【2025】工事請負契約でよくあるトラブルは?対処法・予防策を弁護士がわかりやすく解説

工事請負契約ではやり取りされる金額も大きく、契約書の不備などからトラブルに発展するケースも散見されます。トラブルが生じれば対応に時間や労力を取られ、本業に支障が生じるおそれもあるでしょう。
では、工事請負契約に関するよくあるトラブルには、どのようなものがあるのでしょうか?また、工事請負契約にまつわるトラブルを予防するには、どのような対策を講じれば良いのでしょうか?今回は、建設業者様の視点に立って工事請負契約に関するトラブル例を紹介するとともに、それぞれのトラブルの対処法や予防策について、弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産業界に特化しており、工事請負契約にまつわるトラブルへの対応実績が豊富です。工事請負契約に関してトラブルが生じてお困りの際や、トラブルを避ける対策についての相談をご希望の際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
工事請負契約のよくあるトラブル1:工事代金の未払い
工事請負契約に関するよくあるトラブルの1つ目は、工事代金の未払いに関するトラブルです。ここでは、このトラブルの概要と対処法、予防策を解説します。
トラブルの概要
工事代金の未払いに関するトラブルとは、本来の支払い時期までに工事代金を支払ってくれないトラブルです。単純な遅延である場合もある一方で、「工事に不備がある」「施主がまだ費用を払ってくれないので、まだ下請企業には払えない」などもっともらしい理由をつけて支払いを遅延させる場合もあります。
このトラブルへの対処法
相手方に請求しても一向に工事代金を支払ってくれない場合は、弁護士へご相談ください。弁護士へ相談することで、相手が支払いを拒絶している理由が法律上正当なものであるか否かの判断がしやすくなります。
その結果、相手方の未払いに正当な理由があると判断できれば、まずはこれに真摯に対応します。たとえば、実際に自社の施工に不備があるのであれば、これを修補するなどです。
一方で、相手方の未払いに正当な理由がない場合には、今後の関係性なども踏まえて具体的な対応を検討します。厳しい対応をとって構わない場合であれば、まずは弁護士名義で内容証明郵便を送ることから始めることが一般的です。内容証明郵便は強い督促の意思表示にもなりますし、訴訟等の予告についても記載することが多いため、相手方へのプレッシャーともなるでしょう。
これによっても未払いが解消されなければ、調停や訴訟などを通じて解決をはかります。
トラブルの予防策
このトラブルの予防策は、契約書をきちんと交わすことです。工事請負契約では法令(建設業法19条)の規定に反して契約書が交わされないケースも散見されます。しかし、きちんと契約書を交わし、支払い期日を定めておくことで、支払いの遅延が生じた際にスムーズな対応が実現しやすくなります。
また、工事の仕様などを明確にしたうえで請負の内容を記すことで、「工事に不備がある」という相手方の主張が正当であるか否かの判断材料となります。原則としてこの仕様を満たすことこそが請負人側の義務であり、工事代金の支払い条件ともなるためです(ただし、明らかにクロスに皺が入っているなど建設業者として満たすべき最低水準をクリアできていない場合などには、一見仕様に合致していてもやり直しを求められる可能性があります)。
適切な工事契約書を交わすことは、トラブル発生時に自社の身を守ることにつながります。契約書の作成でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
工事請負契約のよくあるトラブル2:追加工事ややり直しの要求
工事請負契約のよくあるトラブルの2つ目は、追加工事ややり直しにまつわるトラブルです。このトラブルについて、概要や対処法、予防策を解説します。
トラブルの概要
追加工事ややり直しにまつわるトラブルとは、不備がないにもかかわらず追加工事や工事のやり直しを無償で要求されたり、有償であると認識していた追加工事について報酬が支払われなかったりするトラブルです。このトラブルは、当事者間の認識の齟齬によって生じることが少なくありません。
このトラブルへの対処法
追加工事ややり直しに関してトラブルが生じたら、建築業界に強い弁護士に早期にご相談ください。弁護士へ相談することでトラブルの内容を紐解き、そのケースにおける具体的な対処法を検討しやすくなるためです。
そのうえで、相手方の要求が不当であると判断できた場合には、相手方と交渉します。必要に応じて、弁護士が交渉の場に同席したり弁護士に交渉を代行してもらったりすることも可能です。
なお、無償での追加工事ややり直しを求めているのが施主ではなく元請企業である場合は、「下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」といいます)」が適用される場合があり、これを盾に交渉することも検討できます。下請法とは、親事業者の下請事業者に対する取引を公正化し、下請事業者の利益を保護することを目的とする法律です(下請法1条)。
