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着工前に施主から請負契約が解除されたら?とるべき対応を弁護士がわかりやすく解説

着工前に施主から請負契約が解除されたら?とるべき対応を弁護士がわかりやすく解説

工事請負契約が、着工前に解除されることもあります。では、着工前に施主側から工事請負契約が解除されたら、どのように対応すればよいのでしょうか?また、着工前の工事請負契約でトラブルとなる事態を避けるには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?

今回は、工事請負契約が着工前に解除される主な理由を紹介するとともに、着工前に施主から請負契約の解除が申し入れられた場合の対応方法や、着工前の契約解除でトラブルに発展しないための対策などについて、弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産業界へのサポートに特化しており、工事請負契約の解除に関するご相談への対応実績も豊富です。工事請負契約が着工前に解除されてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。

着工前の施主側からの請負契約解除の4パターン

着工前に施主側の都合で工事請負契約が解除される場合、解除には主に4つのパターンが存在します。ここでは、それぞれの概要を解説します。

  • 合意解除
  • 手付解除
  • 民法の規定による解除
  • 建設会社側の債務不履行を理由とする解除

合意解除

1つ目は、合意解除です。合意解除とは、契約当事者(施主と建設会社)とが話し合い、合意のもとで契約を解除することです。

合意解除の場合には、違約金の有無や金額などについても話し合いで定めるのが原則です。

手付解除

2つ目は、手付解除です。手付解除とは、施主が建設会社に支払った手付金を放棄することで契約を解除することを指します(民法559条、同557条1項)。

手付解除ができるのは相手方の契約履行への着手前に限られており、相手方が契約の履行に着手してからは行うことができません。何をもって「契約の履行に着手」に該当するのかは契約内容や状況などによって異なるものの、建設工事への着手はもちろん、図面の作成などもこれに該当する可能性が高いでしょう。

なお、契約解除は損害賠償請求を妨げない(解除をする場合であっても、損害が発生していればこれと併せて損害賠償請求が可能であるし、相手方から損害賠償請求をされる可能性もある)のが原則です(同545条4項)。しかし、手付解除の場合にはこの545条4項の規定が適用されないこととされているため、手付解除をする場合には、損害賠償請求はできません(同557条2項)。

民法の規定による解除

3つ目は、民法の規定による解除です。

民法は、請負人が仕事を完成しない間は、施主はいつでも契約の解除ができると定めています(同641条)。そのため、完成の前であればいつでも、この規定により工事請負契約が解除される可能性があります。

ただし、この民法の規定による解除は、施主が損害を賠償することが条件です。施主がこの民法の規定を根拠として工事請負契約を解除しようとする場合、建設会社側に生じる損害を賠償しなければなりません。この損害額にはその工事のために建設会社が仕入れた材料費や下請企業の人件費などのほか、逸失利益(その工事が解除されなければ得られたはずの利益)も含まれると解されるため、相当な額となることが多いでしょう。

建設会社側の債務不履行を理由とする解除

4つ目は、建設会社側の債務不履行を理由とする解除です。

建設会社側に債務不履行がある場合、これを理由に契約が解除される可能性があります(同541条、542条)。建設会社側の代表的な債務不履行は、所定の期日までに完成した目的物を納品しないことであるため、工事着工前に建設会社側の債務不履行が確定する可能性は低いでしょう。

ただし、たとえば契約書に定めた秘密保持条項に違反をして建設会社が施主側の情報を漏らした場合などには、これを理由として契約が解除される可能性はあります。

施主が着工前に請負契約を解除する主な理由

施主が工事着工前に請負契約を解除する場合、その理由はどのような点にあるのでしょうか?ここでは、請負契約が工事着工前に解除される施主側の主な理由を4つ解説します。

  • 建設会社に不信感を抱いたから
  • 別の建設会社に依頼したい事情が生じたから
  • ローンの審査に通らなかったから
  • 土地について想定外の事態が生じたから

建設会社に不信感を抱いたから

何らかの理由で建設会社の不信感を抱いたことが原因で、請負契約の解除に至る場合があります。不信感の内容はさまざまであるものの、たとえば次のケースなどが想定できるでしょう。

  • 担当者に伝えた仕様の変更が、何度言っても図面に反映されない
  • 担当者との連絡が滞るなど、連絡がスムーズに取れない
  • 担当者の言動や外部の情報などにより、施工品質に不安を感じた
  • 契約書に、施主側に不利益となり得る条項を見つけた

中には施主側の思い違いや行き違いなどがある場合もあるものの、このような理由から建設会社に対して不信感を抱かれてしまい、着工前に請負契約の解除に至る場合があります。

別の建設会社に依頼したい事情が生じたから

契約締結後に別の建設会社に依頼し直したい事情が生じ、請負契約が解除される場合があります。別の建設会社に依頼したい事情はさまざまであるものの、次の事情などが想定できます。

