設計ミスで損害賠償請求がされた場合の対応は?弁護士が業者向けにわかりやすく解説

建築設計には、非常に高度な専門知識や技術が求められます。しかし、中には設計ミスをしてしまう場合や、設計ミスを疑われてしまう場合もあるでしょう。
では、設計ミスが原因で損害賠償請求をされた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?また、設計ミスによる損害賠償請求に備えるため、どのような対策を講じれば良いのでしょうか?今回は、設計ミスによる損害賠償請求について弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産業界に特化しており、豊富なサポート実績を有しています。設計ミスがあるとして損害賠償請求をされてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
建設工事における設計ミスの種類
はじめに、建設工事における設計ミスの主な種類(パターン)を3つ解説します。
- 建物が注文者が要求した仕様に沿っていない
- 建物が法令に適合していない
- 構造上の欠陥により雨漏りやひび割れなどの不具合が生じる
建物が注文者が要求した仕様に沿っていない
1つ目は、建物が注文者の要求した仕様に沿っていないミスです。
たとえば、注文者が書斎として希望している部屋をウォークインクローゼットとして設計したり、注文者が「子ども部屋が2つ欲しい」と希望しているにも関わらず子ども部屋を1つのみで設計したりする場合がこれに該当します。
このような設計ミスは注文者も気づきやすく、打ち合わせの段階で指摘が入り修正できることが多いでしょう。
建物が法令に適合していない
2つ目は、建物が法令に適合していないミスです。
建物を建築するうえでは、建築基準法やその地域の条例など、さまざまな法規に適合させなければなりません。法令に適合していなければ建築確認を受けることができず、設計のやり直しが生じて施工の遅れにつながります。
構造上の欠陥により雨漏りやひび割れなどの不具合が生じる
3つ目は、構造上の欠陥によって建物に不具合が生じるミスです。
設計ミスの内容によっては建築確認は受けられる一方で、引渡し後に問題が発覚することがあります。設計ミスによって生じる不具合の代表格としては、雨漏りやひび割れなどが挙げられます。
これらのミスが引き渡し後に生じた場合には、注文者から契約不適合責任を追及される可能性があるでしょう。
設計ミスで追及されうる主な責任
設計ミスが生じた場合、契約不適合責任を追及される可能性があります。契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約内容に適合しないものである場合に、請負人が注文者に対して負うべき責任です。具体的には、次の請求がなされる可能性があります。
- 追完(修補)請求
- 代金減額請求
- 損害賠償請求
- 契約の解除
追完(修補)請求
1つ目は、追完請求です(民法559条、562条)。追完請求とは、次のいずれかの対応を求めるものです。
- 目的物の修補
- 代替物の引渡し
- 不足分の引渡し
とはいえ、設計ミスによる追完で、代替物の引渡しや不足分の引渡しは想定しづらいでしょう。そのため、追完としては、原則として目的物の修補を求められることが多いといえます。
代金減額請求
2つ目は、代金減額請求です(同559条、563条1項)。代金減額請求とは、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求するものです。
代金減額請求ができるのは、原則として、注文者が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときに限られます。ただし、次のいずれかに該当する場合は、例外的に催告をすることなく代金減額請求が可能です。
- 履行の追完が不能であるとき
- 請負人が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
- 契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、請負人が履行の追完をしないでその時期を経過したとき(通常の設計ミスでは想定しづらいものの、たとえば一定期間中開催されるイベントで使用される建物について、追完しないうちにそのイベントの終期を迎えた場合など)
- その他、催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき
損害賠償請求
3つ目は、損害賠償請求です(415条)。損害賠償請求とは、請負人などがその債務の本旨に従った履行をしないときや、債務の履行が不能であるときに、注文者などがこれによって生じた損害の賠償を求めるものです。
たとえば、設計ミスにより当初より入居日が遅れる事態となった場合に、これによって生じた仮住まいや仮店舗の賃料を請求することなどがこれに該当します。追完の請求などと損害賠償請求は、両方が求められる可能性もあります。
契約の解除
4つ目は、契約の解除です(同559条、564条、541条、542条)。
当事者の一方(請負人など)がその債務(仕様に沿った建物納品など)を履行しない場合に、注文者などが相当の期間を定めてその履行の催告をしてもなお履行がされないときは、注文者などは、その契約を解除できます。ただし、不履行の程度が契約の趣旨や社会通念に照らして軽微であるときは、解除まではできません。
また、次のいずれかに該当する場合は、催告をすることなく解除できるとされています。これらの場合には、それ以上履行を求める意味が薄いためです。
- 債務の全部の履行が不能であるとき
- 請負人がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
- 債務の一部の履行が不能である場合、または請負人がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき
- 契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、請負人が履行をしないでその時期を経過したとき
- その他、請負人がその債務の履行をせず、催告をしても契約目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき
また、一定の場合には契約の一部の解除も可能です。
設計ミスを理由として損害賠償請求や契約解除などがなされて対応にお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。状況に応じて、具体的な対応方法などをアドバイスします。
設計ミスで損害賠償責任を負うのは建築士?施工業者?
