下請企業の施工ミスで損害賠償がされた際の対応は?弁護士がわかりやすく解説

建設現場には、多くの企業や個人が関わることが少なくありません。そのような中で、下請企業の施工ミスが発覚する場合もあります。
では、下請企業の施工ミスで施主から損害賠償請求がされた場合、どのように対応すればよいのでしょうか?また、そもそも下請企業の施工ミスによる責任は、誰が負うことになるのでしょうか?今回は、下請企業の施工ミスによる責任の所在や損害賠償請求がされた場合の対処方法、下請企業の施工ミスに備える対策などについて、弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設業界に特化しており、下請企業の施工ミスに関するご相談についても豊富な対応実績を有しています。下請企業の施工ミスによる損害賠償請求でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
下請企業の施工ミスで損害賠償責任を負うのは誰?
はじめに、下請企業の施工ミスによる損害賠償責任の所在について、基本的な考え方を解説します。
- 施主に対しては元請企業が責任を負う
- 下請企業の施工ミスであれば、下請企業に求償できる可能性が高い
施主に対しては元請企業が責任を負う
施工ミスをしたのが下請企業であったとしても、施主に対して責任を負うのは、原則として施主から直接発注を受けた元請企業です。
建設などの請負契約の目的は「仕事の完成」にあり、原則としてその過程は問われません。つまり、契約で別途定めたのでない限り、仕事の発注を受けた請負人は自社の判断と責任で仕事の一部を下請けに出すことができるということです。
そうであるからこそ、「下請企業のミスだから、自社は責任を負わない」という主張は通るものではありません。施主とすれば元請企業を信頼して仕事を依頼したのであり、その過程の如何を問わず元請企業が責任をもって「仕事を完成」させるべきであるためです。
下請企業の施工ミスであれば、下請企業に求償できる可能性が高い
対施主としては、下請企業の施工ミスであれば元請企業が矢面に立って責任を負う必要がある一方で、その後の「内々の対応」により、施工ミスをした下請企業に責任を追及できる可能性があります。
具体的には、元請企業から施工ミスをした下請企業に対して、「求償」できる可能性があるでしょう。ここでいう「求償」とは、元請企業が施主に対して負担した損害賠償金の一部について、元請企業から施工ミスをした下請企業に支払いを求めることを指します。
とはいえ、工事現場においては元請企業が下請企業の施工を監督する立場にあることから、たとえ施工ミスをしたのが下請企業の従業員であったとしても、「100%が下請企業の責任」とまでは言い切れない場合も少なくありません。そのため、元請企業が施主に対して負担した損害賠償金の全額を下請企業に求償させられるとは限らず、元請企業と施工ミスをした下請企業との責任の割合(「過失割合」といいます)に応じて求償額を決めることが一般的です。
たとえば、元請企業が施主に対して負担した損害賠償金が1,000万円である場合、元請企業と下請企業との過失割合が「3:7」であれば、元請企業から下請企業に対して求償できる金額は700万円であるということです。
過失割合については、過去の判例や裁判例なども踏まえて状況ごとに個別で検討する必要があります。お困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
【対施主】下請企業の施工ミスで損害賠償請求がされた場合の初期対応
下請企業の施工ミスで自社に対して施主から損害賠償請求がされた場合、どのように対応すればよいのでしょうか?ここでは、損害賠償請求がされた場合の初期対応を解説します。
- 施工ミスの事実関係を確認する
- 施工ミスの状況などの証拠を残す
- 弁護士へ相談し、具体的な対応方針を検討する
- 施主に謝罪・交渉し、具体的な対応方法を決める
施工ミスの事実関係を確認する
下請企業のミスと思われる事項について施主から損害賠償請求がなされたら、まずは現地に出向くなどして施工ミスの事実関係を確認します。施主が施工ミスであると主張していても、施主による思い違いである可能性などもあるためです。
併せて、施主と締結した契約書の内容なども確認しておくとよいでしょう。目的物の引渡しから相当の時間が経過してから損害賠償請求をされた場合、責任追及できる期間を過ぎている可能性もあるためです。
施工ミスの状況などの証拠を残す
現地などを確認した結果、施工ミスがある場合には、その証拠を残します。また、可能な限りその施工ミスが生じた経緯や状況なども確認し、これらの記録も残しておきましょう。
