賃貸借契約の解約申入れのための「正当事由」とは?弁護士がわかりやすく解説

貸主側から不動産の賃貸借契約の解約を申し入れするためには、原則として正当事由が必要です。正当事由が認められなければ、貸主側の都合だけで賃貸借契約を終了することはできません。借主にとって生活や事業の拠点である不動産の賃貸借契約を、貸主の都合だけで一方的に解除されてしまっては、不利益が非常に大きいためです。
では、賃貸借契約の解約申入れの正当事由としては、どのようなものが挙げられるのでしょうか?また、賃貸借契約を終了して借主に立ち退いてもらいたい場合、どのような手順で対応を進めれば良いのでしょうか?今回は、賃貸借契約の解約申入れの正当事由や賃貸借契約を終了させる流れについて弁護士のサポートを受けるメリットなどについてくわしく解説します。
なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は不動産・建築業界に注力しており、不動産事業者様や不動産オーナー様に対する豊富なリーガルサポート実績を有しています。賃貸借契約解除の正当事由について相談できる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
賃貸借契約の解約申入れの正当事由とは?
賃貸借契約の解約申入れの正当事由とは、不動産の貸主側から賃貸借契約の解約申入れをして賃貸借契約を終了しても仕方がないとされる理由のことです。
冒頭で解説したように、貸主側の意思で簡単に賃貸借契約解除を解除されてしまっては、借主にとって不利益です。そのため、土地や建物の賃貸借契約を貸主の側から一方的に終了させて借主を立ち退かせるには、一定の正当事由の存在が必要となります。
なお、正当事由が必要となるのはあくまでも貸主側の一方的な都合で借主を立ち退かせる場合のみであり、賃貸借契約の終了について貸主と借主との間で合意がまとまる場合は、正当事由は必要ありません。ただし、正当事由がある方が借主に納得してもらいやすい(賃貸借契約解除について合意がまとまりやすい)側面はあるでしょう。
賃貸借契約の解約申入れの正当事由についてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
賃貸借契約の解約申入れの正当事由で考慮される要素
賃貸借契約の解約申入れの正当事由の有無はある1つの事象だけから判断されるのではなく、さまざまな側面から総合的に考慮されるものです。つまり、「トータルで見た際に、賃貸借契約を一方的に終了することによる借主の不利益と賃貸借契約を終了させられない場合における貸主の不利益のいずれが大きいか」といった視点から、総合的に判断されるということです。
ここでは、賃貸借契約の解約申入れの正当事由の有無の判断にあたって考慮される主な要素を、5つ紹介します。実際のケースにおいて、賃貸借契約の解約申入れの正当事由があると言えるか否かお悩みの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
- 借主と貸主それぞれの事情
- 土地・建物の利用状況
- 建物の現況
- 賃貸借契約の状況
- 立退料の金額
借主と貸主それぞれの事情
1つ目は、貸主と借主それぞれの事情です。
貸主側の事情としては、たとえば貸主の親を介護するためにどうしてもその不動産に親を居住させる必要が生じていることなどが考えられます。ただし、貸主が他にも不動産を所有しておりその不動産にこだわる必要性がない場合には、正当性が弱くなるでしょう。
一方で、借主側の事情としては、長年その地で営業しており他の場所に移れば既存客が離れて甚大な損失が生じかねないことなどが挙げられます。
これらそれぞれの事情が、正当事由の判断材料となります。
土地・建物の利用状況
2つ目は、土地・建物の利用状況です。
たとえば、借主がその不動産を利用している頻度が低い場合には、貸主にとって有利となりやすいでしょう。また、借主による用法違反がある場合にも、貸主に有利な方向へと作用します。
建物の現況
3つ目は、建物の現況です。
