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不動産の「契約不適合責任」とは?不動産会社向けに弁護士がわかりやすく解説

不動産の「契約不適合責任」とは?不動産会社向けに弁護士がわかりやすく解説

不動産事業を営むにあたっては、契約不適合責任への理解が不可欠です。契約不適合責任について正しく理解していなければ、思わぬ責任を追及されてトラブルに発展するかもしれません。

では、不動産の売買において契約不適合があった際、どのような請求がなされる可能性があるのでしょうか?また、契約不適合責任の免責特約は、不動産取引において有効なのでしょうか?

今回は、売主が不動産事業者(宅建業者)である場合を前提に、追及され得る契約不適合責任の内容や免責特約の有効性、契約不適合責任について不動産事業者が弁護士にサポートを受けるメリットなどについてくわしく解説します。

なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産業界に特化しており、不動産事業者様へのサポート実績を豊富に有しています。契約不適合責任について日頃から相談できる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。当事務所は、トラブルを防止するための予防法務に特に力を入れています。

不動産取引で注意すべき契約不適合責任とは?

契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類、品質、数量に関して契約の内容に適合しないものである場合に、買主に対して売主が負うべき責任です。追及され得る具体的な内容は後ほど解説するものの、たとえば追完(修補)や代金減額などが求められる可能性があります。

不動産取引における契約不適合

不動産取引において契約不適合に該当するのは、次の場合などです。

  • 住宅用として売買された建物であるにもかかわらず、シロアリが巣食っている・雨漏りがするなどの事情でそのままでは住宅として使用できない
  • 契約書では土地面積が200㎡と記載されており、これが正しい前提で売買契約をしたが、実際には180㎡しかなかった
  • 建築基準法等に定められている耐震基準を満たしていると説明を受けて売買契約を締結したが、実際には耐震基準を満たしていなかった

一方で、「築古の古民家を買主が購入後に建物を大幅にリフォームする前提であるため、建物に雨漏りがあるが、双方が納得したうえでそのまま売買する」場合などもあるでしょう。この場合において、双方が雨漏りする箇所があることを前提として売買契約を締結する場合には、売主はこの点について契約不適合を追及されません。なぜなら、この場合には「雨漏りする状態の建物」がそもそも契約に適合しているのであり、契約不適合ではないためです。

瑕疵担保責任との違い

契約不適合責任は、2020年の民法改正前の「瑕疵(かし)担保責任」が改められたものです。

瑕疵担保責任と契約不適合責任の大きな違いの一つが、責任の対象範囲にあります。瑕疵担保責任が適用されるのは、「隠れた瑕疵(品質や性能の欠陥)」がある場合です。瑕疵担保責任を追及するにはその瑕疵が隠れており、買主がその瑕疵を知り得なかったことが求められます。

一方で、契約不適合責任が適用されるのは、「契約との不適合」がある場合です。契約不適合責任の追及にあたっては、その不適合が隠れている必要はありません。

少し専門的な内容となりますが、改正前の民法においては、「売主は、契約で定められたその『特定のもの』を引き渡せばよい」との考え方がとられていました。この場合、「特定のもの」がいくら傷ついていても、ボロボロであっても、引渡しさえすれば良い、という考え方になりそうですが、これでは買主がかわいそうです。そこで、法律で特別な売主の責任を作り、一定の場合に買主が損害賠償や解除をできるようにしよう、ということで定められていたルールが「瑕疵担保責任」でした。

ですが、この「瑕疵担保責任」については、「債務不履行責任として捉えるほうがよいのではないか」という考え方が多く唱えられていました。「瑕疵担保責任」では、救済手段として、損害賠償と解除しか認められていませんでしたが、実際の取引においては、損害賠償や解除だけでなく、修繕など他の救済手段が事実上取られていました。

このような背景から、2020年4月1日に施行された改正民法により、従来の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」へと改められ、傷ついたものやボロボロのものが引き渡された場合は、「契約不適合」にあたり、債務不履行責任を負う、という形に改められました。

契約不適合責任では「契約に適合しているか否か」が責任を追及できるか否かの分かれ目となるため、契約書への定めがより重要となっています。同じ「雨漏りがする建物」であっても、その旨を契約書に記載していなければ契約不適合責任の追及原因となる一方で、はじめから契約書に定めておけば責任追及を免れるということです。

契約不適合責任の観点から最適化された契約書の作成をご希望の不動産事業者様は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。

不動産の売主が契約不適合責任で追及されうる内容

不動産事業者が売主となって売却する不動産に契約不適合があった場合、どのような請求がなされるのでしょうか?ここでは、契約不適合責任によってなされ得る主な請求について解説します。

  • 追完請求
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約解除

追完請求

追完請求とは、目的物の修補や代替物の引渡し、不足分の引渡しによる履行の追完を請求するものです(民法562条)。不動産の売買では代替物の引渡しや不足分の引渡しは想定しづらいため、原則として修補の請求になるでしょう。

