【2025】追加工事の契約書は作成すべき?なしでも大丈夫?弁護士がわかりやすく解説

建設工事では、追加工事が発生することも多いでしょう。しかし、追加工事について適切に契約書が交わされていないケースも少なくないようです。
では、追加工事の契約書は必要なのでしょうか?また、追加工事について契約書を交わさない場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか?今回は、追加工事における契約書の要否や契約書に定めるべき事項、契約書がない場合に生じ得るトラブルなどについて、弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(アクセルサーブ法律事務所)は建設・不動産業界に特化しており、追加工事の契約書作成についても豊富な実績を有しています。追加工事について契約書がないことでトラブルに発展しておりお困りの際や、追加工事の契約書を的確に作成したいとお考えの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
追加工事とは?
追加工事とは、建築請負工事などを締結した後に追加で必要となる工事のことです。当初の契約内容には含まれていない工事であるため、費用の増加や工期の延長につながります。
費用の増加や工期延長について施主の合意が得られないまま追加工事を実施してしまうと、トラブルの原因となりかねません。そのため、追加工事では施主との合意の取り付けなどを慎重に進めることが必要です。
追加工事が必要となる主な原因
追加工事が必要となる主な原因は、主に「施主の要望」と「予期せぬ事態の発生」の2つに大別できます。ここでは、それぞれ概要を解説します。
- 施主の要望
- 予期せぬ事態の発生
施主の要望
工事請負契約を締結した後で、施主の要望が変わることがあります。
たとえば、建物の建築工事において「窓をもう1か所追加したい」「この部屋に棚を備え付けたい」と希望される場合などが挙げられます。また、工場の外壁塗装工事で第1棟と第2棟のみの工事を請けていた場合に、「やはり第3棟も施工してほしい」と依頼される場合もあるでしょう。
このような場合には、要望の内容に応じて追加工事が発生します。
予期せぬ事態の発生
工事を施工する中で、当初には予期できなかった事態が生じることがあります。
たとえば、建物の基礎工事をするために土地を掘り起こしたところ、そこに前の建物の基礎部分や廃棄物などの残置物があった場合などがこれに該当します。このような残置物を撤去しなければ、建物の安全性に問題が生じかねません。
そこで、本来の建築工事に先立って、残置物の撤去工事が必要となります。
追加工事にも契約書は必要?
当初の工事請負契約さえ書面で取り交わしていれば、追加工事については契約書までは必要ないと考えるかもしれません。しかし、追加工事についても契約書は必須です。ここでは、追加工事に契約書が必要である理由を解説します。
追加工事の契約書作成でお悩みの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。当事務所は建設・不動産業界に特化しており、追加工事の契約書作成についても豊富な実績を有しています。
追加工事でも、契約書の作成は法律上の義務
建設工事の請負にあたって契約書を交わすことは、建設業法上の義務です(建設業法19条1項)。そして、追加工事も例外ではありません(同2項)。
契約書の作成は、トラブル予防の観点からも重要
追加工事について契約書を交わすことは、トラブル予防の観点からも重要です。
追加工事を進める際は、施主の合意を得ているはずでしょう。しかし、契約書を交わしていなければ、追加工事について施主と合意ができていた旨の立証が困難となります。施主から「追加で報酬がかかることは聞いていない」などと主張されれば、追加工事分の報酬を支払ってもらえないなどのトラブルに発展するかもしれません。
そのような事態を避けるため、追加工事をする際は、必ず施主との間で契約書を取り交わすべきでしょう。
追加工事の契約書を作らなかった場合に生じ得るリスク
追加工事について契約書を取り交わさなかった場合には、さまざまなリスクが生じます。ここでは、追加工事について契約書を交わさなかった場合に生じ得る事態を3つ解説します。
- 行政処分の対象となる
- 追加工事分の報酬の支払いを拒絶されてトラブルに発展する
- 追加工事による工期遅延で損害賠償請求をされる
行政処分の対象となる
先ほど解説したように、契約書を交わすことは建設業法に定められた義務です。この義務への違反は刑事罰の対象とはならないものの、行政処分の対象となります。
行政処分とは、行政庁が法令に基づいて建設業者などの国民の権利義務に直接的に影響を及ぼす行為であり、具体的には次の処分がなされる可能性があります。
- 指示(同28条1項)
- (指示に従わない場合)営業の全部または一部の停止(同3項)
- (営業停止処分に従わない場合)許可の取消し(同29条1項8号)
軽微な違反のつもりであっても、重大な結果を招く可能性があるため注意が必要です。
追加工事分の報酬の支払いを拒絶されてトラブルに発展する
追加工事について契約書を交わしていない場合、施主側から「追加工事について説明を受けていない」などと主張され、追加工事部分の報酬支払いを拒絶されるおそれがあります。
その場合には、施主に提示した資料やメールのやりとりなどから追加工事に合意していた旨の証拠を探す必要が生じ、対応に手間や労力がかかる可能性があるでしょう。