賃貸借契約の対象が土地ではなく建物である場合、建物の現況も正当事由の判断にあたって考慮されます。建物の現況とは、その建物の老朽化度合や、仮に補修をするとした場合にかかる費用の目安などです。例えば、建物が倒壊して周りに大きな迷惑をかける危険性が高くなっている、などいう事情があると、「正当事由がある」という方向に傾きやすいでしょう。
賃貸借契約の状況
4つ目は、賃貸借契約の状況です。
たとえば、借主が頻繁に賃料を滞納するなど契約違反がある場合には、貸主にとって有利に働きやすくなります。一方で、借主に契約違反がなく長年平穏に賃貸借契約が更新されてきている場合には、賃貸借契約解除の正当事由が認められづらいでしょう。
立退料の金額
5つ目は、立退料の金額です。立退料とは、不動産の貸主側の都合で賃貸借契約を終了させる際に、貸主から借主に対して支払う金銭です。
原則として、立退料を支払うことのみをもって正当事由があると判断されるものではありません。立退料は、他の事情だけでは賃貸借契約を終了させる正当事由としては弱い場合に、正当事由を補強する役割に位置付けられます。
適正な立退料の金額はその他の正当事由の強さや状況などによって異なるため、まずは弁護士に相談をしたうえで、そのケースにおける立退料の目安を把握すると良いでしょう。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
賃貸借契約を終了させたい場合の流れ
貸主側から賃貸借契約を終了させたい場合、どのような流れで進めれば良いのでしょうか?ここでは、貸主の側から賃貸借契約を終了させる主な基本的な流れを解説します。
- 正当事由の有無を確認する
- そのケースにおける立退料の目安や立ち退きの条件を検討する
- 借主と交渉する
- 合意がまとまったら、合意内容を書面に残す
- 合意がまとまらない場合は、調停や裁判を申し立てて解決をはかる
正当事由の有無を確認する
はじめに、賃貸借契約の解約申入れの正当事由や、その強弱を確認します。これを確認することで、「仮に裁判になった場合に出される結論」が想定でき、そこから逆算をして提示する条件を検討しやすくなるためです。
とはいえ、正当事由の有無などを自身で明確に判断するのは容易ではありません。そのため、まずは弁護士に相談をしてそのケースにおける正当事由の有無や強弱を判断したうえで、提示する条件の検討に進むと良いでしょう。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
そのケースにおける立退料の目安や立ち退きの条件を検討する
続けて、そのケースにおける立退料の目安や、借主に提示する立ち退きの条件を検討します。
先ほど解説したように、立退料は正当事由を補完する役割を持つものです。そのため、正当事由の強弱によって正当な立退料の目安は変わります。
また、場合によっては他の条件の提示も検討すると良いでしょう。たとえば、引越し(移転)先として近隣の建物を紹介することとしたり、引越し(移転)先の方が賃料が高い場合において一定期間におけるその差額を負担したりすることなどが検討できます。
立ち退きの条件は借主との交渉の結果として後から引き上げることはできる一方で、いったん提示した条件を引き下げるのは容易ではありません。そのため、当初提示する条件については弁護士に相談したうえで、慎重に検討すべきでしょう。
借主と交渉する
貸主に提示する条件がまとまったら、借主との間で賃貸借契約を終了させるための交渉(立ち退きの交渉)を行います。
交渉方法は、借主との関係性に応じて検討すると良いでしょう。たとえば、オーナーと借主がこれまでも顔を合わせる機会が多く関係性が良好なのであれば、オーナーが対面して交渉する方が合意を得やすいかもしれません。
一方で、オーナーの面識がない場合、突然訪ねたところで相手が身構えてしまいます。この場合には、まず「お願い」など柔らかい文体で立ち退きをお願いしたい旨の書面を投函したうえで、交渉に臨むと良いでしょう。
合意がまとまったら、合意内容を書面に残す
賃貸借契約解除に関する合意がまとまったら、できるだけ早期に借主との間で合意書を交わします。口頭での合意だけでは、後から合意を反故にされたり、いったんまとまったはずの立退料について増額を求められたりするおそれがあるためです。