契約不適合の内容が「雨漏り」であれば、雨漏りしない状態へと補修するよう請求することなどがこれに該当します。

代金減額請求

代金減額請求とは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求するものです(同563条)。たとえば、土地が200㎡である前提で売買契約をしたにもかかわらず、実際には180㎡しかなかった場合において、不足する20㎡分に相当する代金の減額を求めるものなどがこれに該当します。

代金減額請求ができるのは、原則として、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をしたもののその期間内に履行の追完がない場合に限られます。ただし、次の場合には催告をせず、直ちに代金減額を請求できます。

  • 履行の追完が不能であるとき
  • 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
  • 契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき(不動産売買では想定しづらい。典型例は、誕生日ケーキの売買契約で、誕生日に間に合わなかった場合など)
  • その他、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

先ほどの例で、土地面積の不足があったとき、周囲に空いている土地がないとすると、追完をすることは現実的ではないでしょう。そのため、このような場合にははじめから代金減額請求をすることが考えられます。

損害賠償請求

損害賠償請求とは、相手方の債務不履行(契約どおりの履行をしないこと)などが原因で生じた損害の賠償を求めるものです(同415条)。たとえば、契約不適合である雨漏りのする建物の引渡しを受けた結果、建物内に運び込んだ家具や書籍、衣服などが汚損して使用できなくなった場合に、その賠償を求めるものなどがこれに該当します。

なお、追完請求などをしたからといって、損害賠償請求ができなくなるわけではありません(同564条)。雨漏りを直したからといって、直す前に雨漏りによって汚損された家具などの問題が解消されるわけではないためです。

契約解除

契約解除とは、相手方の債務不履行を理由として契約を解除するものです。契約解除は重大な影響を及ぼすため、不履行の程度が社会通念に照らして軽微である場合や、不履行の原因が買主側にある場合には解除ができません(同541条、543条)。

また、原則として、先に債務の履行を催告する必要があります。ただし、次の場合には催告をすることなく解除ができます(同542条)。これらの場合には、それ以上催告をしても無意味であるためです。

  • 債務の全部の履行が不能であるとき
  • 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
  • 債務の一部の履行が不能である場合または債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき
  • 契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき(不動産売買では想定しづらい)
  • その他、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき

たとえば、買主が住居として使用する前提で、シロアリについて何ら契約書の記載のない状態で建物の売買をしたものの、その建物は実はその全体がシロアリに巣食われていてすでに相当程度強度が落ちている場合、そのままそこに住み続けることは困難です。このような場合には、契約解除の対象となります。

契約不適合責任の免除特約は不動産取引において有効?

不動産事業者の側としては、契約不適合責任の免除を受けたいと考えることも多いでしょう。そこで、契約書に契約不適合責任の免責条項を設けることを検討することとなります。

しかし、契約不適合責任の免責条項は常に有効になるわけではありません。ここでは、ケースごとに、契約不適合責任の免除特約の有効性を解説します。

なお、契約書作成においてお悩みの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。ご相談いただくことで、状況に応じた的確な契約書の作成が実現できます。

消費者契約に該当する場合

売買契約の相手方が一般消費者である場合、不動産事業者の契約不適合責任の全部を免除する特約を設けることはできません。消費者契約法の規定により、このような条項は無効となります(消費者契約法8条1項)。

また、一般消費者である相手方の解除権を放棄させたり、不動産事業者側に解除権の有無を決定する権限を与えるような条項も無効です(同8条の2)

宅建業者が自ら売主となる場合

宅建業者が売主である場合、民法や消費者契約法の規定のほかに宅建業法も適用されます。

民法と消費者契約法の規定だけが適用される場合、買主が一般消費者ではなく法人などの事業者である場合には、契約不適合責任の免責特約は有効です。しかし、売主が宅建業者である場合には、契約不適合責任の免除特約を設けることはできません。

このような買主にとって不利となる特約は、宅建業法に違反して無効となります(宅建業法40条)。宅建業者は、通常の事業者よりも不動産に関する知識がもう一段高いプロであるためです。

品確法の適用がある場合

新築住宅は、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の適用対象となります。品確法の適用がある建物の売買契約である場合、契約不適合責任の免除など、買主にとって不利となる特約を設けることはできません(品確法95条2項)。

売主が契約不適合を知りながらこれを告げない場合

売主が不動産事業者である場合には直接関係はないものの、先ほど解説したように、(宅建業者ではない)事業者が他の事業者と締結する売買契約では、双方の合意により売主の契約不適合責任を免除できます。

ただし、この場合であっても、売主が契約不適合を知りながら告げなかった事実については免責を受けることができません(民法572条)。

不動産取引で契約不適合責任を追及され得る期間

不動産取引で契約不適合責任を追及され得る期間は、原則として、それぞれ次のとおりです。

不適合の内容期間
種類・品質の不適合買主が権利を行使できるとき(引渡時)から10年。買主が契約不適合を知ってから5年(同166条)。 ただし、買主が契約不適合を知ってから1年以内に売主に通知することが条件(同566条)
数量・権利の不適合買主が権利を行使できるとき(引渡時)から10年。買主が契約不適合を知ってから5年(同166条)
品確法の適用がある場合引渡しから10年(品確法95条)