施主から追加工事部分の報酬支払いを拒絶されてお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。状況に応じて、最適な解決策を提案します。
追加工事による工期遅延で損害賠償請求をされる
追加工事をする場合、工期も伸びることが多いでしょう。しかし、追加工事について契約書を交わしていなければ施主側から「追加工事で工期が伸びるなど聞いていない」などと主張され、工期が伸びたことに伴う損害賠償請求をされるおそれが生じます。
損害賠償請求とは、相手方の債務不履行(契約違反)が原因となり何らかの損害を受けた際に、その相手方に対して損害の補填に必要な金銭の支払いを求めることです。たとえば、建設業者側の事情により引渡日に遅れた場合、これによって施主に生じた仮住まい・仮店舗などの賃料や、その物件での営業開始が遅れたことにより得られなかった利益(「逸失利益」といいます)を基礎として損害賠償請求をされる可能性があります。
しかし、追加工事が必要となった時点でこれにより工期が伸びることを説明し、改訂した引渡日を記載した契約書をしっかりと交わしていれば、その改訂後の引渡日に間に合っている限り損害賠償請求の原因とならないでしょう。
一方で、契約書がなければ工期の延長延長について合意した旨の証拠がなく、損害賠償請求をされるおそれがあります。
このように、追加工事の契約書がないことはさまざまなトラブルの原因となり得ます。追加工事の契約書作成でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
追加工事の契約書に記載すべき主な項目
工事契約書に記載すべき事項は、建設業法で定められています(同19条1項)。この規定によれば、契約書に定めるべき事項は次のとおりです。
- 工事内容
- 請負代金の額
- 工事着手の時期と、工事完成の時期
- 工事を施工しない日または時間帯の定めをするときは、その内容
- 請負代金の全部または一部を前金払または出来形部分に対する支払いとするときは、その支払の時期と方法
- 当事者の一方から設計変更・工事着手の延期・工事の全部または一部の中止の申出があつた場合における、工期の変更・請負代金の額の変更・損害の負担・それらの額の算定方法に関する定め
- 天災その他不可抗力による工期の変更、損害の負担とその額の算定方法に関する定め
- 物価変動または変更に基づく工事内容の変更または請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め
- 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
- 注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
- 注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
- 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
- 契約不適合工事の責任またはその責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
- 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
- 契約に関する紛争の解決方法
- その他一定の事項
追加工事や工事の変更契約である場合は、これらのうち変更があった内容のみを記載すれば問題ありません(同2項)。
なお、これらはあくまでも法律により要請される条項であり、必要に応じてこれ以外の条項を定めることも可能です。追加工事の契約書作成でお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。
追加工事で契約締結を進める流れ
追加工事についての契約締結は、どのように進めれば良いのでしょうか?ここでは、基本的な流れを解説します。
- 追加工事について説明し見積書を提示する
- 追加工事について合意する
- 追加工事に関する契約書に署名又は記名押印する
追加工事に関する契約書の作成や契約締結などでお困りの際は、アクセルサーブ法律事務所までご相談ください。困りごとの内容や状況などに応じ、的確なリーガルサポートを提供します。
追加工事ついて説明し見積書を提示する
はじめに、追加工事について施主に丁寧に説明し、追加工事の見積書を提示します。この段階では、少なくとも次の内容を説明すべきでしょう。
- 追加工事が必要となった理由
- 追加工事の内容
- 追加工事の見積額
- 追加工事に伴って工期が変わる場合は、その旨と、変更後の工期
追加工事について合意する
追加工事について説明をしたら、これについて施主の合意を得ます。見積額や納期などについてスムーズに合意が得られない場合には、交渉をして合意をはかりましょう。
追加工事に関する契約書に署名又は記名押印する
追加工事について施主と合意ができたら、追加工事に関する契約書に双方が署名又は記名押印をして保管します。必要に応じて弁護士のサポートを受けることで、的確な追加工事契約書を作成しやすくなるでしょう。
追加工事の契約書に関するよくある質問
続いて、追加工事の契約書に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
追加工事の契約書に印紙は必要?