弁護士へ相談し、具体的な対応方針を検討する
施工ミスの状況などについて証拠を残したら、施主に報告する前に弁護士にご相談ください。事前に弁護士に相談をすることで、その施工ミスによって自社が追うべき法的責任や下請けに請求し得る内容などが明確となり、施主に対して提案する具体的な補償内容の検討が可能となるためです。
施主に対する適切な補償内容は、施工ミスの内容や状況によって異なります。たとえば、施工ミスが補修可能な箇所であれば、早急な補修により対応する提案が検討できます。
また、補修に期間を要し、その期間中において施主が別の物件を借りる必要が生じるのであれば補修に加え、損害賠償としてその賃借料を補填することなども検討できるでしょう。
下請企業の施工ミスへの対応について相談できる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までご連絡ください。
施主に謝罪・交渉し、具体的な対応方法を決める
実際に施工ミスがあることがわかったら、施主に対して謝罪をします。そのうえで、自社側から可能な対応を提案するとよいでしょう。自社側からの提案に対して施主の納得が得られたら、合意内容を書面に残して補修などの具体的な対応を行います。
一方で、自社側からの提案について施主が納得しないのであれば、具体的な対応について施主側との交渉を進めます。施主との交渉が難航する場合には、状況に応じ、交渉の場に弁護士に同席してもらったり弁護士の代理で交渉してもらったりすることも検討するとよいでしょう。
【対下請企業】下請企業の施工ミスで損害賠償請求がされた場合の初期対応
下請企業の施工ミスで施主から損害賠償請求がなされたら、施主への対応と並行して、下請企業への対応も検討する必要が生じます。ここでは、下請企業に対する対応方法を解説します。
- 下請企業と締結した契約書を確認する
- 弁護士へ相談する
- 具体的な対応や過失割合について下請企業と交渉する
- ADRで解決をはかる
- 訴訟で解決をはかる
下請企業と締結した契約書を確認する
下請企業の施工ミスで損害賠償請求がなされたら、まずは下請企業と取り交わした契約書を確認します。契約書内で、施工ミスが発生した際の対応や損害賠償請求の所在などについて定めている場合もあるためです。
弁護士へ相談する
次に、建設業にくわしい弁護士へ相談します。弁護士に相談することで、契約書の内容も踏まえ、そのケースにおける過失割合や下請けに対して請求できる内容などを具体的に検討できるためです。
具体的な対応や過失割合について下請企業と交渉する
弁護士からの助言を踏まえて下請企業に請求する具体的な請求内容が決まったら、下請企業にこれを通知します。下請企業がこれに応じない場合には、下請企業側の言い分も聞きつつ交渉をします。なお、この交渉は弁護士が代理で行うことなども可能です。
ADRで解決をはかる
直接的な交渉では解決に至らない場合には、ADRで解決をはかります。ADR(Alternative Dispute Resolution)とは「裁判外紛争解決制度」であり、調停やあっせん、仲裁など訴訟以外の方法でトラブル解決をはかる仕組みです。建築に関する紛争には「建築ADR」という制度があり、建築に関する知識を有する専門家の関与の元で、簡易迅速な解決を目指します。施工ミス関係のトラブルに対応するADRとしては、例えば、国土交通省や各都道府県の「建設工事紛争審査会」などがあります。
ただし、ADRには出頭の義務はないため、相手方が協力的でない場合にはADRによる解決は困難です。
訴訟で解決をはかる
ADRによって解決できる見込みがほとんどない場合やADRを経ても解決に至らなかった場合には、訴訟によって解決をはかります。訴訟では、諸般の事情を踏まえ、裁判所が結論を下します。
裁判所が下した結論には当事者双方が従わなければならず、不服がある場合には判決書の送達日の翌日から14日以内に控訴をするほかありません。
下請企業の施工ミスによる損害賠償への対策
最終的には下請企業に一部を求償できる可能性があるとはいえ、下請企業の施工ミスによって損害賠償請求をされる事態はできるだけ避けたいことでしょう。ここでは、下請企業の施工ミスにより損害賠償請求をされる事態を避ける対策を4つ解説します。
- 下請企業を慎重に選定する
- 適正な請負代金を支払う
- 下請企業と締結する契約書の内容を慎重に検討する
- 下請企業任せにせず、現場を適正に監理する
下請企業を慎重に選定する
1つ目の対策は、下請企業を慎重に選定することです。