ただし、契約の定めによりこれとは異なる期間とできる場合もあります。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。

契約不適合責任について不動産事業者が弁護士にサポートを受けるメリット

契約不適合責任について、不動産事業者が弁護士にサポートを受けることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、主なメリットを3つ解説します。

  • 契約の態様に応じた的確な契約書が作成できる
  • 自社が負うべき責任が明確となり、経営判断の参考となる
  • トラブル発生時に交渉などに対応を任せられる

契約不適合責任について日頃から相談できる弁護士をお探しの際や、契約不適合責任を追及されてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。

契約の態様に応じた的確な契約書が作成できる

1つ目は、契約の態様に応じた的確な契約書が作成できることです。

弁護士にサポートを受けることで、契約実態に即したより的確な契約書の作成が可能となります。これにより「何が契約適合なのか」が明確となり、相手方との認識の齟齬により契約不適合責任が追及される事態を避けやすくなります。

自社が負うべき責任が明確となり、経営判断の参考となる

2つ目は、自社が負うべき責任が明確となり、経営判断の参考とできることです。

契約不適合責任は法律で規定されている責任です。しかし、先ほど解説したように、契約の態様によっては不動産取引における契約不適合責任を軽減したり、免責されたりすることもできます。反対に、「より手厚いアフターフォロー」を自社のアピールポイントとするのであれば、契約不適合責任を追及できる期間を伸長するなど、責任を加重することも検討できるでしょう。

とはいえ、自社が負うべき原則的な契約不適合責任の内容や状況に応じた責任減免の可否などを正しく理解していなければ、判断を誤りかねません。弁護士に相談することでこれらの理解が進み、的確な経営判断に役立てやすくなります。

トラブル発生時に交渉などに対応を任せられる

3つ目は、トラブル発生時に交渉などに対応を任せられることです。

日頃から弁護士へ相談しておくことで、万が一トラブルが発生した際にもスムーズかつ的確な対応が可能となります。また、相手方との交渉も任せられるため、本業への影響も最小限に抑えられるでしょう。

契約不適合責任について相談できる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお問い合わせください。

契約不適合責任と不動産に関するよくある質問

続いて、契約不適合責任と不動産に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

追完を請求することなく代金減額を請求されることもある?

追完を請求することなく、代金減額を請求されることもあります。

代金減額請求ができるのは、原則として追完請求をしたものの一定期間内に履行されない場合に限られます。ただし、履行の追完が不能であるときなど一定の場合には、追完請求をすることなく直ちに代金減額請求が可能です。

追完をしたら損害賠償請求は免れる?

追完請求に応じても、損害賠償請求を免れるわけではありません。

たとえば雨漏りの場合、雨漏りの修補請求に加えて、雨漏りによって汚損した家具などを買いなおす費用や雨漏りによって居住できなかった期間における仮住まいの賃料などについて損害賠償請求がなされる可能性があります。

不動産の契約不適合責任についてお困りの際はアクセルサーブ法律事務所へご相談ください

不動産の契約不適合責任でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。

  • 不動産・建築業界に特化している
  • 業界実態に即した実践的なアドバイスを得意としている
  • 予防法務に注力している

不動産・建築業界に特化している

アクセルサーブ法律事務所は、不動産・建築業界に特化しています。業界事情や関連する事例、裁判例、判例などを熟知しているため、より的確なリーガルサポートを実現できます。

業界実態に即した実践的なアドバイスを得意としている

法的に正しいことと、事業にとって最適なことは一致しないことも多いでしょう。当事務所では法的なルールは守りつつも、その先にある「事業のさらなる発展・目標達成」を重視したより実践的なアドバイスを得意としています。

予防法務に注力している

アクセルサーブ法律事務所の最終的な目標は、「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことにあります。このゴールを達成するため、トラブルが起きてからの問題解決支援のみならず、トラブルを防ぐ予防法務にも注力しています。

まとめ

契約不適合責任の概要や不動産の売主が契約不適合責任で請求され得る内容、契約不適合責任の免除の可否などを解説しました。

不動産事業者が不動産の売主となる場合、契約不適合責任に注意しなければなりません。契約不適合責任が生じる場合、追完請求や代金減額請求、損害賠償請求、解除などがなされる可能性があります。

不動産事業者が、契約不適合責任の追及から完全に逃れることは困難でしょう。しかし、契約書の条項を工夫することで、契約不適合責任を追及される可能性を引き下げることは可能です。契約不適合責任について不安がある場合は弁護士へ相談し、契約書の整備や見直しをしておくことをおすすめします。

アクセルサーブ法律事務所は不動産・建築業界に特化しており、不動産事業者様からのご相談・ご依頼実績も豊富に有しています。契約不適合責任について相談できる実績豊富な弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までまずはお気軽にご連絡ください。当事務所は「法律のトラブル相談を聞く人」に留まらず、お客様の事業成長と共に歩む長期的なパートナーでありたいと考えています。

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