合意書には、明け渡し期限のほか、合意した立退料の額などの条件、明け渡し期限を過ぎた場合に発生する損害金の額などについて明確に定めましょう。弁護士にサポートを依頼することで、より的確な合意書面を作成しやすくなります。
合意がまとまらない場合は、調停や裁判を申し立てて解決をはかる
立ち退きについて合意がまとまらない場合などには、調停や裁判を申し立てて解決をはかります。賃貸借契約の解約申入れには、裁判を申し立てる前に訴訟を提起すべきという「調停前置主義」は採られていません。ただし、調停を経ることなくいきなり裁判を申し立てた場合には、裁判所の判断で調停に付される可能性があります。
調停とは裁判所で行う話し合いの手続きのことであり、調停委員が当事者から交互に意見を聞く形で合意をはかります。調停では、裁判所が結論を下すのではありません。
一方で、裁判となった場合は、裁判所が賃貸借契約解除の正当事由の有無や、立退料の正当性などについて結論を下します。裁判所は法令に従って立ち退きの正当性などを判断するため、裁判に至った場合には、賃貸借契約解除の正当事由の有無や強弱がより重要な意味を持ちます。
アクセルサーブ法律事務所は不動産・建築業界に特化しており、貸主側からの賃貸借契約解除についても豊富なサポート実績を有しています。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
賃貸借契約の解約申入れの正当事由について弁護士のサポートを受けるメリット
賃貸借契約の解約申入れの正当事由について弁護士のサポートを受けることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、主なメリットを4つ解説します。
- 正当事由の有無や強弱を確認できる
- そのケースにおける立退料の目安を確認できる
- 交渉や調停、裁判などの対応を任せられる
- 交渉成立時に的確な合意書を作成できる
正当事由の有無や強弱を確認できる
1つ目は、正当事由の有無や強弱を確認できることです。
賃貸借契約の解約申入れの正当事由の有無は、さまざまな事情を考慮して総合的に判断すべきものです。ある1つの事情のみから機械的に判断できるものではありません。
そのため、実際に立ち退き交渉を進めようにも、正当事由があるといえるか否か判断に迷うことが多いでしょう。しかし、正当事由の有無や仮に裁判となった場合に想定される「落としどころ」を把握しておかなければ、交渉にあたって適切な「カード」を切るのは困難です。
弁護士にサポートを依頼することでそのケースにおける正当事由の有無や強弱が把握でき、相手方と的確な交渉を進めやすくなります。
そのケースにおける立退料の目安を確認できる
2つ目は、そのケースにおける立退料の目安を確認できることです。
自分で交渉を進めようにも、そのケースにおける正当な立退料の額がわからないことも多いでしょう。知らずに交渉を進めた結果高めの立退料を提示してしまうと、後から引き下げるのは困難です。
弁護士にサポートを依頼することで、そのケースにおける立退料の目安を把握したうえで交渉に臨むことが可能となります。
交渉や調停、裁判などの対応を任せられる
3つ目は、交渉や調停、裁判などの対応を任せられることです。立ち退き交渉を自分で行うことに不安がある場合や、立ち退き交渉にさほど時間を避けない場合もあるでしょう。
弁護士に依頼することで弁護士に交渉や調停、訴訟を代理してもらうことが可能となり、精神的・時間的な負担を大きく軽減できます。
交渉成立時に的確な合意書を作成できる
4つ目は、交渉成立時に的確な合意書を作成できることです。
先ほどの「流れ」で解説したように、借主との間で賃貸借契約の終了の合意がまとまったら、早急に合意書を交わすべきです。この合意書に不備があったり合意書の用意に時間を擁したりすれば、相手の気が変わり、交渉のやり直しが必要となるかもしれません。
弁護士に依頼する場合には弁護士が合意書を作成するため、時期を逸することなく適切な合意書を取り交わしやすくなります。
賃貸借契約の解約申入れの正当事由に関するよくある質問
続いて、賃貸借契約の解約申入れの正当事由に関するよくある質問とその回答を3つ紹介します。
他の正当事由がなくても、立退料さえ支払えば解除できる?
