラブルを防ぎ、業界に従事する方々にもっともっと光っていただきたいと考えています。
これらの業界に特化しているため、業界事情や取引慣習、生じやすいトラブルなどを熟知したうえで、より的確なリーガルサポートが実現できます。
トラブル予防に注力している
アクセルサーブ法律事務所の最終的な目標は、「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことにあります。この目標を達成するため、「起こった紛争を解決する」だけではなく、「紛争が起こらない環境」をお客様に提供する「予防法務」に力を入れています。
経営者目線での実践的なアドバイスを得意としている
法的に正しいことと、経営として望ましいことは一致しないことも多いでしょう。とはいえ、法律を軽視していては、事業継続や事業の拡大をする中で、足を掬われることにもなりかねません。
そこで、アクセルサーブ法律事務所は、法律的知見もさることながら、建設・不動産のビジネス的理解も踏まえた経営者目線でのより実践的なサポートを提供しています。
まとめ
施工不良の概要や施工不良によって追及され得る責任の内容、施工不良の時効(期間制限)などについて解説しました。
施工不良がある場合、施主から民法上の契約不適合責任や品確法上の瑕疵担保責任を問われる可能性があります。具体的には、追完請求や代金減額請求、損害賠償請求、契約解除などがなされる可能性があるでしょう。
施工不良の時効(期間制限)は、原則として「施工不良を知ってから5年、引き渡しから10年」であるものの、施主が不適合を知ってから1年以内にその旨を通知する必要があります。ただし、品確法が適用される一定の施工不良である場合には通知期間の制限はなく、引き渡しから10年間は責任追及が可能です。
このように、施工不良の時効は施工不良の内容などによって異なっており、時効期間内であるか否か判断に迷うことも多いでしょう。そのため、施工不良について施主から責任追及がなされたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産法務に特化しており、これらの業界に従事する方々について豊富なサポート実績を有しています。施工不良について責任追及がなされてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。