設計ミスがあり、これが原因で施工不良が生じた場合、注文者からの損害賠償請求責任を負うのは設計をした建築士なのでしょうか?それとも施工業者なのでしょうか?ここでは、これについて解説します。
設計・施工分離発注方式の場合
設計・施工分離発注方式とは、注文者が、設計と建築を別々に依頼する形態です。建築士との間で設計を依頼する契約を締結する一方で、その設計図面を元に建築することについて別途施工業者と契約します。
この場合には、設計ミスに対する損害賠償請求先は、原則として設計をした建築士となるでしょう。
設計・施工一括発注方式の場合
設計・施工一括発注方式とは、注文者が、設計と施工をまとめて施工業者に依頼する形態です。
この場合には、設計ミスによる損害賠償請求先は原則として施工業者となるでしょう。施工業者が外部の建築士などに設計を外注することもあるものの、注文者が契約しているのはあくまでも施工業者であり、注文者と建築士との間に直接的な契約関係はないためです。
なおこの場合において、施工不良の原因が外注先の建築士の設計ミスにあることが明らかであれば、施工業者から建築士に対して求償(自社が負担した損害賠償金の全部または一部について、自社に返済するよう求めること)ができる可能性はあります。
設計ミスの責任の所在について争いがある場合や、建築士への求償などについてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
設計ミスで損害賠償請求をされた場合の初期対応
設計ミスで損害賠償請求がされた場合、まずはどのように対応すれば良いのでしょうか?ここでは、設計ミスを理由として損害賠償請求がされた場合の初期対応を解説します。
- 事実関係を確認する
- 弁護士に相談する
- 必要に応じて、相手方と交渉する
事実関係を確認する
設計ミスが原因で損害を被ったとして損害賠償請求がなされたら、まずは事実関係の把握に努めます。把握すべき内容としては、次の内容などです。
- 建物の現状
- 相手が設計ミスであると考えている内容
- 設計ミスが実際にあったのか否か
- 設計ミスがあったのであれば、その経緯や原因
これらの事項などを踏まえて、その後の対応を検討します。
弁護士に相談する
事実関係を確認したら、できるだけ早期に弁護士に相談します。早期に対応を検討しなければ、こちら側が十分に戦略が練れていない段階で相手方に訴訟を提起されるなどの先手を打たれ、対応が後手に回るおそれがあるためです。
相談先としては、建設業界に特化した弁護士を選ぶと良いでしょう。設計ミスによる損害賠償請求などのトラブル対応は専門性が高いため、すべての弁護士が得意とするわけではないためです。
建設業界に強みを有する弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。当事務所は建設・不動産業界に特化しており、設計ミスによる損害賠償請求への対応についても豊富な実績を有しています。
必要に応じて、相手方と交渉する
弁護士に相談して対応方法を検討した結果、相手方からなされた損害賠償請求をそのままは受け入れない方向に決めた場合には、相手方との交渉を開始します。
たとえば、損害賠償請求額が過大であると考える場合には、適正額へ向けて減額交渉をします。また、設計ミスやこれによって生じている損害の内容によっては、修補で対応できないか交渉する場合もあるでしょう。弁護士へ依頼する場合、相手方との交渉に弁護士に代理してもらったり、弁護士に同席してもらったりすることも可能となります。
無事に交渉がまとまれば、まとまった結果に応じて具体的な対応(賠償金の支払いや、修補など)を進めます。一方で、交渉がまとまらない場合には、調停(裁判所で行う話し合い)や訴訟へ移行し、解決をはかります。
設計ミスによる損害賠償請求に備えて講じるべき対策は?
