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工事の遅延で「損害賠償請求」されるケースは?予防策と併せて弁護士がわかりやすく解説

工事の遅延で「損害賠償請求」されるケースは?予防策と併せて弁護士がわかりやすく解説

工事の遅延が原因で、施主側から損害賠償請求がされることがあります。損害賠償請求をされたら慌てて対応するのではなく、弁護士へ相談したうえで請求が適切であるか否かなど冷静に判断したうえで対応に臨むと良いでしょう。

では、工事の遅延で損害賠償請求をされるのはどのような場合なのでしょうか?また、工事が遅延しても損害賠償責任を負わない場合はあるのでしょうか?今回は、工事の遅延で損害賠償請求をされるケースや工事が遅れても損害賠償責任を負わない場合、工事遅延による損害賠償請求の予防策などについて弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設業界に特化しており、工事の遅延を理由とした損害賠償請求についても豊富な対応実績を有しています。工事遅延により損害賠償請求がされてお困りの際や、損害賠償請求を避ける対策を講じたい際などには、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。

工事の遅延で損害賠償請求をされ得る主なケース

損害賠償請求とは、相手の不法行為や債務不履行(契約違反)が原因で何らかの損害を受けた際に、その相手方に対し、損害の補填に必要な金銭の支払いを求めることです。はじめに、工事の遅延を理由として損害賠償請求がなされる主なケースを2つ解説します。

  • 工事の遅延で仮住まいや仮店舗が必要となった場合
  • 工事の遅延で営業開始日が遅れた場合

工事の遅延で仮住まいや仮店舗が必要となった場合

1つ目は、工事の遅延によって仮住まいや仮店舗が必要となった場合です。

工事は事前に引渡日を決めることが多く、その引渡日に合わせてこれまでの住居や店舗、オフィスなどを引き払うことも少なくありません。そうであるにも関わらず、工事の遅延が原因で予定した日から新しい物件の使用ができなければ、仮住まいや仮店舗などの手配が必要となります。また、子どもの転校日を変更するなど、さまざまな問題や手間が生じる場合もあるでしょう。

そのため、仮住まいなどの手配に要した費用や精神的な苦痛などの損害について、賠償を求められる可能性があります。

工事の遅延で営業開始日が遅れた場合

2つ目は、工事の遅延によって営業開始日が遅れた場合です。

工事対象の物件が店舗や工場などである場合、工事の遅延により営業に支障が出る可能性があります。その場合には、「工事の遅延がなく、予定どおり営業できていれば得られたであろう利益(「逸失利益」といいます)などをベースとして、損害賠償請求をされる可能性があります。

工事の遅延による損害賠償請求額はどう決まる?

工事の遅延により相手方に損害が生じたからといって、相手方が求める損害賠償額が適正であるとは限りません。では、損害賠償額はどのように決まるのでしょうか?最終的な賠償額の決め方を解説します。

契約書に定めがある場合:その定めに従って算定する

工事請負契約書に、工事が遅延した場合の賠償額が定められている場合があります。契約書で工事遅延における損害賠償額の計算方法が定められている場合、原則としてその契約書の定めに従って損害賠償額を算定します。

なお、工事請負契約書には、「標準請負契約約款」が採用されることが少なくありません。これは、学識経験者と建設工事の需要者、建設業者である委員が構成員である「中央建設業審議会」が作成した、標準的な工事契約書です。このうち、民間工事に適用される「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」の42条2項には、工事遅延の損害賠償を「延滞日数に応じて、請負代金額に対し年10パーセントの割合で計算した額」とする規定が置かれています。

実際には契約書によって異なる定めをしている場合もあるため、まずは実際に取り交わした契約書を確認すると良いでしょう。

契約書に定めがない場合:状況に応じて個々に算定する

工事遅延の損害賠償額について契約書などに定めがない場合には、当事者間の交渉によって個別に損害賠償額を決定します。弁護士がこの交渉を代行することも少なくありません。

交渉がまとまらない場合には、裁判所での調停や建設工事紛争審査会の紛争処理手続を活用して、仲裁を受けつつ合意をまとめることとなります。これによっても合意が得られなければ、最終的には訴訟を提起し、裁判所に損害賠償の適正額について判断してもらうこととなります。

工事遅延による損害賠償額について交渉がまとまらずお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお早めにご相談ください。アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に特化した弁護士事務所であり、解決へ向けた的確なリーガルサポートを提供します。