下請企業の施工実績なども踏まえて下請企業を慎重に選定することで、施工ミスが生じる可能性を避けやすくなります。
適正な請負代金を支払う
2つ目の対策は、適正な請負金額を支払うことです。
請負金額が工事内容に比して著しく低い場合、下請企業が通常どおり丁寧な工事をすれば採算が取れなくなる可能性があります。そこで、下請企業が何とか採算をとるために手抜き工事を行い、結果的に施工ミスが生じるおそれがあるでしょう。
適正な請負代金を支払うことで、このような事態を避けやすくなります。
下請企業と締結する契約書の内容を慎重に検討する
3つ目は、下請企業と締結する契約書の内容を慎重に検討することです。
契約書は、原則として法令の規定に優先して適用されます。下請企業ときちんと契約書を取り交わし、契約書の中で施工ミスが生じた際の損害賠償責任などを明確に記載することで、施工ミスの抑止力となるでしょう。また、実際に施工ミスが生じた際にも、スムーズな解決がはかりやすくなります。
とはいえ、元請企業側に極端に有利な条項を設けることは下請法などの規定に違反するおそれがあるため、注意しなければなりません。契約書の作成でお悩みの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
下請企業任せにせず、現場を適正に監理する
4つ目は、下請企業任せにせず、元請企業が現場を適正に監理することです。現場を下請企業に任せきりにしていれば、施工ミスに気付けずそのまま引き渡してしまう可能性が高くなります。
元請企業が現場をきちんと監理することで、万が一施工ミスが生じてもそのことに早期に気付きやすくなり、引渡しの前に補修などの対応をすることが可能となるでしょう。
下請企業の施工ミスによる損害賠償について弁護士に相談する主なメリット
下請企業の施工ミスで損害賠償請求がなされたら、早期に弁護士にご相談ください。ここでは、弁護士に相談する主なメリットを4つ解説します。
- 状況に応じた適切な対応が検討しやすくなる
- 訴訟になった場合の過失割合などを想定したうえで交渉を進められる
- 必要に応じて交渉を弁護士に任せられる
- 交渉成立後、求償などの履行がされなかった事態にも備えられる
下請企業の施工ミスによる損害賠償請求への対応でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお早めにご相談ください。
状況に応じた適切な対応が検討しやすくなる
下請企業の施工ミスが原因で損害賠償請求がなされた場合、自社が負うべき具体的な責任や適切な対処方法は、実際に施主に生じている損害などの状況によって異なります。また、施工ミスがあるからといって、施主の「言い値」での損害賠償請求に応じる必要はありません。
弁護士に相談することでそのケースにおける適切な対応方法が検討でき、これを踏まえた施主への提案が可能となります。
訴訟になった場合の過失割合などを想定したうえで交渉を進められる
先ほど解説したように、たとえ下請企業の施工ミスであったとしても、100%が下請企業の責任であると断言できるケースはさほど多くありません。そこで、双方の過失割合を検討することになるものの、適正な過失割合の算定は容易ではないでしょう。
弁護士に相談することで、仮に訴訟になった場合に認められ得る過失割合の想定が可能となり、これを踏まえて下請企業との交渉に臨むことが可能となります。
必要に応じて交渉を弁護士に任せられる
施主や下請企業によっては、交渉が難航する場合もあるでしょう。そのような場合には、弁護士の交渉を任せられます。
弁護士に交渉を任せることで適正な内容での合意に至りやすくなるほか、時間や労力の削減も可能となり本業に注力しやすくなります。
交渉成立後、求償などの履行がされなかった事態にも備えられる
下請企業との求償などの交渉は交渉の成立自体がゴールではなく、その後実際に求償金を回収することが目的でしょう。そうであるにもかかわらず、口頭だけで求償の交渉をまとめた場合には、合意したはずの金額が期日までに支払われなかった際の回収が困難なものとなりかねません。
弁護士のサポートを受ける場合には、交渉が成立した段階で合意書を取り付けるなど、求償額の回収までを踏まえた対応が実現できます。これにより、万が一期日までに入金がなかった際にも訴訟や強制執行などの手段をとりやすくなります。
下請企業の施工ミスによる損害賠償に関するよくある質問
続いて、下請企業の施工ミスによる損害賠償に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
施主が、下請企業に直接損害賠償請求をするよう主張できる?