設計ミスによる損害賠償請求への備えとしては、どのような対策が有効なのでしょうか?ここでは、主な対策を3つ解説します。
- 設計ミスを避ける対策をする
- 仕様を書面で入念に確認する
- 保険に加入する
設計ミスを避ける対策をする
1つ目は、設計ミスを避ける対策を講じることです。
設計ミスは、入力ミスや伝達漏れなど単純なヒューマンエラーによって起きることも少なくありません。人間である以上、どれだけ気を付けてもヒューマンエラーをゼロにすることは困難でしょう。
そこで、設計図面を複数人でチェックする体制を整えたりミスが起きやすい箇所についてチェックリストを整備したりするなど、「仕組み」を整えることでミスの軽減につながります。
仕様を書面で入念に確認する
2つ目は、仕様を書面で入念に確認することです。
設計ミスは、設計者が注文者が希望する仕様の確認を怠ったことから生じることもあります。口頭だけでの確認では漏れが生じやすいため、注文者の希望する仕様を書面にまとめて一つひとつ確認することで、これを漏れなく満たす設計がしやすくなります。
また、法令の制限などにより注文者の希望する仕様のすべてを実現することが難しい場合には、注文者にその旨を説明したうえで合意書などを取り交わすことで、認識の齟齬により後から損害賠償請求がなされる自体を避けられるでしょう。
保険に加入する
3つ目は、保険に加入することです。
設計ミスにより損害賠償請求がなされる可能性をゼロにすることは困難です。その一方で、万が一損害賠償請求がなされれば、請求額が非常に高額となる可能性があるでしょう。
これに備えて、賠償責任保険に加入することが検討できます。賠償責任保険に加入することで、設計ミスにより万が一損害賠償請求がされた場合に適切な賠償金の支払いを実現しやすくなります。
設計ミスによる損害賠償請求に関するよくある質問
続いて、設計ミスによる損害賠償請求に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
設計ミスでの損害賠償請求の時効は?
設計ミスによる損害賠償請求の時効は、設計ミスが債務不履行(契約の本旨に沿った履行をしないこと)である場合、次のうちいずれか早く到来する時です(民法166条)。
- 権利を行使できることを知った時から5年
- 権利を行使できる時から10年間
一方で、設計ミスは不法行為を構成することもあります。この場合の時効は、次のうちいずれか早く到来する時です(同724条)。
- 被害者等が損害と加害者を知った時から3年間
- 不法行為の時から20年間
不法行為を構成する場合は、責任を追及されうる期間が長いことに注意が必要です。
設計ミスで損害賠償請求をされたものの、時効が到来している可能性があり対応の判断に迷う際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
設計ミスでの損害賠償請求額は減額できる?
設計ミスで損害賠償請求がされた場合、当初の請求額から減額ができる可能性があります。相手の言い分や請求額が必ずしも法的に根拠があるとは限らないうえ、後の交渉を見越して高めの金額で請求している可能性もあるためです。
設計ミスで損害賠償請求がされてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。ご相談いただくことで、賠償額の減額が可能であるか否かなど、今後の見通しを立てやすくなります。
設計ミスの損害賠償請求でお困りの際はアクセルサーブ法律事務所へご相談ください
設計ミスの損害賠償請求でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所へご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- 建設・不動産業界に特化している
- 業界実態を踏まえて、より実践的なアドバイスをする
- 予防法務に力を入れている
建設・不動産業界に特化している
アクセルサーブ法律事務所は、建設・不動産業界に特化しているやや珍しい事務所です。業界における取引慣例や起きやすいトラブル、裁判例・判例などを熟知しているため、より的確なリーガルサポートを実現できます。
業界実態を踏まえて、より実践的なアドバイスをする
法的に正しいことと、事業にとって最適なことは必ずしも一致しません。とはいえ、法令の規定を無視していては、持続的な経営は困難でしょう。
アクセルサーブ法律事務所は、業界実態を理解したうえで、法的なルールは守りつつもその先にある「事業のさらなる発展・目標達成」を重視したアドバイスを提供します。
予防法務に力を入れている
アクセルサーブ法律事務所はトラブルが発生してからの対応のみならず、トラブルを未然に防ぐ「予防法務」にも力を入れています。これは、当事務所が「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことを最終的なゴールに見据えているためです。
設計や建築施工を行う中で損害賠償請求がなされる事態を避けるため、事前にできる対策を講じたいとお考えの際は、アクセルサーブ法律事務所までまずは一度ご相談ください。
まとめ
設計ミスによる損害賠償請求について解説しました。
設計ミスによって施工不良が生じた場合、追完請求や代金減額請求、損害賠償請求などがなされる可能性があります。これらの請求がなされたら、まずは「実際に設計ミスがあったのか」などの状況を把握したうえで、早期に弁護士にご相談ください。
弁護士に相談することで、そのケースにおける具体的な対応方法が明確となります。また、必要に応じて、相手方との交渉を任せたり、相手方との交渉に同席してもらったりすることも可能です。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に特化しており、設計ミスによる損害賠償請求についても豊富な対応実績を有しています。設計ミスを理由として損害賠償請求がされてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお早めにご相談ください。