工事が遅れても損害賠償責任を負わない場合

工事が遅延した場合でも、建設業者側が損害賠償責任を負わないケースもあります。ここでは、損害賠償責任を追わない主なケースを解説します。

  • 施主の都合による遅延の場合
  • 天災などの不可抗力による場合

施主の都合による遅延の場合

1つ目は、施主の都合によって工事が遅延した場合です。施主の希望によって途中で仕様の大幅な変更があり、これが工事遅延の原因である場合、債務不履行の帰責事由(責められるべき理由や落ち度)が建設業者側にあるとはいえないため、建設業者側は原則として損害賠償責任を負いません(民法415条1項但書)。

ただし、この場合であっても施主との認識に違いがあれば、損害賠償請求をされるなどトラブルに発展するおそれがあります。そのため、仕様変更の要請を受けた時点で工期が延びる旨や伸長後の完了予定日、仕様変更に伴う追加報酬の発生などについて施主と十分に擦り合わせ、書面での承諾を得ておくことをおすすめします。

追加工事の合意書の作成でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。

天災などの不可抗力による場合

2つ目は、天災などの不可抗力によって工事が遅延した場合です(同415条)。

たとえば、東日本大震災や能登半島での豪雨のような大規模災害に見舞われた場合にまで、納期を遵守することは現実的ではありません。この場合には、不可抗力(人の力では抵抗できない、防ぎようがないこと)として、損害賠償責任を負わない可能性が高いでしょう。上記の施主の都合の場合と同じく、債務不履行の帰責事由が建設業者側にあるとは言えないためです。

ただし、単に「雨の日が多かった」などだけでは損害賠償責任を免れられない可能性が高いといえます。晴天の日がある一方で雨天の日もあることは事前にわかっていることであり、これは不可抗力とまではいえないためです。では、「例年より雨の日が多かった」「台風が来た」「新型コロナが流行した」場合は、不可抗力といえるのでしょうか?これも、一概にはいえません。

どこまでの事態を「不可抗力」とするのかは認識の齟齬が生じやすいため、あらかじめ契約書に明記しておくと良いでしょう。何が「不可抗力」であるのかを明記することで、齟齬によるトラブルを避けやすくなります。

建築工事に関する契約書をトラブル予防の観点から作成したいとご希望の際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。

工事の遅延により損害賠償請求をされる事態を避ける方法

工事の遅延により損害賠償請求をされる事態を避けるには、どのような対策を講じれば良いのでしょうか?ここでは、主な対策を3つ解説します。

  • 無理な工程での工事を避ける
  • 進捗の遅れが生じた時点で施主に説明し承諾を得る
  • 天災などによる遅延は免責される旨を契約書に盛り込む

無理な工程での工事を避ける

工事の遅延による損害賠償請求を避けるポイントの1つ目は、無理な日程での工事を避けることです。無理な日程で工期を組んでしまうと、少しの天候不順などだけでも工事が遅延する可能性が高くなります。

「運」に左右されるような日程を組むことは避け、施主の理解も得たうえで、余裕のある工期を組むことをおすすめします。

進捗の遅れが生じた時点で施主に説明し承諾を得る

工事の遅延による損害賠償請求を避けるポイントの2つ目は、進捗の遅れが生じた時点で施主にその旨を説明し、工期の変更について承諾を得ておくことです。

工期の途中で遅延の可能性が高くなった場合には、可能な限りその時点で施主の承諾を得ておくことをおすすめします。早い段階で工事の遅延が分かれば、施主に及ぶ損害を最小限に抑えやすくなり、施主が納得してくれる可能性も高くなるためです。

たとえば、店舗用の物件であれば、本来の引渡日が近くなればすでにチラシを作っていたり、従業員を雇用して教育を始めたりする可能性があるでしょう。このような準備に取り掛かる前に工事の遅延がわかれば、オープン日をズラすなどの対応がしやすくなります。

また、住宅用の物件であっても、工事の遅延が早めにわかれば、現在の物件を引き払う時期や引っ越し業者に依頼する時期を遅らせるなどの対応がしやすくなるでしょう。

工期の伸長について承諾が得られた場合には、書面での承諾を得ておくこともポイントです。書面で承諾を得ておくことで、「言った・言わない」のトラブルを回避しやすくなるためです。