  • 似た施工内容の金額が、他社の方が安価であることに気付いた
  • より魅力的な施工をしてくれる企業を見つけた
  • 親族や友人などの関係会社が施工してくれることになった

なお、他社への「切り替え」が請負金額の安さが原因である場合、自社への違約金がかかることを改めて説明することで解約を防げる可能性もあります。

ローンの審査に通らなかったから

建設工事の請負金額は多額に上ることが多いため、施主は工事の発注にあたってローンを組むことがほとんどでしょう。ローン審査に通ることを前提に工事請負契約の締結を進めたにもかかわらず、ローンの審査に通らなければ、原則として工事請負契約が解除されることとなります。

なお、施主が一般消費者である場合を中心に、工事請負契約書に「ローン条項」を設けることも少なくありません。ローン条項とは、施主が誠実にローン審査に申し込んだにもかかわらずローン審査に通らなかった場合には、ノーペナルティで(違約金を支払うことなく、かつ建設会社から手付金の返金も受ける形で)工事請負契約を解除できる旨の条項です。

このような条項がある場合、施主がローン審査に通らなければ、その契約条項に従って工事請負契約が解除されることとなります。

土地について想定外の事態が生じたから

工事請負契約の締結後に、建築予定地であった土地に何らかの問題が発覚し、工事請負契約が解除される場合があります。たとえば、地盤調査をしたところ土地が事前の想定以上に軟弱であることが発覚し、地盤改良工事に多額の追加費用がかかることが判明した場合などがこれに該当します。

ほかにも、隣地との間に境界に関するトラブルなど何らかのトラブルがあることが判明した場合や、地中に埋設物があり撤去工事に多額の費用が掛かる場合などにも、これが原因で工事請負契約が解除される可能性があります。

着工前に施主から請負契約の解除が申し入れられた場合の対応

工事着工前に施主から請負契約の解除が申し入れられた場合、建設会社側はどのように対応すればよいのでしょうか?ここでは、建設会社側の対応の流れを解説します。

  • 解除の理由を確認する
  • 契約書の違約金の規定を確認する
  • 弁護士に相談して具体的な対応を検討する
  • 解除に基づく損害賠償請求をする
  • 内容証明郵便を送付する
  • 調停や訴訟で解決をはかる

解除の理由を確認する

工事着工前に請負契約の解除が申し入れられたら、まずはその理由を確認します。工事着工前の解除であれば施主都合の解除である可能性が高いものの、中には建設会社側に一定の責任がある場合や、建設会社側の債務不履行が原因である場合もあるためです。

ここでは、施主都合による解除(民法の規定による解除)である前提で、解説を進めます。

契約書の違約金の規定を確認する

工事請負契約で、中途解約時の違約金の額を定めている場合があります。契約書に違約金の定めがある場合には、原則としてその規定に従って違約金の額を算出することになるため、まずは契約書の記載内容を確認しましょう。

弁護士に相談して具体的な対応を検討する

続けて、弁護士に相談をして具体的な対応方法を検討します。初めから弁護士が代理して交渉等をすべき事案ではなかったとしても、事前に弁護士に相談をすることで契約書の内容や事案を踏まえたそのケースにおける適正な損害賠償請求額の算定などが可能となり、その後の施主とのやり取りに自信をもって臨みやすくなるためです。

請負契約の解除について相談できる弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までご連絡ください。当事務所は建設・不動産業界に特化しており、状況に応じた最適な対応のアドバイスが可能です。

解除に基づく損害賠償請求をする

弁護士からのアドバイスを受け、そのケースにおける適正な損害賠償額を算定したら、施主に対して契約解除を原因とする損害賠償請求を行います。この時点で施主が納得し賠償金を支払ってくれれば、この時点で事案は解決となります。

内容証明郵便を送付する

施主が損害賠償金の支払いを拒絶したり連絡が取れなくなったりした場合には、弁護士から施主に宛てて内容証明郵便を送ります。内容証明郵便とは、いついかなる内容の文書が誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって日本郵便株式会社が証明するサービスです。

内容証明郵便であるからといって、そこに記載された内容が正しいことまでは保証されません。しかし、内容証明郵便で請求をすることで、請求をした事実が残ります。

また、内容証明郵便は訴訟の準備段階で送られることが多いため、弁護士から内容証明郵便が届いたとなれば、「この段階で請求に応じなければ、訴訟に移行する」という強いメッセージともなります。そのため、弁護士から内容証明郵便が届いた時点で、訴訟に至る前に請求に応じるケースは少なくありません。

調停や訴訟で解決をはかる

内容証明郵便を送付して請求をしてもなお相手方が支払いに応じない場合には、調停(ADR)や訴訟で解決をはかります。

調停とは、専門の委員が当事者双方から意見を聞いて紛争の解決をはかる方法であり、簡易・迅速な解決に寄与します。しかし、ADRでは相手方に出頭を強制することはできないため、相手方が非協力的であればこれによる解決の可能性は低いでしょう。