「下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に給付をやり直させること」は下請法で禁止されており、不備がない場合の無償でのやり直しや追加工事の要求はこの規定に反する可能性が高いでしょう(同4条2項4号)。これに反した場合、公正取引委員会による勧告の対象となります(同7条3項)。
追加工事ややり直しに関するトラブルでお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
トラブルの予防策
このトラブルの予防策としては、工事を請け負う際に契約書を取り交わし、仕様を明確にしておくことが有効です。先ほど解説した未払いによるトラブルと同じく、仕様に合致しているか否かが無償でのやり直しや追加工事を求められるか否かの1つの基準となるためです。
また、工事の途中で追加工事が生じた際は、その工事に取り掛かる前に追加分の見積もりを提示し、相手方と契約書を交わしましょう。契約書の取り付けまでは難しい場合であっても、注文書と注文請書のやり取りをしたり、少なくとも見積書は提示したりして、記録を残すべきです。
このような対応をすることで相手方から「追加工事に追加費用が発生するとは思わなかった」などと主張される可能性を回避できるほか、追加工事の報酬額について事後的に交渉する必要もなくなります。
工事請負契約のよくあるトラブル3:契約不適合責任の追及
工事請負契約にまつわるよくあるトラブルの3つ目は、契約不適合責任の追及に関するトラブルです。このトラブルについて、概要と対処法、予防策を解説します。
トラブルの概要
契約不適合責任とは、工事請負契約によって引き渡した建物が種類、品質、数量について契約内容に適合していない場合に追及され得る責任です(民法562条、559条)。具体的には、契約に適合していない部分の追完(修補)や代金減額が求められる可能性があります。
また、これにより相手方に損害が生じれば損害賠償請求がされることもあるほか、一定の場合には契約が解除されることもあります。
確かに契約不適合があり自社の施工に問題があれば、相手方の請求が正当なものである限り、これに真摯に対処すべきでしょう。一方で、契約不適合であるか否かについて認識の違いが生じ、トラブルとなることもあります。
このトラブルへの対処法
自社では問題がないと考えている施工について、施主などから契約不適合責任を追及された場合や、相手方の請求が過大であると感じる場合には、早期に弁護士にご相談ください。弁護士に相談することで、契約不適合であるか否かや、相手の請求が適正であるか否かなどの判断がしやすくなるためです。
たとえば、契約不適合責任の追及として代金減額請求ができるのは、履行の追完が不能であるなど一定の場合を除き、相当の期間を定めて履行の追完(修補)の催告をしたもののその期間内に履行の追完がない場合に限られます(民法563条、559条)。そうであるにもかかわらず、補修ができる段階でいきなり代金減額請求をすることもあるでしょう。この場合には、修補で対応する旨を主張するなどして解決策を探ることとなります。
また、その不適合が施主が提供した材料の性質や施主の与えた指図によって生じたものである場合、施主は契約不適合責任の追及ができません(同636条)。
契約不適合責任については契約書で法令とは異なる定めがされていることもあるため、施工の実態や契約書、相手方の主張などを精査したうえで、具体的な対応を検討することとなります。
トラブルの予防策
契約不適合責任に関するトラブルを避ける対策としては、契約書を交わして仕様を明確にしておくことが検討できます。契約不適合責任は「契約に適合しない」責任を追及するものであり、契約書によって使用を明確にすることで「何が契約不適合か」の判断がしやすくなるためです。
また、施主が一般消費者ではなく法人などの場合には、契約の定めによって契約不適合責任を免除したり軽減したりすることも検討できます。工事請負契約でのトラブル回避につながる契約書の作成をご希望の際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
工事請負契約のトラブル予防で弁護士に相談するメリット
工事請負契約のトラブル予防について弁護士にサポートを依頼することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、主なメリットを3つ解説します。
- 起きやすいトラブルから「逆算」をした契約条項の検討が可能となる
- 法令の基準に沿った契約書の整備が実現できる
- トラブル発生時にスムーズな対応が実現できる
起きやすいトラブルから「逆算」をした契約条項の検討が可能となる
