工事差し止め請求の流れは?差し止め請求を避ける対策と併せて弁護士がわかりやすく解説

何らかの違反や侵害があるとして、工事の差し止め請求がなされる場合があります。では、工事差し止め請求は、どのような理由でなされることが多いのでしょうか?また、工事差し止め請求は、一般的にどのような流れで進行するのでしょうか?
今回は、工事差し止め請求の概要や主な原因、工事差し止め請求の流れ、工事差し止め請求を避ける対策などについて、弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産法務に特化しており、豊富なサポート実績を有しています。工事差し止め請求がなされて対応にお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
工事差し止め請求とは?
工事差し止め請求とは、何らかの違反や侵害があることを理由として、着工前の工事や進行中の工事の中断を求めることです。工事差し止め請求は建設予定地の隣家の住人などが単独で求める場合もある一方で、工事による影響が広範囲に及ぶ場合には近隣住民などが集団で求める場合もあります。
工事の差し止め請求がなされたらこれを無視して工事を決行することは避け、早期に弁護士に相談すべきでしょう。工事差し止め請求への対応でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
工事差し止め請求の主な原因
工事差し止め請求は、工事に何らかの法令違反や侵害がある場合になされます。ここでは、工事差し止め請求の主な原因を2つ解説します。
- 工事による振動・騒音が法令や条例の基準を超えている
- 建設予定の建物が完成すれば、周辺住民の日照権・プライバシー権などを侵害する
工事による振動・騒音が法令や条例の基準を超えている
1つ目は、工事による振動や騒音が法律や条例の基準を超えているなど、工事そのものに法令違反がある場合です。
建設工事から出る振動や騒音は振動規制法や騒音規制法により一定の規制がされているほか、地域によっては条例によりさらに厳しい規制がされていることもあります。
騒音や振動が受忍限度(社会通念上での我慢すべき限度)を超えている場合、人格権や不法行為(民法709条)などを根拠として、差し止め請求がなされる可能性もあります。
建設予定の建物が完成すれば、周辺住民の日照権・プライバシー権などを侵害する
2つ目は、工事によって建設される予定の建物が周辺住民の日照権やプライバシー権を侵害するなど、建物自体に問題がある場合です。
日照権とは、建物に十分な日当たりを確保する権利です。法律上明記された権利ではないものの、判例・裁判例で認められています。
また、建築基準法では建築する建物について「斜線規制」や「日影制限」などを設けており、これにより間接的に日照権を保護しています。新たに建築しようとする建物が既存建物の日照権を侵害するものである場合、日照権侵害を理由として差し止め請求をされる可能性があります。
また、プライバシー権とは私生活上の事柄や情報を他人にみだりに知られたり公開されたりしない権利です。憲法13条の幸福追求権などを根拠として判例で肯定されています。
そして、民法で「境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む)を設ける者は、目隠しを付けなければならない」旨が規定されるなど(同235条1項)、法令によっても間接的に保護されています。
たとえば、既存住宅の窓を見渡せる位置に新たに建築される家のベランダや窓が設置されれば、既存住宅の住民はプライバシー権を脅かされることとなるでしょう。このような場合に、プライバシー権の侵害を理由として工事の差し止め請求がなされる可能性があります。
工事差し止め請求の一般的な流れ
工事の差し止め請求は、一般的にどのような流れで進行するのでしょうか?ここでは、工事差し止め請求の一般的な流れを解説します。
- 周辺住民や代理人弁護士などから工事の中止を求める連絡が入る
- 裁判所に仮処分命令の申立て(保全命令の申立て)がされる
- 調停やADRが申し立てられる
- 訴訟が提起される
周辺住民や代理人弁護士などから工事の中止を求める連絡が入る
工事差し止め請求がなされる場合、まず周辺住民やその代理人弁護士から工事の中断を求める連絡が入ることが一般的です。特に、代理人弁護士から正式に工事差し止めの連絡が入った場合にはその後仮処分命令に進む可能性が高いため、早期に弁護士に相談をして対応策を検討すべきでしょう。
工事差し止め請求についてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
裁判所に仮処分命令の申立て(保全命令の申立て)がされる
工事を中断すべき旨の連絡が来ても工事を中断しない場合、相手方が裁判所に工事差し止めを求める「仮処分命令」を申し立てることが一般的です。仮処分命令とは、正式な判決が下されるまでの間に侵害行為が進行する事態を避けるために命じられる暫定的な措置であり、権利の保全を目的として行われます。
正式裁判の結論が出るまでには年単位での時間がかかることも多く、たとえば騒音被害の場合、その間にも工事による騒音が続けば近隣住民の健康状態に深刻な影響を及ぼしかねません。そこで、訴訟提起に先立って、暫定的な措置を求める仮処分命令の申立てがされることが一般的です。
調停やADRが申し立てられる
訴訟が提起される前に、調停やADR(Alternative Dispute Resolution)が申し立てられる場合があります。
調停やADRとは、裁判所に結論を下してもらうのではなく、当事者間の話し合いによって「落としどころ」を探る手続きです。話し合いとは言っても当事者が直接対峙するのではなく、建築に関する知見を有する調停委員が双方から交互に意見を聞く形で解決をはかることが一般的です。
調停やADRでは簡易・迅速な解決がはかりやすい一方で出頭の強制はできず、裁判所などに結論を出してもらうこともできません。そのため、相手方が「調停やADRで解決できる可能性は低い」と考えている場合には、調停やADRを経ずに訴訟が提起されることとなります。
訴訟が提起される
調停やADRを経ても落としどころが見つからなかった場合や、相手方が調停やADRで解決できる可能性が低いと考えている場合には、訴訟が提起されます。訴訟では、諸般の事情や双方が被る不利益のバランスなどを考慮して、裁判所が結論を下します。