一方で、訴訟では相手方が仮に出頭しなくても審理は進みます。訴訟では諸般の事情や契約書の内容などから、損害賠償請求の可否や適正な賠償金について裁判所から結論が下されます。裁判所が出した結論(判決)には、一定期間内に正式に控訴する場合を除き、当事者双方が従わなければなりません。

裁判所が賠償金を支払うべきであると判示したにもかかわらず、相手方がこれを期日までに支払わない場合には、強制執行の対象となります。

着工前の請負契約解除によるトラブルを避ける主な対策

着工前に工事請負契約が解除される可能性をゼロにすることは難しい一方で、事前に対策を講じることでトラブルとなる事態を避けることは可能です。ここでは、工事請負契約の解除によるトラブルを避ける対策を2つ解説します。

  • 解除の段階ごとの違約金額や計算方法を契約書に定める
  • 契約締結時に違約金について丁寧に説明する

解除の段階ごとの違約金額や計算方法を契約書に定める

1つ目は、解除の段階ごとの違約金額や計算方法を、契約書で明確に定めておくことです。

施主都合での工事請負契約解除の場合、違約金を支払うべきことについては合意が得られても、その具体的な金額について争いとなる可能性は低くありません。解除の段階ごとの違約金額やその計算方法などを具体的に契約書に定めておくことで、違約金の額を客観的に算定することが可能となり、トラブルを避けやすくなります。

ただし、契約書に定めた違約金の額が社会通念から判断してあまりにも高額であれば、相手方から条項の無効を主張されるおそれがあります。違約金は「とりあえず、高く定めておけばよい」ものではないため、契約書の条項でお悩みの際はアクセルサーブ法律事務所までご相談ください。

契約締結時に違約金について丁寧に説明する

2つ目は、違約金の定めについて、契約締結時に丁寧に説明することです。

違約金の額について契約書に明記していても、相手方が契約書の内容を理解していなければ、「聞いていない」などとして支払いを拒まれるおそれもあります。特に、相手方が消費者である場合には工事請負契約書の内容を1つずつ丁寧に説明し、特に重要となる違約金の定めなどについてはチェックボックスを設けてチェックを入れてもらうなど、慎重に対応すべきでしょう。

請負工事の解除に関するよくある質問

続いて、請負契約の解除に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

建設会社側からもいつでも請負契約を解除できる?

民法の規定により、施主側からはいつでも請負契約の解除ができる一方で、建設会社側から自由に解除する規定はありません。そのため、建設会社側から工事請負契約を解除できるのは、相手方に債務不履行があるなど一定の場合に限られます。

着工前の請負契約解除では逸失利益も請求できる?

着工前に工事請負契約が解除された場合、すでに支出した材料費や下請企業の労務費などだけではなく、逸失利益も請求できる可能性があります。

ただし、違約金の適正額は契約書の定めや状況などによって異なるため、まずはアクセルサーブ法律事務所までご相談ください。

請負契約の着工前の解除でお困りの際はアクセルサーブ法律事務所までご相談ください

請負契約の着工前の解除でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。

最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。

  • 建設・不動産法務に特化している
  • 予防法務に力を入れている
  • 経営者目線に立った実践的なアドバイスを得意としている

建設・不動産法務に特化している

アクセルサーブ法律事務所は、建設・不動産業界に特化しています。業界における取引慣習や生じやすいトラブルなどを熟知しているため、より実践的なリーガルサポートが可能です。

予防法務に力を入れている

アクセルサーブ法律事務所は、最終的なゴールを「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」と定め、予防法務に注力しています。弁護士について「トラブルが起きてから相談する人」という認識を持っている方も少なくないようですが、トラブルが起きて業務に支障が出る事態を避けるため、ぜひ契約書の整備など予防段階からご相談ください。

経営者目線に立った実践的なアドバイスを得意としている

法的に正しいことと、経営として望ましいことは一致しないこともあります。とはいえ、法律を軽視していては、足を掬われる事態ともなりかねません。

アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産会社の経営実態を深く理解したうえで、法的なルールは守りつつ、その先の「事業のさらなる発展・目標達成」をも重視した経営者目線でのアドバイスを提供します。

まとめ

工事請負契約が着工前に解除される主な理由や着工前に施主から請負契約が解除された場合の対応、着工前の契約解除でトラブルを避ける方法などを解説しました。

工事請負契約が着工前に施主側から解除される場合、その理由としては、建設会社に不信感を抱いたからや別の建設会社に依頼したい事情が生じたから、ローンの審査に通らなかったからなどが挙げられます。

着工前に工事請負契約の解除が通知されたら、まずは解除の理由や契約書の規定を確認したうえで、早期に弁護士に相談ください。弁護士に相談することでそのケースにおける適正な賠償額などの想定が可能となり、これを踏まえて施主との対応に臨みやすくなります。

アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に特化しており、請負契約の解除に関するトラブルについても豊富な対応実績を有しています。着工前の工事請負契約の解除でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。

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