施工ミスがあった場合における施主からの損害賠償請求先は原則として元請企業であり、下請企業に直接請求することはできません。
ただし、下請企業の行為が施主の法益を直接侵害したといえる特段の事情がある場合には、例外的に、不法行為により直接的な損害賠償請求が認められる可能性もあります。
そのため、下請企業の立場として施主から直接損害賠償請求がされた場合であっても請求を放置することは避け、早期に弁護士に相談すべきでしょう。
下請企業の施工ミスが原因であれば、損害賠償額の全額を下請企業に求償できる?
下請企業の施工ミスが原因であっても、元請企業が施主に対して負担した損害賠償金の全額を下請企業に求償するのは困難です。先ほど解説したように、元請企業は工事を監理する立場にあることから、元請企業の責任をゼロとするのは困難であるためです。
過失割合の算定には法令や過去の判例・裁判例などに関する知識が不可欠であるため、お困りの際はアクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
下請企業の施工ミスによる損害賠償請求でお困りの際はアクセルサーブ法律事務所までご相談ください
下請企業の施工ミスによる損害賠償請求でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- 建設・不動産業界に特化している
- 予防法務に注力している
- 経営者目線での実践的なアドバイスを得意としている
建設・不動産業界に特化している
建設業界では多重の下請けが一般化しているなど、やや特殊な業界であるといえます。そのため、トラブルを適切に解決するには、業界に特化した弁護士が適任でしょう。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に特化しているため、業界における取引実態などを踏まえたより的確なリーガルサポートが実現できます。
予防法務に注力している
トラブルの中には、事前の対策を講じることで防げるものも少なくありません。トラブルを未然に防ぐことでトラブル対応に時間や人手を割く必要性から解放され、本業に注力しやすくなるでしょう。
アクセルサーブ法律事務所は「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことを最終的なゴールに設定しており、これを実現するため、トラブルを防ぐ「予防法務」に注力しています。
経営者目線での実践的なアドバイスを得意としている
法的に正しいことと、経営として望ましいことは一致しないこともあるでしょう。そうであるにもかかわらず、弁護士が法的な正しさだけを追求すれば、受けたアドバイスは絵に描いた餅となりかねません。
アクセルサーブ法律事務所は法的なルールは守りつつも、その先にある「事業のさらなる発展・目標達成」も重視した経営者目線でのアドバイスを提供しています。
まとめ
下請企業の施工ミスによる損害賠償請求について、責任の所在や損害賠償請求がされた場合の初期対応、下請企業施工ミスによる損害賠償請求を防ぐ対策などを解説しました。
下請企業の施工ミスであったとしても、施主に対する責任を負うのは、原則として元請企業です。施主としては元請企業を信頼して工事を発注したのであり、工事の下請けなどは元請企業の責任として行うべきであるためです。
ただし、損害賠償請求の原因が下請企業の施工ミスにある場合、元請企業から下請企業に対して求償できる可能性があります。求償額の算定で必要となる過失割合は状況によって異なるため、まずは弁護士に相談をして対応方法を検討するとよいでしょう。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に特化しており、下請企業の施工ミスに関するトラブルについても豊富な対応実績を有しています。下請企業の施工ミスによる損害賠償請求でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。