追加工事の契約書にも印紙の貼付は必要です。追加工事の契約書も、工事請負契約の1つであるためです。また、当初に取り交わす工事請負契約書と同じく、追加工事の契約書も軽減措置の対象となります。
追加工事の契約書に貼付すべき印紙の額は、その契約書に記載された契約金額に応じてそれぞれ次のとおりです。
| 契約書に記載された契約金額 | 印紙の額(軽減措置の適用後) |
|---|---|
| 契約金額の記載がないもの | 200円 |
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 200円 |
| 200万円超300万円以下 | 500円 |
| 300万円超500万円以下 | 1千円 |
| 500万円超1千万円以下 | 5千円 |
| 1千万円超5千万円以下 | 1万円 |
| 5千万円を超え1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超5億円以下 | 6万円 |
| 5億円超10億円以下 | 16万円 |
| 10億円超50億円以下 | 32万円 |
| 50億円超 | 48万円 |
印紙を貼付しなかったからといって契約が無効になるわけではないものの、本来納めるべき印紙税の3倍相当の過怠税の対象となります。
追加工事の契約書の作成は誰に依頼すれば良い?
追加工事の契約書の作成は、弁護士に依頼して行うようにしてください。弁護士は法律のプロフェッショナルであることに加え、トラブル発生後の紛争対応も行うため、起きやすいトラブルから「逆算」をして契約書の条項を検討できるためです。
追加工事の契約書の作成を依頼できる実績豊富な弁護士をお探しの際は、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。
追加工事の契約書作成はアクセルサーブ法律事務所にお任せください
追加工事の契約書作成は、アクセルサーブ法律事務所にお任せください。最後に、当事務所の主な特長を4つ紹介します。
- 建築・不動産業界に強い
- 予防法務に力を入れている
- 経営者目線で、実践的なアドバイスをする
- 「想い」を大切にする
建築・不動産業界に強い
アクセルサーブ法律事務所は、建築・不動産業界に特化している珍しい事務所です。注力する分野としてこの業界を選んだのは、当事務所の代表者の幼い頃の夢が「大工さん」だったこともあり、憧れの業界であるためです。また、日本の建築業の施工レベルは非常に高いうえ人間的にも素晴らしい方が多いと感じています。
しかし、契約書をきちんと取り交わさないケースが今も散見されており、残念なことに紛争やトラブルが起こりやすい業界でもあります。建築・不動産分野のトラブルをなくし、事業により注力できる体制を整えるため、弁護士としてサポートできれば幸いです。
予防法務に力を入れている
弁護士に関して、「トラブルが起きた時に相談する人」というイメージを持っている人も多いでしょう。
もちろん、トラブル発生時には解決へ向けて尽力する一方で、アクセルサーブ法律事務所はトラブルの予防策にも力を入れています。「助け合い、称え合い、共に成長し、喜び合う―それが当たり前の世界を創る」ことこそが、当事務所の最終的な目標であるためです。
経営者目線で、実践的なアドバイスをする
当事務所は、法律的知見もさることながら、建設・不動産のビジネス的理解も踏まえたトラブル解決に力を入れています。
法的に正しいことと、事業にとって最適なことが一致しないことも少なくありません。当事務所は法的なルールは守りつつ、その先にある「事業のさらなる発展・目標達成」を重視した経営者目線でのアドバイスを提供しています。
「想い」を大切にする
アクセルサーブ法律事務所は、経営者様の想いやビジョンを大切にし、「人間性」の部分にも重きを置いたサポートを心がけています。「どのような会社・組織をつくりたいか」、「従業員・メンバーのみなさんとどのような関係性を創りたいのか」などのビジョンを大事にしながら、経営者様の長期のパートナーでありたいと考えています。まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
追加工事への契約書の要否や、追加工事について契約書を交わさないことで生じ得るトラブル、追加工事の契約を締結する流れなどを解説しました。
当初の工事契約ではもちろん、追加工事についても契約書は取り交わすべきです。契約書の交付は建設業法上の義務であることに加え、トラブル防止の観点からも契約書が重要な役割を担うためです。追加工事について契約書を交わさなければ、施主から追加工事分の報酬支払いを拒絶されたり、工期が伸長したとして損害賠償請求がなされたりするかもしれません。
建設工事の請負契約書に記載すべき事項は、建設業法で定められています。これを参考に、追加工事についても契約書を取り交わしておきましょう。弁護士に相談することで、いざという時に自社の身を守る、的確な契約書の作成が可能となります。
アクセルサーブ法律事務所は建設・不動産業界に注力しており、追加工事の契約書についても相談できます。追加工事の契約書作成をご希望の際や、追加工事の契約書がないことでトラブルが生じてお困りの際などには、アクセルサーブ法律事務所までお気軽にご相談ください。