裁判所が下した結論に納得がいかない場合には、判決書の送達日の翌日から2週間以内に控訴を提起して判決の見直しを求めます。この期間内に控訴をしなければ判決が確定し、その判決には当事者双方が従わなければなりません。
端的にいえば、裁判所が「工事を取りやめる必要はない」と判断すれば工事の再開が可能となり、裁判所が「工事をこのまま中止すべき」と判断すれば工事は続行できなくなるということです。
工事差し止め請求を避ける対策
工事の差し止め請求がなされると、自社の業務に多大な影響が及びます。そこでここでは、工事の差し止め請求を避ける対策を3つ解説します。
- 建築法規のほか、騒音・振動などの法令についても理解を深める
- 工事着工前に、周辺住民に丁寧に説明する
- 相談できる弁護士を見つけておく
建築法規のほか、騒音・振動などの法令についても理解を深める
1つ目は、建築法規はもちろん、騒音や振動など工事そのものへの規制への理解も深めることです。
建築法規に違反していれば建築確認が下りないため、建築法規については入念に確認していることでしょう。その一方で、騒音や振動など工事そのものに関する規制が軽視されている場合もあります。
思わぬ差し止め請求を避けるため、工事に関する規制についても理解を深めておくべきでしょう。
工事着工前に、周辺住民に丁寧に説明する
2つ目は、工事着工前に周辺住民に丁寧に説明することです。
工事に着工する前には、工事による騒音や振動が及び得る周辺住民に挨拶をして、工期などを丁寧に説明しておくことをおすすめします。また、周辺環境に大きな影響を及ぼし得る建物(大きめのマンションや、騒音や臭気が生じ得る工場など)を建築しようとする際は、事前に説明会を開き、特に丁寧に説明すべきでしょう。
相談できる弁護士を見つけておく
3つ目は、相談できる弁護士を見つけておくことです。
さまざまな対策を講じても、居住環境の悪化につながり得る建物の建築工事であれば差し止め請求がなされる可能性をゼロにすることは困難でしょう。万が一周辺住民などから苦情が出た際に初期対応を誤らないよう、相談先の弁護士を見つけておくことをおすすめします。
アクセルサーブ法律事務所は案件ごとのご相談のほか、顧問契約にも対応しています。建設・不動産業界に特化した弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
工事差し止め請求にまつわるよくある疑問
続いて、工事の差し止め請求に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
工事差し止め請求がされても無視して工事を続けてよい?
工事の差し止め請求がなされた場合、これを無視して工事を続行することはおすすめできません。差し止め請求を無視すれば、トラブルがさらに拡大するおそれがあるためです。
工事の差し止め請求を受けたら、アクセルサーブ法律事務所までお早めにご相談ください。
工事差し止め請求と併せて損害賠償請求がされることもある?
工事の差し止め請求と併せて、損害賠償請求がなされることもあります。たとえば、工事の騒音や振動などによって健康被害が生じている場合、たとえその時点で工事を取りやめたとしても、その時点までに生じた健康被害などが償われることにはならないためです。
工事の差し止め請求や損害賠償請求がなされてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
工事の差し止め請求でお困りの際はアクセルサーブ法律事務所までご相談ください
工事の差し止め請求でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- 建設・不動産業界に特化している
- 予防法務に注力している
- 業界実態を踏まえた実践的なアドバイスを提供する
建設・不動産業界に特化している
アクセルサーブ法律事務所は、建設・不動産業界に特化しています。業界における取引慣習のほか、工事の差し止め請求や工事に関するクレームなど業界で生じやすいトラブルを熟知しているため、状況に応じた的確なサポートを実現できます。
予防法務に注力している
弁護士について、「トラブルが起きてから相談する人」と認識している人も少なくないようです。しかし、トラブルを未然に防ぐことができれば、トラブル対応にリソースを割くことなく本業に注力しやすくなるでしょう。
アクセルサーブ法律事務所は「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」を最終的なゴールに定めており、トラブルを防ぐ「予防法務」に力を入れています。そのため、トラブルの予防段階からのサポートが可能です。
業界実態を踏まえた実践的なアドバイスを提供する
建設会社や不動産会社を経営する中で、「法的に正しいことと、経営として望ましいことは一致しない」と感じている経営者様も少なくないことでしょう。そうであるにもかかわらず、弁護士が法的な正しさだけを追求したアドバイスを押し付けても、実行できず絵に描いた餅となりかねないでしょう。とはいえ、法令を軽視していては足元を掬われ、経営の根幹を揺るがす事態ともなりかねません。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産会社の経営実態を深く理解し、法的なルールは守りつつも、その先にある「事業のさらなる発展・目標達成」も重視した実践的なアドバイスを提供します。
まとめ
工事差し止め請求の概要や工事差し止め請求の主な原因、工事差し止め請求の流れなどを解説しました。
工事差し止め請求とは、工事を取りやめるよう求めることです。工事差し止め請求の原因としては工事の騒音や振動のほか、その工事で建築される建物による日照権侵害、プライバシー権侵害などが挙げられます。
工事差し止め請求がなされたら無理に自社だけで対応することは避け、早期に弁護士に相談すべきでしょう。弁護士に相談することで、状況に応じた対処方法を的確に検討しやすくなるためです。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に注力しており、豊富なサポート実績を有しています。工事の差し止め請求への対応でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。