天災などによる遅延は免責される旨を契約書に盛り込む

工事の遅延による損害賠償請求を避けるポイントの3つ目は、天災など工事遅延による責任が免除されるケースを、具体的に契約書に盛り込むことです。

先ほど解説したように、「不可抗力」による工事遅延では損害賠償責任を負いません。しかし、誰が見ても不可抗力にあたるような大地震などの場合を除き、何が「不可抗力」であるかの解釈をめぐってトラブルに発展する可能性があります。

何が「不可抗力」にあたるのかを契約書に明記しておくことで解釈違いによるトラブルを避けられるほか、損害賠償請求がなされる可能性を引き下げることが可能となります。

工事請負契約書の作成でお悩みの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。当事務所は建設業者様のサポート実績が豊富であり、トラブルを避け、いざという時に身を守る契約書の作成サポートを提供しています。

工事遅延による損害賠償請求に関するよくある質問

続いて、工事遅延による損害賠償請求に関して、よくある質問とその回答を2つ紹介します。

下請け業者が見つからないことによる工事遅延も損害賠償請求の原因になる?

下請け業者を見つけることに手間取ったことが原因で工事が遅延した場合も、損害賠償請求の対象となり得ます。下請け業者が見つからないことは施主の責任ではないうえ、一般的には「不可抗力」とまではいえないためです。

下請け業者の責任による工事遅延の場合、元請は責任を負わない?

下請会社の責任によって工事が遅延した場合であっても、施主に対しては元請企業が責任を負うこととなります。なぜなら、施主は元請企業に対して工事を発注したのであり、下請企業への発注はあくまでも元請企業の責任で行うべきものであるためです。

また、元請企業は工事全体を統括する役割を担っており、たとえ下請企業に問題があったとしても、責任を免れることはできません。

ただし、実際に下請企業に問題があった場合には、元請企業から工事遅延の原因を作った下請企業に対して求償(元請企業が施主からの請求によって負担した損害賠償の一部について、下請企業が負担するよう求めること)ができる可能性があります。

求償をするには、契約書に別段の定めがない限り、工事遅延の原因が下請企業にあることを立証する必要があり、そのハードルは低くありません。下請企業への求償をご検討の際や、元請企業から求償を求められてお困りの際などには、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。

工事遅延による損害賠償請求でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所へご相談ください

工事遅延による損害賠償請求でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所へご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。

  • 建築・不動産業に特化している
  • 「想い」を重視している
  • 予防法務に力を入れている

建築・不動産業に特化している

アクセルサーブ法律事務所は、建築・不動産業界に特化しています。業界にまつわる取引慣習や裁判例、判例などを熟知したうえでサポートを行うため、より実践的かつ的確なリーガルサポートを実現できます。

「想い」を重視している

「法律や弁護士は冷たい印象がして、何だか苦手」という方も、ぜひ当事務所にご相談ください。アクセルサーブ法律事務所は、「どのような会社・組織をつくりたいか」「従業員・メンバーのみなさんとどのような関係性を創りたいのか」といったお客様の想いを大事にしながら、「人間性」にも重きを置いたサポートを心がけています。

予防法務に力を入れている

当事務所の最終的なゴールは、「助け合い、称え合い、共に成長し喜び合うのが当たり前の世界」を創ることです。この目標を達成するため、紛争の解決支援のみならず、紛争の予防支援にも力を入れています。

「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う。それが当たり前の世界を創る」ために誠実を尽くし、情熱を持ってサポートに尽力したいと考えます。事業のさらなる成長のため、そして無用な争いを防ぐため、想いを共有できる弁護士をお探しの建設業者様は、アクセルサーブ法律事務所までぜひ一度ご相談ください。

まとめ

工事遅延による損害賠償請求がなされ得るケースや工事が遅れても損害賠償責任を負わないケース、工事遅延による損害賠償請求を避けるポイントなどを解説しました。

工事が遅延して予定した日の引き渡しが叶わなければ、施主から損害賠償請求をされる可能性が生じます。ただし、施主に原因がある場合や不可抗力である場合には、例外的に損害賠償責任を負いません。

工事の遅延による損害賠償請求を避けるには、余裕のある工期を設定することのほか、遅延の可能性が生じた段階で施主に早めに承諾を得ること、「不可抗力」の範囲について契約書に明記することなどが挙げられます。適切な対策を講じることで、損害賠償請求をされる可能性を引き下げやすくなるでしょう。

アクセルサーブ法律事務所は建築・不動産業界に特化しており、施主から損害賠償請求がされた際の対応についてもご相談いただけます。工事遅延を理由に損害賠償請求がされてお困りの際や、工事遅延によるトラブルを避ける対策について相談したい際などには、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

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