他に正当事由が一切ない場合、立退料の支払いだけで賃貸借契約を一方的に終了させるのは容易なことではありません。立退料は、あくまでも他の正当事由を補完するものであるためです。
ただし、これは裁判にまで至った場合であり、当事者間での交渉さえまとまれば賃貸借契約を終了させることは可能です。そのため、正当な理由はないもののどうしても賃貸借契約を終了させたい事情がある場合には、高額な立退料など手厚い補償を提示することで合意を目指すことも1つの方法でしょう。
借主が1か月賃料を滞納したら、すぐに契約解除できる?
賃料の滞納は賃貸借契約を終了させる原因となるものの、1か月程度の滞納では契約解除は困難でしょう。
賃料の支払いは賃貸借契約における借主の最大の義務であり、この義務を履行しないことは契約解除の原因となります。ただし、1か月程度の滞納を1度しただけでは、契約解除は困難です。契約を解除するには貸主と借主との信頼関係を破壊する程度の事情が必要であり、1か月程度の滞納を1度した程度であれば信頼関係を破壊したとまではいえないためです。
何か月分の滞納があれば賃貸借契約が解除できるのかについて明確な基準はないものの、一般的には3か月分の滞納程度が目安とされています。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
オーナーチェンジは、賃貸借契約解除の正当事由になる?
通常の売買の場合、不動産のオーナーチェンジ自体は賃貸借契約の解約申入れの正当事由とはなりません。新しい不動産所有者は、以前の不動産所有者が締結していた賃貸借契約の地位を引き継ぐこととなるためです。
ただし、担保(抵当権など)が実行されて不動産が競売にかけられたことによるオーナーチェンジである場合、賃貸借契約を締結した時期が実行された担保の登記より後であれば、例外的に強制退去の対象となります。
賃貸借契約解除でお困りの際はアクセルサーブ法律事務所へご相談ください
賃貸借契約の解除や正当事由の有無についてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- 不動産・建築業界のサポート実績が豊富にある
- 予防法務に注力している
- 業界実態に即した実践的なアドバイスを得意としている
不動産・建築業界のサポート実績が豊富にある
アクセルサーブ法律事務所は不動産・建築業界に特化しており、これらの業界において豊富なサポート実績を有しています。業界における取引慣例や裁判例、判例なども熟知しているため、より実効性の高い的確なリーガルサポートが実現できます。
予防法務に注力している
アクセルサーブ法律事務所は、「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことを目標としています。この目標を実現するため、トラブルが発生してからの対応のみならず、トラブルを予防する対策にも注力しています。
業界実態に即した実践的なアドバイスを得意としている
法的に正しいことと事業にとって最適なことは、一致しないこともあります。もちろん違法なことに手を染めるのは避けるべきであるものの、法令を遵守しつつ事業の発展を目指す的確な方法が分からない場合も多いでしょう。
アクセルサーブ法律事務所では、法的なルールは守りつつ、その先の「事業のさらなる発展・目標達成」も重視したアドバイスを提供します。
まとめ
賃貸借契約の解約申入れの正当事由について解説しました。
不動産の賃貸借契約は、原則として貸主側から一方的に終了させることはできません。しかし、十分な正当事由があると認められれば、借主が終了に合意していなくても、貸主側から賃貸借契約を一方的に終了させることが可能となります。
賃貸借契約の解約申入れの正当事由の有無は1つの事象のみから判断されるものではなく、貸主・借主それぞれの事情や不動産の利用状況、建物の現況などさまざまな事情から総合的に判断されます。また、正当事由が弱い場合には、相当の立退料を支払うことで正当事由を補強することも検討できます。
正当事由の有無や強弱、そのケースにおける適正な立退料の判断には、専門的な知見が必要です。そのため、まずは弁護士に相談したうえで、立ち退き交渉の進め方を検討するとよいでしょう。
アクセルサーブ法律事務所は不動産・建築業界に特化しており、賃貸借契約解除にまつわるサポートについても豊富な実績を有しています。賃貸借契約の解約申入れの正当事由についてお悩みの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。