弁護士は紛争解決のプロフェッショナルであり、日々、トラブル解決の対応を担っています。そのため、工事請負契約によって生じやすいトラブルを熟知しているほか、トラブル解決に際して「このような条項が契約書に入っていれば、解決がもう少しスムーズだったのに」と感じることも少なくありません。
そのため、弁護士にサポートを依頼することで、工事請負契約で生じやすいトラブルから「逆算」をして、トラブル発生時にスムーズかつ有利な解決につながる条項を設けやすくなります。
法令の基準に沿った契約書の整備が実現できる
工事請負契約における契約書の作成は、建設業法上の義務です。契約書で設けるべき条項も、法令で定められています。
契約書で定めさえすれば、どのような取り決めでも有効にできるわけではありません。たとえば、施主が一般消費者である場合において、「契約不適合責任のすべてを免除する」などの規定は無効です。
弁護士に依頼することで、法律上の要請を満たす的確な契約書が作成できます。
トラブル発生時にスムーズな対応が実現できる
弁護士に契約書の作成サポートを依頼することで、トラブル発生時にスムーズな対応がしやすくなります。先ほど解説したように、トラブルから「逆算」をした条項を設けることが可能となるためです。
また、契約書の作成段階から弁護士の関与を受けることで弁護士が契約の背景などを理解できるため、トラブル発生時の相談もスムーズとなります。
工事請負契約のトラブルに関するよくある質問
続いて、工事請負契約のトラブルに関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
工事請負契約のトラブルはどの弁護士に相談しても同じ?
工事請負契約に関するトラブルは、建築業界に強い弁護士にご相談ください。弁護士にはそれぞれ注力する分野があることが多く、その分野に注力している弁護士に依頼することで、業界実態や関連する事例・裁判例・判例を踏まえたより的確なリーガルサポートが受けやすくなるためです。
工事請負契約の代金を払ってもらえない場合強制的に払わせることは可能?
工事請負契約に記載の代金を支払ってもらえない場合には、強制執行などにより強制的に代金を回収できる可能性があります。
ただし、工事が完成しているか否かなどに疑義が生じている場合(つまり、工事代金を請求できる段階であるか否かが明確でない場合)には、代金回収に先立ってその問題を解決する必要があります。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
工事請負契約のトラブル解決やトラブル予防はアクセルサーブ法律事務所にお任せください
工事請負契約のトラブル解決やトラブル予防について相談できる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお問い合わせください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- 建築・不動産業界のサポート実績が豊富である
- 予防法務に注力している
- 経営者目線での実践的なアドバイスを得意としている
建築・不動産業界のサポート実績が豊富である
アクセルサーブ法律事務所は建築・不動産業界に特化しており、これらの業界に携わる経営者様への豊富なサポート実績を有しています。そのため、業界の特性や取引慣例などを踏まえたより的確なリーガルサポートが実現できます。
予防法務に注力している
アクセルサーブ法律事務所は「助け合い、称え合い、共に成長し喜び合うのが当たり前の世界」こそが理想であると考えており、トラブルが発生してからの対応のみならず、予防法務にも注力しています。
適切な対策を講じたり的確な契約書を作成したりすることで防げるトラブルは少なくないため、まずはお気軽にご相談ください。
経営者目線での実践的なアドバイスを得意としている
弁護士へ相談しても、そのアドバイスが業界実態と乖離していれば、実現するのは困難でしょう。当事務所は法的なルールは守りつつ、その先の「事業のさらなる発展・目標達成」を重視した実践的なアドバイスを提供します。
まとめ
工事請負契約にまつわるよくあるトラブルを紹介するとともに、トラブルの対処法や予防策を解説しました。
工事請負契約にまつわるトラブルとしては、工事代金の未払いや工事のやり直し、契約不適合責任の追及などが挙げられます。これらのトラブルの中には、契約書の整備や条項の工夫によって防げるものも少なくありません。
弁護士へ相談をして工事請負契約書を整備することで法令に適合した契約書の作成が可能となるほか、トラブルの抑止にもつながるでしょう。また、万が一トラブルが発生した際にも、自社に有利かつスムーズな解決がはかりやすくなります。
アクセルサーブ法律事務所は建築・不動産業界に特化しており、工事請負契約に関するトラブル対応・トラブル予防について豊富な実績を有しています。工事請負契約に関するトラブルについて相談できる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。


